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第二話

5/25 一部を修正しました。

――――――――――――――――――――――――――――――


職員室では栄都が行く場所の詳細を説明されていた。

「――と言うわけだ、すぐ行って来い」

教師のその命令口調に、少しイラッとしたがだが構っている暇は無いと足を急がせる。

命の危険があるのだ。街の人たちだってきっと動いているはずだ。

だが街の人が動くのと自分が動くのは意味が真反対で、それがまた苛立たしく栄都は思った。

UMAから逃げるのではなく、向かうから。

だがそれはALだから当然であり宿命と行ってもいいかもしれない。

そんな事を栄都が考えていると、目的地が近くなってくる。

近所だった。

というより、UMAが出現している場所のすべてが近所である。

東京全体ではなく、一部のまた一部というこの街だけで出現が確認されているのだ。

しかも街全体ではなく、学校周辺だけというのが更に意味不明な事だった。

だがUMAの出現場所を変えることは出来ないし、もし変えられたとしてもそれはそれで危ないから国が果たす『UMA絶滅』の為にはこれが一番いい方法なのかもしれない。それに研究は栄都の親やその他の研究者に丸投げである。国際的な問題だと言うのに、何も出来ないということだろうか。それともこれ以上UMAのことで騒がれたくないのだろうか。

「っと…ここの辺りだな」

栄都が目的地に到着した。見慣れた商店街だ、わざわざ説明を受けるまでもなかった。

だが説明は毎回きちっとされる。万が一のためにだろう。学校側の。

だからそれを毎回聞いてはいるのだが、数十回行ったようなところばかりで軽くデジャブを感じていた。

「UMA…見当たらないぞ?」

商店街は入り口から出口(場合によっては逆)まで見渡せるようになっていたのだが、そこにUMAらしき生物は見当たらない。というより、人物すら見当たらない。恐らく逃げたためなので気にはしなかったのだがUMAがいないというのは初めてだった。

「どういう事だ?隠れているとか」

そう思った矢先、少し離れた店の中からUMAが出てきた。

二足歩行の、怪獣のような形をしているタイプで、その体には大量の血が付着していた。

「お前…その血は」

UMAは栄都を見つけるなり、もの凄い速さで迫ってくる。

「ALO起動!肉体強化+1、スタートだ!」

+とは種類のことであり、呼びかける際選択できる能力のことである。

栄都の場合『+1』が全身を中心とした強化、『+2』が足の筋肉を中心とした強化、『+3』が腕の筋肉を中心とした強化と設定している。

戦闘中に切り替えることも出来るが、そうしている余裕は殆ど無い。

だからこそ、慎重に選択しなければならない事だった。

時間は待ってくれない。まるでALOの起動に反応するかのように、UMAが叫び、追ってくる。

追いつかれるまで、残った時間は少ない。

だが。

「かかって来い!受け止めてやるぜ!」

栄都もまた、全力でこちらに向かっているUMAに「向かっていた」。

このまま走ると、衝突してしまう。

だが栄都の狙いはその「衝突」だ。

「喰らえええええ!!」

全力で走った自分と、こちらに向かって走ったUMAの勢いが混ざる。

そして、その勢いを利用した。

こちらに向かってくるのなら、わざわざ自ら走りに行かなくとも敵は来る。

だが逆に自分が行くことで、勢いをつけ大きいダメージを与えることが出来る。

それが栄都の考えた戦略だった。そして、その戦略は大いに効いた。

栄都の自分の相手に向かう勢い+相手が自分の方に来る勢いを利用したパンチは、UMAの腹部に手が食い込むまで強烈な衝撃を与える。そして、UMAの体が徐々に消えていき、ついには跡形もなくなった。

