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「席替え楽しみ~!」とか言ってるやつは大概リア充

 新品の自転車のペダルを踏みしめて、春も終わりつつある道を走る。

 一昨日見事なジャンプを繰り出した曲がり角を何事もなく曲がり、心臓破りの坂をのぼり…

 1日ぶりに俺は登校した、余談だがあの大ジャンプのおかげで昨日は40℃を超える熱を出し学校は休んだ。

 ドアを開けて教室に入る、悲しいかな友人もおらずクラスでほぼ空気となっている俺に「おはよう」と挨拶してくれるやつはいない…

「おはよっ、凪君!」

 …ハズだった。

 西條 杏奈、クラスでも三番目くらいに可愛い彼女が、こともあろうに俺に挨拶をしてきた。

 どういうことだ?なんかの罰ゲーム?いや、罰ゲームくらうほど俺はクラスでなにかしたことは無い。

 もしかしたら単純な優しさだろうか、何を隠そう最初に隣の席になったとき笑顔で話しかけてくれたのはこの西條杏奈なのだから。

 きっとそうに違いない!優しい彼女は昨日休んだ俺に《一応》声をかけたんだ!

 その証拠に西條杏奈の好感度は…

「おはよ…おうふっ!?」

 さっきまでの思考を0.5秒でおこない、一応俺も「おはよう」と言いながら確認した彼女の好感度に驚き、変な声が出てしまった。我ながらキモイ…

 いやいやいや!!そうじゃなくて!75%!?なんで!?

「?」

 変な声を出した俺に彼女は小首をかしげている。

 いやこっちの方が小首どころか思っくそ首360度まわしたい状況なんですけど…

 ここで話を二日前、真太郎が河にダイブした日の西條杏奈視点に巻き戻す。

 

 私は携帯の着信ランプにうんざりする、送信者はひとつ上の二年生の先輩で、一週間くらい前から言い寄ってきていた。

「うわぁ…一緒に帰ろうって、嫌だなー」

 なんか皆は「あの人イイよねー!」とか言ってるけど、私は正直あまりその人に興味は無かったんだよね。

 でも先輩だし、はっきり断れなくて結局一緒に帰ることになっちゃった。

「オレこないだヤンキー三人にからまれたけど、返り討ちにしてやったよ!」

「そうなんですかー!スゴイですね!」

 聞きたくもない自慢話に相槌をうつ、男の人ってなんですぐ自慢話するのかな?

「だろ!?だから杏奈になにかあったら、オレが守ってやんよ」

「……あ、ありがとうございます?相川先輩…」

 なんか気持ち悪くて疑問系になっちゃった…

 ってちょっ!?なんで肩抱いてくるの!?もうやだ気持ち悪い!

 誰かなんとかして!

 私はこの人から解放されたくて、誰にでもなく祈った、そして…

「どけえぇぇぇぇぇ!!!」

 彼は現れた、颯爽と自転車に乗って、気のせいか顔に怒りを滲ませながら。

「ぶるあぁ!?」

 彼は見事に先輩だけを引き倒し、私を助けてくれた。

 たしか、同じクラスの凪真太郎君、最初に隣の席になったけど…

 普段全然喋らない彼が、あんなに大声を出して、必死に助けてくれるなんて…

 彼女の心はこの時揺れ動かされた。

 実際は先輩をひいたのは偶然だし、必死だったのはブレーキが壊れていたからだ。ついでに言えば怒っていたのは真太郎が西條杏奈と相川先輩がカップルだと勘違いしていたから、本来二人の好感度を見れば気づけたはずだがあの時の状況、スピードではそんなヒマは無かった。

 そんなわけで現在に戻る。

「一昨日は助けてくれてありがとう!」

「一昨日?」

「うん、あの先輩しつこくて大変だったんだ!」 

「先輩?」

 話の流れがまったくわからん、そもそも一昨日は俺河に飛び込んだだけだぞ?

「一昨日も一緒に帰ろうなんて言われて…」

 一緒に?…もしかしてあの時カップルだと思ってひいた奴か!?

 そうか、そんな事情が…まあ助けたわけじゃなかったんだけどなぁ。

「あー、まあたいしたことじゃないし、気にしなくていいよ」

「ううん!本当にありがとう!あの、凪君のこと、シンタローって呼んでもいいかな?」

 オイオイ、なにこのイベント、夢か?夢なら覚めてくれ。

 それとも、このイベントのために自転車のブレーキは壊れ、俺はずぶ濡れになったのか。

 しかしこの[好感度75%]の代償ならあれぐらい安いものだ。

「ああ、俺はいいよ」

 むしろ大歓迎!ガンガンそう呼んでください。

「ありがと!シンタロー!」

 …ああ、こんな風に会話をするのはいつぐらいぶりだろう。

「私のことも杏奈って呼んで!これからよろしくね!シンタロー!」

「よ、よろしくな、杏奈」

 これから?これからってなんだ?まさか俺ともう友達という意味か?

 ここでチャイムが鳴る、久しぶりの会話をもう少し続けたかったが先生に怒られるのは御免だ。

 ちなみに席替えというリア充以外は楽しくもなんともないイベントで俺はもう杏奈の隣ではない。

「おい!お前西條さんとなにがあったんだよ!?」

 席に座るなり今の隣のやつが話かけて来た……誰だっけこいつ?

 たしか…た、た…………田中でいいや。

「特になにかしたわけじゃないよ、田中くん」

 ついでに田中くんの好感度は25%、さらについでだがクラスで一番の美女、後台院 紗織に対する好感度は90%だ。どういうことかわかるよね?

「田中って誰!?おれ種川!種川 弘樹だよ!隣になった時も自己紹介したじゃん」

 そうだっけ…まいっか!めんどくさいからやっぱり田中でいいや。

「そりゃ悪かった、田中」

「種川!!」




 

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