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「西條杏奈さん、おりましたら迷子センターまで来てください」

「買い物?」

「来週月曜日からキャンプは二泊三日、うち2日目は夜のキャンプファイヤー以外は班で自由行動なのでその時に必要なものを買いにいきます」

「そんなん俺聞いてないぞ」

 今日が金曜日なので実際今日行くしかないだろうけど、事前に話もなしかよ。

「五時限目に話し合ったよ?シンタローは寝てたけど…」

 言われてみればメシの後2回ほど机を動かした記憶がある、そうかあれ班で机合わせてたのか…

 すんません、俺が話聞いてないだけでした!

「まあ買い物はかまわんが、班のなんだろ?種川は?」

 この場に杏奈と紗織はいるが種川の姿がない、班の買い物ならあいつもいるはず…………「いろはす」ってなんで透明なのにリンゴやらミカンの味するんだろう?科学調味料?

「種川君は部活だそうよ」

「あ、そ」

 確かバスケ部だっけ?ガンバレ種川!

「だから買い物は私たちが行くと言ってあるわ」

「そうそう!だから早く行こ、シンタロー!紗織ちゃん!」

 余談だが、このとき紗織は買い物について

「私たちで行くわ、ね?杏奈」

「うん!」

 と種川に言っていたため、種川は横で寝ていた俺も一緒に行くとは思っておらず…当日それを知って拗ねたがめんどくさかったのでしばらく放置した。だって俺のせいじゃねーし。

 とまあそんなわけで買い物に行くことになった。

「どこに行くんだ?」

「グランドモールだよ!あそこならなんでもあるし!」

「うへ、遠いなぁ」

 グランドモールとは簡単にいえば巨大ショッピングモールのことだ、杏奈が言った通り大抵のものは売っている。

 けど学校から7キロは離れているのでバスを使わないと行くのは困難だ。

「バスに乗るのですし、別にいいでしょう」

 いやまあ良いんだけどさ…バスはバスで乗る時がやなんだよな…

「あっ!来たよー、バス!」

 学校前のバス停からグランドモールまでは乗り換えなしで行ける、そんなわけで杏奈、俺、紗織の順で乗り込む。

 そのとたん周りの視線が嫌がおうにも俺達に集中する、俺はこの瞬間が嫌であんまりバスを使わず、1時間かけて学校にもチャリで通っているのだ。

 人は会話や接触をせずともまず見ただけでその人物に好感度をもつ、イケメンだったり美少女だったりすればそれだけで50%を越えることだってある。反対にブサイク、つまり顔面の構成がよろしくなければ好感度は最初から低い、極々稀に例外的な人もいるが人間なんて実際そんなもんである。

 なのでバスに乗っていた人達にも3%やら10%やら色々な好感度が表示されるわけだ…ちなみに完全に嫌われると0%になるけど、認識されなければそもそも表示されない。

 そして今回は杏奈と紗織が一緒に乗ってきているので二人の美少女っぷりを再確認させられる。

 45%とか50%なんかを叩き出しまくっている、いやー、ホント俺とは違うね!

 二人とも好奇の目で見られている、主に男性陣から、気持ちはわかるよ、たぶん俺もこんな女子が乗ってきたらガン見する自信あるし。

 しかし杏奈は気にしない、正確に言えば気づいてない。

 紗織は……全員をにらみ返していた、どうやらこういう視線はお嫌いらしい。

 大体はこんな対応をすれば好感度は多少なりとも下がる、逆に上がるならそいつはドMだ。

 なのでこのバスに乗っている人の約3割はドMだということが判明した。

 それはどうでもいいとして、俺達は一番後ろの席に座った。同時にバスも発車。

 なぜか杏奈と紗織は俺を挟んで座り、二人で小声で話している。俺挟まない方が良かったんじゃないの?

