少年の日常~Decline~
俺が目を醒ますと辺りはまだ薄暗かった。時計を見るとまだ6時にもなっていない。
「…久しぶりに見たな…」
ゆっくり体を起こしてそう呟いた。
「…ルシファー…か…」
考えてみるとあの少女と会ってから10年も経っている。俺はあの日以来少女とは、一度も会っていない。
「…ふぅ…」
あの少女は今頃どうしているだろうか…元気に暮らしているのだろうか。それとも…。俺はその考えを振り払うかのように頭を一振しベッドからでる。
とりあえずまだ残っている眠気を飛ばすために洗面所で顔を洗う。ぽたぽたと垂れる滴をタオルで拭き取り鏡を見る。
真っ黒の髪にまだ少し幼さが抜けきれていない顔。体も細めだが同年代には、負けない自信がある。
タオルをかごに放り投げ、俺は朝食を作るために台所に向かう。
冷蔵庫から必要な物を取りだし、いつも通り作っていく。片手間にパンをトースターで焼き、コーヒーを淹れる。いつもいつも同じことをしているので体が覚えてしまっている。
俺は早くも完成した朝食をテーブルに運ぶ。
「…いただきます」
一言そういうと、パクリと料理を口に運ぶ。
「…………」
聞こえるのは自分が食べ物をかみくだく音のみ。…昔はもっとにぎやかだったのに…。
俺はコーヒーを飲み干し手を合わせ
「ごちそうさまでした」
そう言うと、食器を台所に置き時計を見る。いつの間にか7時を過ぎてしまっている。
「…そろそろ行かねぇとな…」
小さく呟くと、リビングに戻り、服を着替える。昨日出しておいたシャツとズボンをゆっくりと着る。
「…よし…」
壁にかかっていたポーチを腰に付け、愛用の黒のロングコートを羽織った。
暗く殺風景な部屋を少し眺めると、大きな息をひとつ吐いた。
そして誰に言うでもなく一言。
「…行ってきます」
そう言って、部屋を出、肌寒い朝の外へと足を進めた。