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朝起こしてくれるイベントは早朝2日連発だと意外とキツイ

 姉という存在を知っているだろうか?自分より先に両親の営みによって産まれる言わば家族であり人生の先輩だ、これが男性なら兄となる。

 だが我が家においては……

「シロちゃーん!たいへんだよぉ!」

「出ていけ」

 俺はこの人を姉と認めていない、一応家族としては認めているが。

「ほんとにたいへんなんだよぉ、部屋から追い出そうしないでぇ!」

 ええいめんどくさい!こんなんだから姉だと思いたくないんだ、精神年齢がもはや小学生レベルなんだよ!体格大して変わんない弟に甘えてきやがって!

 なによりこの人の俺への好感度は異常としか言い様がない。

 [好感度100%]

 ありえないと思うだろ?なにが起きたかしらんがありえてるんだよ…

 このスタイル抜群、のほほん顔の精神年齢7歳実年齢19歳、髪は俺と同じく生まれつきの茶髪をポニーテールのフリーター、凪めぐみ

 残念なことに俺の実の姉であり、俺に最も好感度をもつ人物だ。

 ついでに言っておくと「シロちゃん」のシロは真太郎から、「ん」と「た」と「う」を抜いた結果だ。

「ったく!大変大変って、なにがだよ!」

「家の前に長くて黒いのがあるの!」

 …あぁ、やっぱりこの人もう一回医者に診てもらおうかな…この前連れてった時は「私も驚いていますが、異常なしですね」って言われたから、今度はもっと徹底的に調べてもらおう。

「なんだそりゃ……」

「とにかく見てよ~!」

 めぐみは俺をどんどん窓へ押していく、家の前なら俺の部屋からでも見れるからだ。

 どうでもいいかもしれないが俺にとっては重要なので言っておこう、いま6時!!!昨日の由佳里に引き続き今日はめぐみに起こされた。お前ら俺の安眠を破壊してそんなに楽しいか!?

 そんな怒りは露知らず、あれよあれよと窓の前、カーテンを開けて外を見ると確かに長くて黒い車が家の前に停まっていた。

「んだよリムジンじゃん…………ってはあ!?」

 どういう理由でうちの前にリムジンが!?

 確かに大変なことだった、しかし、リムジンから出てきた少女のおかげで多少だが事態を把握する。

 街で見ることなど本来ないであろう高級車から降りてきたのは、後台院紗織だった。

 確かあいつの家は俺でも知ってるくらい有名なお金持ちだったな、リムジンくらい持ってるか、だが

「なんであいつが…」

「シロちゃん、お友達?」

「ん、まあ…友達…なのか?」

 よく考えたら後台院とはキャンプの班が同じというだけで友達ではないような…

「知り合い、かな」

 友達、とは言えない気がする。そもそも俺はそんなにほいほい友達ができるタイプの人間じゃないしな。

 馴れ合いが嫌い、と言えば格好いいように聞こえるが実際は本当に心を開ける相手がいないだけだ。その上人の裏側ばかり見ようとするからたちが悪い。

 我ながら見事なダメ人間っぷりだな…

「でもこの子なにしにきたんだろうね~?」

 言われてみればそうだな、何しに来たんだ?

 リムジンから降りた後台院はうちのインターフォンの前で立ち止まった、そして指をボタンの前まで伸ばした所で止まりプルプルしだした。

 ………なにやってんだろうこいつ…

 

 10分経過…


 未だ後台院はプルプルと固まっている、いい加減こっちが待ちくたびれたので「なんの用だ?」とメールを送った。

 俺のスマホに「送信完了」と表示されてからタイムラグ3秒で後台院がビクッとして鞄の中をわたわたと探る、普段からしっかりものとして皆に慕われ、キビキビしている後台院と比べるとなんだか見ていて面白い。

 やっと取りだした携帯を見ると、後台院は顔を上げ俺が見ていたことを認識する。目が合うとすぐうつむいてしまった、遠くてよくわからないが顔が赤い気がする。

 しかし見つかったことで踏ん切りがついたのか後台院はインターフォンを押した。

「めぐみ、出てやってくれ」

「はーい!」

 後台院になんの用があるのかは知らないが対応はめぐみにまかせて、俺はもう少し惰眠を貪ろうとしたのだが…

「いったぁーーい!!」

 クソ…またあいつ階段から落ちたな。

 めぐみが階段から滑り落ちていく音が家に響いたがこれは週5で発生するので我が家は反応しない。

 めぐみは俺と反対で運動音痴でドジなのだ。異常なレベルで。

「しかたない、俺が出るか」

 階段の下で「シロちゃ~ん」と半泣きのめぐみがこちらを見ていたが無視して飛び越えると、玄関へ行きドアを開ける。

「どうしたんだ?」

 さっさと済ませたいのでまず用件を聞く。

「そ、その…昨日のことで話があるので、迎えに来ました。立ち話もなんですし、学校まで送りますから……車に乗って下さい」

 もじもじしながらも用件を告げる後台院の姿は俺としては本当の彼女に近いのではないかと感じた、まあ普段と比べたら違和感バリバリだけど。

「いや俺チャリだし…」

「帰りも送ります、問題ないでしょう?」

 うむ、確かに問題ないのだが、俺と後台院が一緒に、しかもリムジンに乗って登校することには大いに問題があると思うんだよ!