 さすがに[好感度75%]の杏奈と[好感度82%]の紗織に挟まれていると色々余計なことを考えてしまうし、心の中に無自覚な期待が生まれてしまうかもしれない。いくら自分に言い聞かせても男という生き物は勘違いしてしまうのだ。

 俺は無心になるべくバス座席から伝わってくる振動に自分を同化させようとする、俺はバス、バスの一部だ………そういえばバスは英語でbus、ローマ字読みなら「ブス」である、つまり俺は今ブスと一体化している!

 ……………悲しくなってきた。

 



 はい、着きましたグランドモール。

 デカイ、とにかくデカイ。それによく考えたらなに買うか聞いてねぇ。

「なあ、買い物ってなに買うんだ?」

 とてつもなく今さらな気がするが聞いておこう。

「えっとあたしたちは2日目は川で遊んだりする予定だから…み、水着とか」

「そうか…………えっ?」

 水着!?ちょいまち、は!?

「な、なあ、それ俺いる意味なくね?」

 さすがに女子の水着とか一緒に見れないし、正直恥ずかしい。

「い、いいでしょう!どうせあなたのも選ぶのですし、他にも買うものはありますから!」

 紗織さん!?既に俺のまで買う計画!?

「じゃあ俺はその他のを買いに行くから!」

「駄目です!とにかく来なさい!」

「そうだよ!シンタロー!」

「いーやーだー!」

 二人に制服の襟をつかまれ、そのまま水着コーナーに連行された。

 女性用水着コーナー、男子がソロで乗り込むには顔面偏差値が60はないと客、及び店員に警戒もしくは侮蔑の目をむけられる侵入不可能エリアのことだ。

 なにがどうなってか、俺は今そこにいる。

 さらに杏奈と紗織の水着選びに付き合わされている。

 こんなイベント、嬉しいは嬉しいのだがどうしていいかわからない。俺には不釣り合いなイベントだと思うんだけどなぁ。

「シンタロー、どっちがいいかな?」

 杏奈が手にしているのは上は肩を通さず、下がショートパンツタイプの同じ水着二着、でも色が違う、水色かピンクか…

「うーん、ピンクの方が似合うんじゃないか?」

「そっか!じゃあこっちにするね!」

 即決…

 嬉しそうにされると選んだだけでもちょっと照れくさいな…

 今度は肩をつつかれ振り返ると、紗織も二着の水着を持っていた。

「あの…どちらかにしようと思うのですが、一応、あなたの意見も聞かせてください」

 紗織が持っているのはビキニタイプだが、腰からパレオを巻き露出を抑える仕様のものだ。白か紫かで迷ってるのか…

「俺はこっちの方がいいと思うけど…」

 言いながら白い水着を指差す。

「そう…ですか、ではこれにします」

 またしても即決…本当に迷ってたのん?

「それじゃ、試着してみようよ!」

「ええ!?」

 紗織が驚きながら俺を見る、あ、誤解しないでね、「試着してみよう」って言ったのは杏奈。

 心配しなくても覗いたりしませんよ?んなことする度胸もないし。

「サイズとか合ってなかったら困るし」

「そ、そうね」

 紗織も納得したようだ。しかしサイズと言われると無意識に二人の胸を見てしまう…いや、男なら仕方ないよね!?

 杏奈がC 、紗織がDといったところだろうか。

 とか考えてるのバレたらぶっ飛ばされそうなので視線を外す。

「じゃ!シンタロー荷物よろしくね」

「よろしく」

 そう言って杏奈と紗織は同時に試着室に入った。

「…え?」

 二人とも入ってしまったので今俺は水着売り場に一人…ま、まずい!現状、俺は端から見れば女性用試着室の前にただ立っている男だ!

 こんなやつ俺が店員なら速攻で事務所につれていく。

 お二人とも、はやく!はやく出てきてくださーい!

