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実験3

 「ごちそうさまでした」


 そう言ってわたしは出された料理を完食した。

 空腹が最大の調味料ってのは本当だね、今まで食べたどんな料理よりも美味しく感じたよ。


 「はい、だいぶ回復されたみたいで私も安心しました」


 そう言って彼女は微笑みかけてくれる。

 すごくかわいい。

 わたしは女子校に居たけど、そこの誰よりもかわいい。間違いなくお姫様って感じの娘だ。


 「えっと……わたしの名前は上神電荷うわがみでんか。助けてくれて本当にありがとう」


 「私の名前はリリアドラス・ラ・デルフィニラです、リリアって呼んでくださいね

 デンカさんが森の中で倒れているのを見たときは本当に驚きました……。村の人たちと丁度狩りに出ていた時だったので、見つけられて本当に良かったです」


 へぇ~、狩りに出かけてた時だったんだ~。

 って、え?!

 りりあどらす・ら・でるふぃにら?

 一体どこの国の人なんですかね……いや、異世界なんだけどさ。というか――


 「突然なんだけど、わたしが言ってることわかるの?」

 「もちろんわかりますよ」

 「Do you understand what I`m saying?」

 「?わかりますよ」


 少し首をかしげながらも、リリアは同じ質問に二回答えてくれる。困惑した表情もかわいい。


 ってそうじゃなくて。


 なんで言葉が通じてるん?

 地球とは別の惑星でまったく同じ言語をつかっているなんて、仮定する事すらおこがましいような低確率だけど、多分それですらない。


 「この国の言葉ってなんていう名前?ちなみにわたしは英語と日本語で話してたつもりなんだけど」

 「すいません、どういう意味でしょう……言葉の名前は言葉では?」


 Oh……。

 間違いない、この世界には異なる言語の概念が存在しないのだ、故に名前を付ける必要性が存在しないと。

 全自動で言葉が翻訳されるとかこの世界どうなってるんだ……いろんな法則がお亡くなりになられてそうだ。


 「つかぬことをお聞きしますが……リリアさんって、もしかして魔法についてご存知だったり?」

 「ええ、貴族の嗜みとしてある程度は使えますよ」


 リリアって貴族だったんだ~。

 キレイな服を着てるしそうじゃないかと思ってたんだよねー。


 じゃなくて。

 やっぱりあるの?!