 周りのやつらになんて言われるかわかったもんじゃない、……おや?よく考えたら俺になにか言ってくるやつなんていないか?ははっ、いないな…うん…

 しかし、俺に無くても後台院にはあるだろう。

「いや、でもな…」

「いいですから!レディがこう言っているんです!女の子に恥をかかせるつもりですか!?」

 うがーっとまくしたてられた、こう言われては断るわけにもいかないか…

「わかったよ、準備するから待っててくれ」

「わかりました」

 


 準備も終えて今、俺はリムジンに乗っている。後部にはテーブルが設けられ俺はそこで後台院と向かい合うように座っている。

 まるで総理大臣にでもなった気分だ…そういえば中学の卒アルには「俺が総理大臣になったらリア充に税金かける」って書いてるやついたなー、名前「凪真太郎」って書いてあったけど誰が書いたんだろうね。

「で、話ってなんだ?」

「えっと…その、昨日のことで…」

「うん」

「助けてくれたことのお礼をしていなかったので…」

「そんなことのために…別に大したことしてないぞ?」

 こんな腐ったような世の中で、自分の手が届く所くらいなんとかしたいだけだ。助けるなんて大層なことじゃない、ただの自己満足だ。

「私にとっては大したことなんです!」

 突然大声で否定されて思わず驚いた、そんなことを言ってくれるとは思っていなかったのでつい後台院をじっと見てしまう。

「だから…あ、ありがとう」

「お、おう」

 3秒ほど目が合ったがお互いに顔を反らす、妙に気恥ずかしい空気になってしまった…何か話をしないと、しかし俺に女子とのトークスキルなんてないぞ!なにか、なにかないのか!?

 思考が詰まりついつい窓の外に視線を向けるといつもの通学路が見えている。

「そうだ、なんで俺の家の場所知ってたんだ?」

 当然住所は教えていない、てか覚えてない。

「それは……家の力を少々使って……」

 後台院は申し訳なさそうにサラッと凄いことを言ってきた。

 怖っ!金持ちってそんなんできんの!?

「そ、そうか」

「はい…」

 知らない方が良かった気が…

「あ!それと、杏奈と仲良いのか?昨日もずいぶんとくだけて話してたけど」

 正確に言えば話し方は変わらないのだが、なんというか雰囲気が柔らかい気がしたのだ。

「私と杏奈は幼馴染みなのですよ、まあ私は中学は違う女子校でしたが」

「ふーん、なるほどね」

 幼馴染み…なんだか想像出来そうだな、おバカな杏奈を後台院が引っ張っていく感じだろうか、微笑ましいな。

「ところで」

「ん?なんだ?」

「あなたは何故彼女を「杏奈」と名前で呼んでいるのですか?種川さんは名字なのに」

「ああ、それは前に杏奈がそう呼んでくれって言われてな、「あたしもシンタローって呼ぶから」だそうだ」

 説明すると後台院は口元に手をあて、なにやら考えたすえに

「では私も名前で呼んでください、私もあなたのことを、し、真太郎と呼びますから!」

 後半早口だったけどギリ聞き取れた!俺としては断る理由はないんだけど…

「いいのか?あんた女子にも名字で呼ばせてるだろ?ただの他人の俺にそんな…」

 クラスで杏奈以外が後台院のことを名前で呼ぶのを聞いたことがないから、たぶん間違いじゃないはず。

「いいんです!それにあんなことがあったんです、ただの他人ではないでしょう!?」

 顔を赤く染めながらそんなことを言われるとドキッとしてしまう、ましてや俺には[好感度82%]という数値が見えてしまっているからなおさらだ。

 勘違いをするな真太郎、好感度は好感度だ、変な期待をして傷付くのも人間関係がめちゃめちゃになるも、もう嫌だろう!落ち着け!

「………それに杏奈だけ名前で呼ばれるなんて羨ましいです」

 心臓を落ち着かせるのに必死だったのでこのつぶやきは俺には聞こえなかった。

「ん……まあ、わかった。呼ばせてもらうよ」

 まあ名前で呼ぶくらいはいいだろ。

「うん、それに他人なんて言わないでください、私にとってはもう、と、友達なのですから」

「ああ、わかった」

「よ、よろしくお願いします、真太郎」

「よろしく、紗織」

 言い終わったところてでまた変な空気になりかけたが、ここでリムジンが止まった。

「お嬢様、着きました」

「ご苦労様、月島」

 運転手さん月島っていうのかー、あだ名はツッキーとみた!

 降りようとして今さら気になってきたことなんだが…

「なあ、本当に俺も一緒に降りていいのか?変な噂とかたったら…」

 せめて別の場所で降ろしてもらおうと提案しようと思ったんだけども、

「そんなこと私が気にすると思いますか?」

 だそうです。いやー、ハート強いね!

「さ、さいですか」

 結局、朝早かったこともあり誰にも見られず杞憂に終わったので結果オーライということにした。



 昨日に引き続きの早起きと紗織とのリムジン登校での精神的疲労でまたしても授業の大半は夢の中で受けた。

 いつの間にか由佳里から「今日は部活休み!スーパーでお惣菜安いから!」などというどうでもいい内容のメールも来ていたので帰ろうとしたのですが…

「シンタロー!買い物いこう!」

「キャンプの買い出しです、拒否権はありませんからね」

 


 どうやらまだまだイベントはノンストップで突き進むようです。

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