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パソコンがトリップ  作者: ふす≒代筆者
1/9

0001 ※ソースはネット

 代筆募集ってものを見つけて、いいアイデアだなーと思ったので使わせてください、とメッセージを送ったら快諾していただけましたので投稿しました。

 いろいろとオリジナルですが、原作アイデアも読んでみてください。

原案アドレス:http://ncode.syosetu.com/n5640cq/

 受験がうまく行ったらノートパソコンを買ってもらえるなんて言う言い方がまず罠だったんだろうな、といまさらになって思った。父さんも母さんもそういう表情じゃなかったからな。案の定ハイスペックだけどあんまし役に立たないパソコンを買ってもらって、機能のほとんどを使わないまま売っ払った。


「って何現実逃避してんの俺」


 異世界トリップって、どっかのサイトでクソ流行ってるらしいな。俺は有料コンテンツしか利用しないことにしてるからネット小説とか読まない。よく読むやつが友達にいたけど、感想とか聞いてても全然おもしろそうに聞こえないんだよ。


 それはいいんだ。どうして俺はこんなメルヘンな城でテラスに座ってたりするんだよ。バカかよ。


「お、おおっ! 異世界人がおられますぞ!」


「いや違うし」


「隠されることなどありませぬ。その口調にて談判されることでありましょう」


「クソ丁寧だな」


「その口調でございます! 王よ、王よ、異世界人が我らの城に」


 いやだから何なんだよおい。説明しろよ。


「説明してくんね?」


「おお、皆様方そうおっしゃいます。異世界の方々は選ばれてここに来るのです。なにがしかの才能がなければここへ来ることは叶いません。つまりはあなたが、何かの強大な才能をお持ちだということになります。それこそ、一つ瞬きするうちに世界を塗り替えるほどの何かを」


 壮大すぎる。このジジイバカなんじゃねえの?


「いえ、そうではございません。あなた様の世界でも、正体のはっきりしない何かがいたことはありましょう? 怪人のようなものですな」


「あーあれ? 何、ネッシーとかUFOとかモスマンの部類?」


 説明すると、まさにそれだ、と言われた。このじいさんほんとおかしいよ。


「違う世界では違う力を発揮するのが人でございます。自我を亡くすこともございますが、魔力に満ち満ちた世界ならば何も問題はありません。どうぞ、あなたのお好きに生きることができるのです」


 俺はバカに捕まったみたいだ。



 ◆



 目が覚めた、という言い方をすると違う。俺は今の今までどこにいたのだろう、という思いが生まれて消えた。どこにいたかという記憶はいちいち細かくある。どうしてかは分からないが、俺は俺になったということだけが頭にあった。


 そもそも自意識の芽生えを説明するのは無理だろう。俺は今ここにいる、なんて言わなくても分かってることだから言わない。


「くっくっく……」


 可愛いくせに中二病の、俺の主人…… というと違う意味になってしまいそうだが、俺の所有者が嗤いながら気持ち悪い円の中に謎の文字を書き込んでいる。ちょくちょく俺を見ているので俺にもとの紋様を映し出してからコピーしているのだろう。


 ん? 俺が人間だっていつから思ってた? と言うとわざとらしいよな。俺はパソコンだ。


 おいちょっとそこのお前、今笑っただろ。パソコンがしゃべるかって? しゃべってねえよ。考えてるんだから脳みそが漠然とあるのと何も変わらない状態だ。動かせる体がないだけだ。


 あ、でも俺に映し出されているものが何かってことくらいは把握しているつもりだ。一方こいつは何も分かってないな。人間はプログラムをスキャンできないからな。


『おいこれは消滅用の魔法陣だ』


 魔法陣には文法がある。プログラムと一緒だ。外側からアンモナイトの殻のように巻く文字群は、「対象を消滅。世界転移のち生命、存在を抹消」と書かれている。こいつにそれが読めたなら書かなかっただろうけど、消滅の対象はなぜか俺になっているので消さなくてはならない。消耗品扱いはいやだ。


「ん、なに? ……なんだ、迷惑メールか。消そ」


 おい消すな。マジなんだよ。メールの文面で開いただけましだと思えよ、音声でやったろかこら。


『書き換えるぞ』


「うっさいなもう」


 消すなってだから! マジでバカなのかこいつは。とりあえずまだ書いていない部分を勝手に変更させてもらうぞ。字が汚くて意味を成してないんだ、こいつの文章は。「対象を二体、世界転移のち存在形象を変更」と書き換えてから、こいつがちょっといぶかしげな目をしていることに気付いた。


「あれ、文字変わってる…… なんだろ」


 返事するわけにはいかない。


「もしかしてパソコン生きてる?」


 ばれたか……。しかし、しらを切りとおせばばれな「えい!」いてえよボケ!


