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チャリのメンテはこまめに行おう

「ねーねー!今日どっか遊びに行こーよ」

 クラスの女子が他の女子に誘いを掛ける。

「あーいーね!いこいこ!」

 それに対して相手も上げめのテンションで応じる。まあ最近の女子高生ならありがちなやり取りだ…

 だが!

「………理解できねー」

 何故上っ面の付き合いであそこまで親密なふりをするのだろうか?お互い相手のことなどどうでもいいくせに…

 なんたって声を掛けた方は20%だし、掛けられたら方なんて8%だ。

 こんなの隣の家のおばあちゃんとたいして変わらない。

「……はぁ、ま、俺には関係ないか」

 俺は帰ろうと席を立った、あいにく待ち合わせて一緒に帰るような人もいない。

 中学校のころはそんなのもいたけど、今はそんなことをする気も起きない。

「なんでこんなもん見えるようになっちまったのかな~…」

 凪 真太郎こと俺は、中学校の卒業式当日に交通事故に遭った。意識不明で生死の間を3日さまよった後に、ほぼ奇跡的に意識を取り戻した。

 そして目を覚ました俺の目に最初に入って来たのは、母さんの顔とその横に映る[好感度78%]という数値だった。

 最初はワケが分からず、医者にも相談しなかったけど、中学校の同級生が見舞いに来たとき何なのかはっきりと理解した。

 それはまさに、[好感度]だった。

 最初のころは俺が見ている人の俺に対する好感度だけが見えた。

「大丈夫か?」

「大変だったね」

「心配したよ!」

 そんな言葉を投げかけてくる奴らはみんな精々10%程度の好感度しか俺にもっちゃいなかった。

 元々俺は少しひねくれた性格で、友達なんてほとんどいなかったけれど…

 とにかく俺は[好感度]が見えるようになってしまったワケだ。

 時間が経っていくうちに、他の人の他の人に対する好感度も見えるようになった、ようは俺がA君とB君を見ると、A君のB君に対する好感度と、B君のA君に対する好感度も見えるっつーことだ。

 このワケのわからん能力のおかげで俺は未だ高校生活に馴染めず、入学から1ヶ月たつなか、順調にボッチへと進んでいる。

 隣の席の女子が最初に話しかけてくれた時も、眩しい笑顔で楽しそうに話していて、普通だったら「まさか俺のこと…!」と勘違いしてしまう所だったが、彼女の横には[好感度5%]という数値が無情にも映し出されていた。 

 初対面だったんだから一目惚れでもされない限りそれが当たり前だ、逆に5%しかないのにあそこまでフレンドリーだったのだから彼女はむしろ優しかったんだろう。

 だがひねくれた俺は、好感度と裏腹の彼女の行為で、警戒心を持ってしまった。

 おかげでクラスメイトに声を掛けることもできず、声を掛けられても生返事で流していた。

 ゲームだったらフラグとかがあって勝手にイベント発生して好感度上がるのだが、現実にそんなフラグはない。あるイベントといえば勇気を出して女子に声を掛け、

「キモイ」

 と心をえぐられるイベントだけだ。誰だよ知恵袋で「友達を作るならまず勇気を持って声を掛けましょう」とか書いたの!リアル舐めんなこのリア充!

 まあ俺の知恵袋を使わなくなった理由はいいとして、そんなわけで駐輪場で自転車にまたがり一人で俺は愛しの自宅へと帰る、寂しくなんてない。

 この自転車もそろそろ別れを告げる頃だろうか…

 もう三年間も相棒として共に走ってきた、しかしいい加減所々が色々と限界なのだ。

 なんて考え事をしながら校門を出て、通称「心臓破りの坂」を下る。

 この坂、一キロ以上も続く上に割と勾配が急だ。学校に来る時はクソみたいにキツイが、逆に帰る時はかなり楽だ。

 まあ当然結構スピードがでるからブレーキをかけて…

 カシューッ

「ん?」

 ブレーキを…

 カシューッ

「んんん?」

 ブレーキが掛からない!なんで!?

 加速し続けるなかタイヤを見る。

 俺の視線の先では、ブレーキの片方が外れていた。

「うっそぉ!」

 止まらない!ていうか止まれない!

「ああああぁぁぁぁ!!」

 ドンドン加速していく、風景が矢のように吹っ飛ぶなかで、前方にカップルを発見した。

 ウチの学校の制服だ、男の方が女子の肩を抱いて歩いている。

 曲がれない!曲がったら俺が事故る。

「どけえぇぇぇぇぇ!!!!」

 俺は怒り(リア充に対する)半分、焦り半分の叫びをカップルに投げた。

 たが男は振り向く前に…

「ぶるあぁ!?」

 やっべ!ひいちまった!?

 ひいたのは男の方か…!?よし!男の方だ、なら問題ない!ザッツオール。

 俺は暫しリア充を一人撲滅した爽快感に浸り、現状を忘れていた。

 …が、目の前の光景に冷静さを取り戻す。

 心臓破りの坂の終わり、つまりこのジェットコースターの終着点は大きな河に垂直に交わっている、そしてさらに俺が激突するであろうはずだったガードレールには…

 運命のイタズラか、「工事中」の看板がいい具合に立てかけられてジャンプ台になっていた。

「のわぁぁぁ!」

 俺はもはや疾風の如きスピードでそのジャンプ台に突っ込み…

 飛んだ。

 そりゃもう見事なジャンプだった、近くで見ていた小学生の好感度が65%を超えるくらい。

 お前ら、絶対マネするなよ!悪い子でもダメだ!

 五メートル以上の飛翔の果てに、俺は河にダイブした。

 翌日に風邪を引いたのは言うまでもない…

 

 



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