戦闘~combat~1
家を出た俺は、町の中心にある巨大な建物を訪れていた。見た目はさながら“城塞”である。
ここは“抗神攻魔局”と呼ばれる名前のまま神に抵抗するための組織である。
このーーー“東京支部”には、約四百人ほどの人間が所属している。抗神攻魔局は、階級制を導入しており、上から“局長”、“部隊長”、“隊長”、
“兵士長”、“新兵士”、“訓練兵士”となっている。
俺は、この中の“兵士長”の階級にいる。
俺たち抗神攻魔局のメンバーは、天使を狩ることを仕事としている。
俺は、カウンターへと近づき電子ボートを確認する。ここには、各個人、チームへの依頼が毎日更新される。
「さて…今日はどうなってるかなっと……」
自分の名前を検索し、今日の依頼を確認する。
そこに記入されていた依頼は、
“ラナク”という、“天使級”
の討伐依頼だった。
“天使級”というのは、天使につけられている階級で、上から“熾天使級”“智天使級”“座天使級”“主天使級”“力天使級”“能天使級”“権天使級”“大天使級”“天使級”と、なっている。
つまり、天使級というのは、天使の中でも最弱の階級なのである。
「はぁ…なんでこんな奴を俺が狩らないといけないんだか………」
俺が、不服の溜め息をついていると、
「そりゃ、数が多いからだろ?」
後ろからいきなり声をかけられた。聞き慣れた声に内心がっかりしながら、後ろを振り向くと、
案の定想像していた人物だった。
「…やっぱりお前かよ………」
茶色に染めた髪の毛を長めにしており、耳には、ピアスがついている。“チャラい”と言ってしまえコイツーーー神崎 翔の紹介はいらなくなりそうだ。
「やっぱりってなんだよやっぱりって!!」
「別に深い意味は無い。それよりなんでお前がいるんだよ自分の依頼片付けろよ」
「いや、依頼を片付けるためにお前をさがしてたんだよ!?」
翔が何かをほざいているが、スルーして自分の依頼の詳細を確認する。
場所は旧東京タワー周辺。メンバーは勿論俺一人だろうと思っていたのだが………
「ハァ!?翔とのタッグでの依頼遂行だぁ!?」
一瞬自分の眼を疑ってしまった。
「だから言ったじゃん春を捜してたって」
後ろから今日のパートナーが肩に手を置いて言ってくる。
「……マジか………」
今日は何故か疲れる気がしてならない…
〇
俺たち抗神攻魔局のメンバーには、三通りの戦闘方法が存在する。
一つは、魔具によって発動可能になる具現式による魔法攻撃を主体とした戦闘方法。
この方法をとっているメンバーは六割を越えるが、大半はサポートに回るしかない。その理由としては、天使に与えるダメージが少ないというところだ。
二つ目は、唯一物理的ダメージを与えられる聖天器を主体とした戦闘方法。
聖天器ならば、天使にかなりのダメージを与えることができるが、この方法をとっているメンバーは四割も居ない。
その理由はーーー聖天器を使用する場合、使用者の身体に過度の負担がかかってしまい、ある一定の域を越えると起きる“天使化”のせいである。
そもそも聖天器とは、天使の力を武器に取り込ませたものである。その力は絶大で、人の身体には収まりきれない。そんなものを無理に使えば身体が壊れるのは当たり前である。
そして、最後三つ目。それは、一つ目と二つ目を極限まで極めることにより行うことのできる戦闘方法。
俺がとっているのはこの方法であり、詳しくは『聖天器を主体とし具現式を使った近接戦闘』である。この様な両方を使った戦闘方法を使うメンバーはほんの一握りしか居ない。
〇