 妙に長く感じた一分半だった、やっと試着室から声が聞こえてきた。

「着替え終わったよー!紗織ちゃんはー?」

「一応私も…」

「じゃあお披露目だ!開けるよ紗織ちゃん!せーの!」

「え?ええ!?」

 会話?が終わると同時に杏奈が試着室のカーテンを開けた。

「じゃーん!どうかな?シンタロー」

 さっき選んだ水着は杏奈の純粋で元気な印象にぴったりでよく似合っていた。

 思わず黙ってじっと見そうになるがとにかく感想を伝えないと…

「ああ、いいと思うぞ、よく似合ってる」

 これが精一杯だ、そんなしゃれた褒め言葉は俺のボキャブラリーにはあいにくないからな。

「そかな、えへへ…」

 嬉しそうにしてくれているので失言はなかった見たいだ、よかった~。

「ってありゃ?紗織ちゃんどうしたの?」

 紗織が入った方をみるとカーテンにくるまって顔だけ出していた。

「なにやってんだ?」

「いえ、その…」

 聞くと顔を少し赤らめていいよどむ、もしかして水着姿を見られるのが恥ずかしいのか?

「紗織、別にムリしなくても」

「紗織ちゃん、ほらほら!シンタローにも見てもらおうよ!」

 杏奈、空気を読まない子!問答無用で紗織からカーテンを剥ぎ取る。ピュアとは時に罪であることを知った瞬間だった。

「ひっ!」

 彼女らしからぬ悲鳴とともに俺の目に映ったのはなんというか…可憐、とでもいうような、そんな紗織の姿だった。

「……かわいいな」

「…え?」

「あっ!いや!その…」

 無意識に口から出てしまった。なんか超はずい。

 紗織は「シュボッ」っと一気に赤くなり

「あ…はわわっ!うわぁ!」

 よくわからん叫び声と一緒に試着室に戻ってしまった。

「ど、どうした?」

「なんでもありません!」

 怒らせた!?とりあえずなんでもなさそうではないんだけど!?

 俺では理解できそうもないので助けを求めて杏奈を見ると

「紗織ちゃんだけずるい…」

 と膨れっ面で試着室に戻っていった、あれぇ!?なんで!?

 二人が出てくるまで怒ってるんじゃないかと気が気ではなかったが…

「そ、それでは真太郎の水着を買いに行きましょう」

「そうだね!」

 なんでか出てきた時にはいつもの二人だった、いや「いつもの」って言えるほど一緒に過ごしてないけど…

 考えてみると杏奈とも話すようになって一週間、紗織なんか会話したの昨日が初めてだった。NO相談部なんかにも入れられるし、最近俺の周りどうなってんだ?

「って言ったって俺水着はなんでもいいんだけど…」

「それならあたし達が選ぶ!」

「は?」

「私はそんなことどうでもいいのですが…杏奈がやるならやります」

「はい?」

 結局俺の水着が決定するまで30分かかった…あなた達自分のは5分もかかって無かったよね!?

