第13話 決着
俺は、残り少ない時間と、HPのおかげで、まだ詳細も知らない最終手段を使うハメになっている。
(これ使うの嫌だけど、仕方ないよね)
覚悟を決め、遂に使う。
『装備スキル発動。ただ今から5秒間、既存スキルを、無制限に使えます。カウント3、2、1、0』
「なっ!!」
そりゃ、行男も驚くだろう。なぜなら、一瞬にして、目の前に俺が現れては、いきなり決着が着いたんだから。
『Winner,土井信次』
何の工夫も、効果音もなく、ただそれだけを表示していた。
「一体、何をした!!」
行男は低く、そして恨むような声で、俺に尋ねてきた。
「分かったよ。説明すればいいんだろ」
俺は、渋々行男に答えてやった。
あのクイズ形式のクエストが終わって、この街に向かっている途中、一体のモンスターを狩った。その時、ドロップしたのが、今着ている『オールドアーマー』というものだ。能力は、さっき使った通りに、既存スキルを5秒間どれでも使えるという、チートに近い装備品だが、うまい話には裏があるように、弱点がある。それは、全スキルが表示されるから、視界が悪く、更に変なスキルを選んでしまう可能性があるという点だ。
もちろん、対策はする必要があるが、なにせ、今使ったのが本当に初めてなので、そんなものはない。と言うか、本当に成功するとは思えなかった。
でも、成功したから、こうして勝って生きているんだから、まぁ、いいだろう。
「ふん。だからってそこまでの力をスキルで使えるか?慣れてすらいないのに」
「もちろん、俺だってバカじゃない。これでも中級スキルしか選んでないんだぜ?」
これも事実だ。上級だと、殺してしまう可能性があったから、中級スキルを選んだのだ。
「そうかよ。俺には本気で来なかったって事かよ」
「そりゃ、情報を引き出すまではお前には価値があるからな。殺してたまるか」
「ふん。随分と甘いな。本当に情報をいうと思ったか?GMに会えるとでも思ってたか?」
何か不味いような気がする。
「GMコマンド309-chak-452 ナンバー4」
そう事務的な用語を言った行男は、もう消えていた。ナンバー4を言い終えた瞬間に。跡形もなく。
「一体、何が起こったんだよ.....」
『ピンポンパンポーン。火友行男さんが自殺しました。残りの皆さん、早く出る努力をしてください。それと、次の層にも行けるから、楽しみにね〜』
そんなアナウンスだけが、ボス部屋に響き渡った。