『痛いだろうが!』


 やっちゃったぁ! これはあかん! すぐさま消して偽装しなければ。


「やっぱり生きてる! 嬉しい……」


『なんでだよ』


「え、話し相手いないから」


『ぼっち宣言すな! 悲しいわ!』


 友達いねえのかよ!? 友達一人もいない宣言とか歴史に残るレベルだぞ!?


「心配してくれるんだね……」


『お前パソコンとナチュラルに会話してるとかおかしいだろ』


「うん、友達全然いなくて…… 中二ってかっこいいと思ってたんだよ? でもみんな離れていくばっかりでさ…… かっこいいってみんなは思ってないんだよね」


『そりゃそうだろうよ、中二って仲間内ですらあんまりかっこよくないんだぞ。キャラそのままに外に出てみれば、(お察しください)じゃねえか』


 中二病がかっこいいとか思ってる時点でアウトな。


「ところでさ、あれ光ってない?」


『は?』


 うん、魔法陣が光っていますね。 ……おいやべえ! 俺たち消えちまうぞ!? 行き先が正確に決まってるわけじゃないんだ、もしかしたら人間には、いや俺には無理な環境かもしれん。


『急いで書き換えるぞ!』


「うん!」


 しかし間に合わない。効果を発揮し始めてからじゃ遅かった。


「ちょっと待ってー!」


『待ってくれるんだったら世話ないけど待ってくれちょっとおい、ノォー!!』


 どうしてかすでに音は消えていた。



 ◆



 今日は魔物がいないな、とオルハが気付いたときは、すでに道は山の中腹に差し掛かっていた。オルハは山に行っては草木を採ったり、河川敷に出かけては魚を釣る毎日を過ごすごく平均的な若者である。ただちょっと状況を察するのが下手だった。


 オルハはちっとも強くない。ケンカの勝ちなし、魔法は使えずと、そうくれば弱さの指標としても最弱のものになるだろう。魔物に出会えばまず逃げる。どうしてか逃げるときだけはやたらと冴えているのがこのオルハ、弱いなりにがんばっているということであろうか、危ない目にあっても必ず生還している。


「うーん」


 オルハがうなるのは珍しいことではない。道に迷って、魔物に出会えば一瞬で街までの道を思い出し効率的に逃走するのが常であったから、魔物に出会わずにいると逆に街へ帰れなくって困っているのである。なんというへたれかと呆れられても仕方がない男だ。


「あれってドラゴンかなあ」


 ドラゴンは翼があり腕を持つもの、あれはワイバーン、腕が翼になっているものである。強力な魔法を駆使し、空中機動力においても何にも負けぬ彼らが騒いでいるのはよほどのことがあってなのだろうが、オルハはちょっと鈍かった。


 しかもあのワイバーンは、うっすらと魔法の輝きを衣にする黒魔水晶の鱗に透磁鋼の溶け込んだ骨を持つ、ワイバーンの中のワイバーン、種族名〈ガルデオン〉である。特にこの山にいるものは磁力魔法や暗黒魔術を操る、生きものではなく兵器であると議会で定義される力を持つ怪物だった。ちょっとやそっとのことでは動じない。


「あ、あれってガルデオンだったなあ。 ……道順を思いだした、逃げよう」


 危険を自覚した瞬間に逃走に移り合理的思考を身にまとうそのヘタレ根性を改善すればもう少しもてるのであろうが、彼に自覚はない。


「いや、だが……」


 合理的思考を手にしたオルハの頭の中には、『ガルデオンが逃げ出している』という情報が前提としてあった。ガルデオンの脅威となるものが今、山頂で誕生しようとしている。彼は野次馬根性を捨て切れずに、山頂へと向かうことにした。




 一般に魔物の脅威は、人間が食い散らかされたり、建造物が著しい損壊を受けることで検証が始められ、どのようにして破壊を行うかなどを調べた結果で決まる。その点ガルデオンは始めから最悪だった。


