0003 神様(百合)
この前みたいにタイトル詐欺ぎりぎりじゃありませんからね。
更新遅くなってほんとすいません……。
あまりにもいきなりのことだったので、彼女が断るのは道理であったし、そもそも女を侍らせていそうな男が身持ちの固そうな女にもてるわけがなかった。好きでもない男との婚姻を嫌がるのは異世界人の典型的な性格だ。それが事前に頭にあればそもそも言わなかったろうことである。
しかし、自分から彼女が「自分は百合だ」と宣言するまでに追い詰められていたのだろうか? そこまでのこととは思えない。
「おいカオリ? どうしたんだよ」
「こういうタイプが一番嫌いだし。しつこいに決まってるから、事前に言い訳を作ったの。もちろんほんとのことだけど」
「そうなのか……」
いいや、現代人に百合が増えていることはパソコンも承知の上だった。どこからか聞こえてくる声、それはいつも女の二人組だ。たまに二人だけの会話に熱中しているが、仲が良いというものではないほどに仲が良すぎる二人だった。
「あの二人組は…… 誰なんだろう」
「ん、なに?」
ふられて撃沈した男を放って、ギムバじいさんが案内してくれた仮の宿に泊まる。こういうところは並大抵の現代人ではかなわない優しさである。昔を懐かしむばかりの人がいるのもうなずける。
「さて、異世界人はあやまちを犯さぬものと聞いておりますもので、同じ部屋でよいでじょうかな?」
根本的にギムバじいさんは何か勘違いしているのだが、そこに突っ込むのはさすがに野暮というものだろう。男女の仲が異常によすぎる異世界人ばかりがここにやってきたのかもしれない。
「大丈夫ですよ。パソコンでも襲ってきたら蹴っ飛ばします!」
「勇ましいことでずで。それでは」
村の中心部にある、現在は使われていない故人の家だ。内装は普通の木造の家といった有様である。小屋なのに家のような内装があるという矛盾を彼らは特に気にせずに受け止め、うんうんとうなずいてすらいる。
『もしもしー? 二人きりになったみたいだけどー?』
「あの声だ」
意識に目覚める前に、わずかに記憶に残る二人組の女性の、おもに話しかけてくる声。黒い髪に、日本人でも珍しい漆黒の瞳をパソコンは思い描いた。
『はいはーい、ミズタミカンレイですよー。覚えてますか、パソコンくん』
自然に、いかにも不自然な名前の漢字が浮かんでくる。水民、寒冷。
「あんたは誰なんだ? 水民寒冷」
『答えは知ってるでしょ、パソコンくん。ジェリガくんであってたかな?』
「いや、それはあいつがつけたほうで」
『君の真名を知るのは難しいから、ジェリガにしとくよー。 ……そうそう、私が何者かって答えに答えないとね。はい、驚かないでね? 私は神様です』
もしも神に会うことができたのなら、とパソコンはずっと考えていた。彼はどのような形であれ人間になりたかった。動かせる体もなく、インターネットに接続してもその中に入り込める体もない。
「神様…… 教えてくれないか?」
『何を? この世界の詳細なら忘れましたよ?』
「さっきから何の話をしているの? 神様って何?」
『カオリちゃん…… なかなかかわいいですねー。というかカオリちゃん、私たちはまだ何の話もしてませんよ? 教えてあげようと思ったのにパソコンくんが水を差すものだから全然お話が進まなくって』
それだけ一気に言い切ってから、神を名乗る彼女は言った。
『とりあえずですね、あなたたちには強くなってもらいます』
まぁたこの引きか……。ちょっと我ながら、終わらせかたの才能がないです。次回更新が速くなるように努力しますので、その、お許しを。