 ゲームとか結構やる方だけど、ファイナルクエストとかドラゴンファンタジーとか、そんな感じの世界に来ちゃったのか、わたしは。

 こりゃ同じ宇宙ですらすらないかもしれない。


 どうするわたし。

 あ。でも魔法があるならそれで元の世界に帰れるかもしれないのか。

 いや、でも……う~ん。


 わたしが一人で考えていると、リリアが質問をしてきた。


 「あの、デンカさんは一体どこから来られたのでしょう?その服装はこの国の物ではありませんよね……とても素晴らしい出来だと思いますけど」


 う……どうしよう、結構重要な質問だよね。っていうかわたしの質問が終わるまで待っててくれたのかな。

 魔法はあるらしいけど、他の世界から来たって言ったら気がふれてる扱いされるかもしれないし、何とかごまかしてしまいたい。


 記憶を無くしたことにするのは不自然、内緒って言うのも通らないだろうし、言える部分だけ正直に伝えよう。


 「わたしは遠い遠い国からきたのだよ」


 事実だ。嘘は言ってない。


 「遠い国、ですか……。何という名前なのでしょう」

 「あ、うん。ジャパンって呼ばれてたりするね」

 「ジャパン……。すみません、聞いたことのない国です」


 知らないか、これで知ってるって言われても驚いちゃうけど。


 「そう言えば、この国の名前って何なの?」


 あ、やらかした。

 リリアがえっ?って顔でこちらを見てくる。

 わざわざ遠くから来たのに国の名前すら分からないって相当やばい人間だもんね。


 「この国はデルフィニラ国ですけど……」

 「わぁ!デルフィニラって事はリリアはもしかしてお姫様なんだね!」


 オーバーなリアクションをユーズして巧妙にごまかしていく。苗字と国の名前が同じって事に驚いたのは本当だけど。


 「まぁその表現は間違ってないのかもしれませんが……私は王族の中でも序列がかなり低いので、下級貴族の領地の方が大きいくらいですよ」


 なるほど、お姫様でもいろいろややこしいことがあるんだね。


 「それで、デンカさんはわざわざ遠い名前も知らなかったこの国まで、どのような目的で来たのですか?」


 やば、ごまかせてないじゃん。

 穴が開いて突然ワープしたって伝えたら絶対変な目で見られるよね。それともそんな感じの魔法があるのかな。

 伝えるべきかごまかすべきか……。


 「デンカさん?まさか、人には言えないような理由で……」

 「いや違う違う違う。なんか部屋に穴が開いて知らないところに飛ばされちゃったんだよ」


 言ってしまった。

 あんな悲しそうな顔されたら、誰も隠し事なんてできないって。それに、命の恩人にうそをつくのは人として間違ってるでしょ。


 「飛ばされた?転移の魔法か何かでしょうか、そのような長距離の転移など聞いたことがありませんが……。でもデンカさん自らこの国まで来たわけじゃなかったんですね。それなら森にあんな軽装でいたのも納得です」


 変人扱いされずにすんだことに、わたしは安堵した。

 でも、転移の魔法があるってことは、地球に出現した穴も魔法に関係あるのかな。

 わたしがそんな事を考えていると、リリアが話を続ける。


 「軽装と言えばですけど、デンカさんが運んでいたカゴと、中のかわいらしい生き物も保護していますよ」


 そう言ってリリアは部屋の隅に視線を向ける。

 三号!

 完全に忘れていたけど無事だったのか。


 「あの、もしかしてその子はデンカさんのペットですか?わたし聞いたことがあります!他の国では人に慣れた小型の怪獣を飼っているのだと」


 リリアが今まで見たことも無いくらいキラキラと目を輝かせている。

 フフフ、三号。わたしは今初めて、お前を連れてきて良かったと思っているよ。


 「撫でてみるかい?」


 ペットを飼った時、言ってみたい言葉ランキングに間違いなく入るだろう。

 どこかの記事で、子供好きがこのためだけにペットを飼っているって話を見た気がするけど、その気持ちがわかる気がする。


 「はい!」





 しばらくリリアが三号を撫でていると、扉にノックの音がした。


 「お嬢様、そろそろ……」


 声からしてさっきわたしにご飯を運んできてくれたメイドさんだ。彼女の声に答えるようにリリアが立ち上がる。


 「では、失礼しますデンカさん。私は済ませなければいけないことがありますので。しばらくはこの部屋で休んでいて下さいね、また明日お話しましょう」


 そう言ってリリアが部屋を出て行ってしまう。窓越しに外を見ればもうそろそろ夜だ。

 あんな若いのに貴族の仕事とかしてるんだろうな~えらいな~。


 ……はい。

 わたしですか?無職です。


 まぁ元の世界では学生だったけど、この世界でどうやって生きていくかって話だよね。


 どうする?まさか地球最古の職業と言われているあの職業につかなくちゃいけないのか?体を売らなくちゃならないのか?


 三号が勝ち誇ったような顔でわたしを見てきている気がする。

 クソッ、リリアのペットって内定先が決まったからって偉そうなやつだ、畜生の分際で。


 思考がかなり脱線した。

 とりあえずわたしにできる事、私にしかできない事を考えてみよう。


 まずこの国の技術だけど、日本と比べて百年以上の差があるとみて間違いない。勿論、日本が先を行く形だ。


 根拠はいくつか挙げられるけど、一言でまとめるならいろんな物が古い。

 貴族が使うものだから、大量生産されたものじゃなくてハンドメイドになっている可能性もあるけど、加工技術が無いからって理由の方が納得できる。


 技術の発達は分野ごとに差ができる可能性はあるけど、それでも下手すると五百年くらい前じゃないか? 魔法があるせいで、いくつかの分野では千年以上遅れている可能性だって十分ありうる。


 とにかく断定はできないけど、もしこの世界の技術力が低いのであればわたしの知識はかなり有用だ。


 伊達に科学部にいたわけじゃない。化学、数学、物理学は大好きだ。

 そしてその中でも一番好きなのが機械工学。

 わたしは機械の知識であれば、高校生どころが大学生にも負けない自信がある。


 臨機応変に対応するけど、産業革命目指してみますか!

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