 選ばれたのは黒に赤のラインが数本、最後に白で妙なエンブレムが入った水着だった、俺的には意外と気に入っている。

「さてと、あとはなにを買うんだ?」

 まさか水着オンリーってことはないよな、いくら特別なオンリーワンでも怒るぞ。あ、サーティーワンなら許す美味しいから。ラウンドワンも行ってみたい。

「あとは…バーベキューセットなどですね、持ち運べる小さなものです」

 紗織がメモを確認しながら答える。

「となるとアウトドアコーナーか、別の棟だな」

「シンタロー詳しいんだね」

「まあ何回か来てるしな」

 ………一人で。 

 一緒に行ってくれる友達なんていなかったからな、あとあえて強がりを言わせてもられば一人で気楽にブラブラしたかったというのもある。

 てか、バーベキューもする予定だったのね…本当に話聞いてねーな俺。

「まあ、買うものはわかった、とにかく行こうぜ」

「はい」



 午後9時、やっと買い物が終わった…

 買うの自体は大した時間はかからなかった、そのかわり杏奈が2回迷子になったせいだ。

 一回目は迷子になったことに気付かずずっと自販機の前でなに買うか悩んでたところを確保したのだが…

 2回目はさすがに気付いたらしく俺と紗織を探しまわり逆にどこいったかわかんなくなって、携帯もつながらなかったので最終的に高校生を迷子センターで探すはめになった。

「疲れた…主に買い物じゃない部分で」

「ご、ごめんなさい…携帯、バス乗った時に電源切ったまんまにしちゃって…」

「本当に大変だったわ…」

 現在はグランドモールのすぐ横を通っている道路で紗織の家のリムジンを待っている、「遅くなりましたし、うちの者が送ります」だそうなので。

「お、来たな」

 今朝俺を乗せて学校へと走ってくれたリムジンだ。

「さあ、乗ってください」

「はーい!」

「じゃあ頼むわ」

 杏奈も慣れたものでさっさと座る、しかし朝俺が座った所に腰掛けているので俺はどこに座ればいいのかな?

「………ん」

 固まっていると紗織が自分の隣を指差して呼び掛けてくれた。

「いいのか?」

「別に…かまいません」

 そっぽを向いているので表情はわからないけど、そう言ってくれるならお言葉にあまえて紗織の隣に座らせてもらった。

「月島、出してください」

 どうやらまた運転手はツッキーらしい、お疲れ様です!

 まず杏奈から送ったのだが、杏奈の家まで1時間かかった。グランドモールホント遠いな…

「じゃあね!シンタロー、紗織ちゃん!」

「ああ、じゃな」

「また明日、杏奈」

 ここからだと俺んちまでどんくらいかかるのだろう、もう暗いのでぶっちゃけ杏奈の家が街のどこらへんだかも全くわからん。

 ていうか…やば、眠い……学校で寝たっつっても疲労やら心労やらでクタクタだ。杏奈探すのに走りまわったりしたし、その途中で全然関係ない迷子に遭遇して一緒にお母さんまで探したからな…

 うとうとしながら眠気と戦っているとぽすん、と肩に重圧がかかった。

「ん?……んなっ!?」

「スー、スー…」

 なんということでしょう!さっきまで横に座っていた紗織が、俺の左肩に頭をのせ、寄りかかって寝ています!

 いやこんなビフォーアフター的な解説している場合じゃねー!

「お、おい…紗織…」

 返事がない、ただの屍のようだ。

 じゃなくて!落ち着け俺!

「んん…」

 モゾモゾと動いてちょうどいいポジションを探しはじめた、こうなっては俺も動けない。

「はぁ、どうしろってんだ」

 諦めてじっとしているだけの俺が睡魔に勝てるわけがなく、気がつかない内に寝てしまっていた。




「……くあ…」

 目を覚ました俺が座っていたのはリムジンのソファーではなく、もっと高級感のあるものだった。

 広さ部屋だった、座っているソファー以外に高そうな絵なんかもある。

 さらに…

「…なんでだ?」

 紗織が俺の膝枕で寝ていた。

 さすがに事態が把握できないので紗織を起こす。

「さ、紗織!起きろ!たのむ起きてくれマジ頼みます!」

 必死に呼び掛ける、我ながら必死すぎじゃね?

「うにゅ?」

 くそ…こんなときに可愛い声出しやがって軽くときめいたぞ。

 紗織は起きて、俺が目の前にいることに驚き、頭を動かし俺の膝枕で寝ていたことに気づいて、

「きゃあああああああああ!!!!」

 悲鳴をあげた、気持ちはわかるけど理不尽!

「お嬢様!どうしました!?」

 なんかメイド出てきた!?

「っえ!?……え?」

 紗織はなにかに気づいたらしく、少し落ち着いた。

 すると部屋に一人の男性が入ってきた。

30代前半くらいの中々のイケメンは、俺を見ると笑ってこう言った。

「おはよう、まだ夜だけどね、そしていらっしゃい!後台院家に!」

 紗織の家!?てかこの人誰だ…

「お父さん!」

「ええ!?」

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