「…終わったか」

だが、これで終わりではない。

栄都はUMAが出てきた店の中を見る。

中に電気は付けられていない、真っ暗だ。

そして中に入り、確認する。

店員だろうか、それとも店に住んでいた人だろうか。分からないがそこには、3人の死体があった。

見る時に思った、『目を背けたい』と。だがそう思った時に感じた、『背けてはならない』と。

栄都は警察に連絡をいれ、それからすぐ、家へ戻った。


「栄都、遅いな」

「結構手こずってるとか?」

「まさか。あの栄都だぞ、きっとすぐ倒して今向かっているはずさ」

「まあそうよね。公家が言うと余計説得力があって安心するわ」

『緊急連絡をします。丸塚商店街で殺人事件が起きました。通報により犯人はUMA、そのUMAは現在駆除済みとなっております。危険性はありませんが、今後話し合いがあるため生徒は今すぐ速やかに下校してください』

「…やっぱり栄都、倒したらしいな」

「‥そうね。流石だわ」

栄都が来ない理由を、2人は悟ったようだった。

そして悟ったのは2人だけではない。

学校中が静かになる。

この街で殺人事件が起きたのは、あのサラリーマンの事件以来だ。

そう、UMAによって殺されたあの事件。あれからこの街は、UMAの存在に脅かされながらもなんとか平常な状態をつくろうと努力していた。

だが今日、また事件が起きてしまった。これによって今までの全ての努力が無駄、振り出しに戻ってまたつくろうとしても無駄だろう。この街は、UMAと真剣に向き合う必要がある。

栄都は自分の部屋で、1人ベッドで寝転がりながら思っていた。

――自分ができることはなんだろう。

本当にUMAを倒すことだけなのか?

だが実際、そうすることしか出来ないからそうしているのだろう。

だから考えたって無駄だ。

じゃあ無駄になったところでどうする?

また1人殺されてしまうかもしれない。そういう状況になっているのに自分は何も出来ずに居られるのか?

自分ができることを考えるのは無駄なのだろうか?

「…そうだ。戦えるのは俺だけじゃない」

栄都は立ち上がり、部屋を出た。

支度をする。

自分ができることをするために。

そして家を出て、歩き始める。

尋ねたのは、公家の家だった。

「はい、公家で…栄都か。お前、大丈夫だったのか?」

「ああ。見たのは初めてだから少しは…」

「そうか、わかった。それじゃあ上がってくれ」

「その前に、凜花読んでくれるか?」

「わかった。あいつの家は近所だから、直接行こうぜ」

栄都から公家の家は結構距離があるのだが、公家と凜花の家は幼馴染ということがあって比較的近い場所にある。

そして公家は鍵を掛け、栄都と共に歩き始める。

「なんで俺の家に来たんだ?」

「話したいことがあってな…だがそれは、凜花を呼んでからでいい」

「そうか…」

それ以上会話が続かない。

やはり今日起きた事件のせいだろうか。そしてその事件に栄都が関係したことだろうか。

公家は感じていた、『自分も無関係ではない』。

自分は頼まれた側ではあるが、一応ALに所属し、ALOを所持している。

だからUMAを倒すのが本来の役目だ。

だが自分の実力では役立たず。学校は『行く人はなるべく少なくしたほうが良い』と自分を行かせてくれないし、行ったって足手まといになる可能性だって無いわけではない。

悔しさを感じたって、仕方がないのかもしれない。

ALOによる能力の操作は、実力はほとんど関係ない。

問題は『その能力と自分が合っているか』であって、簡単に言うと才能だ。

努力したって能力が強く出せるようになるわけではない。使い勝手や使いやすさは変わるが、それは努力以前の問題だ。

だから公家は少し、諦めを感じていた。

栄都がどれだけ強いのかわかっているからこそそう感じている。

そこに恨みや憎しみは一切ない。ただ単に『自分がこんな実力で悔しい』だけである。

だから栄都を悪く言ったり、思ったりすることは絶対にない。

凜花だって恐らくそうだろう。

と、公家が考えていると、あっという間に凜花の家に付いてしまった。

インターホンを押し、凜花が階段から降りてくる音が聞こえる。

「はいはいどうも…って栄都と公家!?」

凜花は突然の訪問に驚いた。

「よう、凜花。ちょっと話があるから上がらせてくれ」

凜花の家で話すのか、と公家は少し驚いたが別にどちらでもいいかと思ってすぐ考えるのをやめた。

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