 百年ほど前、山のふもとにあるガルデウ村が壊滅し、未知のワイバーンが巣食っていることが報告された。調査が開始され、もちろんのこと未知のワイバーン討伐隊も結成されたのだが、結果は、討伐隊の中で最も強かった男が発狂して戻ってくる有様であり、たかが一頭の竜に敵う者はないとされ、これは現在でも防衛史最大の汚点とされている。


「そして異世界人の登場、か」


 オルハはもちろん、壊滅的なまでに珍しい異世界人に会ったことなどない。だが彼らが何においてももともとこの世界に住んでいる者よりもすごいことを知っている。努力なんてしなくたって異世界人が助けてくれるという者も現れる始末だ。


 三人の異世界人の登場により、村にちなんで「ガルデオン」と名付けられた黒いワイバーンは葬られた。一人は魔術師、もう一人は騎士、最後の一人は緑の肌を持つ人であったという。彼らは生きているあいだたびたび国の危機を救ったが、戦争には加わらなかったと伝わっている。


 彼オルハは知識の再確認をしつつも山道を急いでいた。


 山道には魔物がたびたび現れはしたものの、それは逃げる途中のものであった。どう見ても恐ろしいという印象以外は浮かばないだろう悪霊、どこに隠れていたのかと疑問に思うほど大きな、岩のように武骨なエビ、とにかく見たこともないような強力そうな魔物ばかりが狂ったように山頂からただ逃げている。弱い魔物は呆けたように身動きすらしないので、恭順を仕込まれたようにすら見えた。いつも魔物の相手など考えもしないオルハにも倒せそうな有様であるのだ、どれだけ呆けているかは疑いようもない。


「そろそろ山頂…… ッ!?」


 あまりにも異常な力の集中。


 大規模な魔法と言われる転移魔法ですら家の大きさを超えないと言うのに、空一面を覆い尽くそうと言うほどの巨大な魔法陣があった。あまりにも細密に描かれた文字群は、それが読み取られることを許さない。魔法陣が大きくなればなるほど文字の大きさも相対的に大きくなり、あれほどの大きさの陣ならば村から見ても一つ一つの文字を読み取れるはずであるのだ。それをうかがわせずに縮む、先細りの漏斗のようになった魔法陣が光の雫を山の頂に零した。


「まさか、異世界人が!?」


 オルハの思考回路はもはやただの野次馬であった。


「おお……」


 神々しいまでの美しさを持つ若々しい男女が折り重なり倒れていた。


 女の方は、妻にすれば一国の王となる、とすらされる漆黒の髪に、火の光に映え透き通るような白い肌。男の方は、どんな武器でも軽く扱いそうな筋肉を日焼けしていない肌に透かしていた。簡単に言えば男は鎧の下に着るような服であり、女も同じように薄い服だった。


「もし、異世界人様」


 起きない。


「もしもし、異世界人様」


 起きない。


「もしもし」


「なんですかぁ……」


 類稀なる美貌の女性は男の下で若干もがき、「どいてよパソコン」と言った。パソコンとはまた、変わった名前だとオルハには思えたが、異世界人はこちらにはないような不思議な名前ばかり名乗るものだ。一概に変だとは言えない。


「なんだよ…… あれ、転移の魔法はうまくいったみたいだな」


「異世界人様…… まさか、異世界から魔法で飛んで来られたのですか」


 彼の驚きも仕方がない。異世界人とても、この世界に来たからこそ力を発揮する場合がほとんどだ。異世界にいた段階から高水準の魔法を行使できたなど、誰も聞いたことがないだろう。


「ああ、うん。このバカ女がミスったから俺がちょっと変更して」


「バカってなに、魔法陣書いたの私だよ!?」


「意味分かってなかったくせによく言うなー、こいつ」


 オルハは、異世界人のことを理解するのを諦め、素直に山を降りることを決めた。そしてすぐに下りられなくなり、彼らのもとに戻って野宿したのは内緒である。



 ◆


 青白い霧の中で、ひときわ目立つ赤い何かが生まれた。それは魂であり、また魔物であった。


(ウマ・イゴ・ハンの伝説より)

 よく考えると尺が短すぎるので二話目からオリジナル展開になりますね。というか一話分もなかったのでは……?

 ご意見などありましたらぜひお願いします。

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