一話「おれにはストーカーがいたようだ」
ヤンデレ?なにそれ食えんの?おはぎのなかに裁縫針?くわねぇよ。規制?なにそれ(ry
――――ハァ・・・ハァ・・・ハッ――――
夜の住宅街に荒い少年の息づかいの音が吸い込まれて行く。大体高校2、3年生だろうか?走り方見るになにかスポーツをやってるようだ。
――――ハァ・・・ハァ・・・クソッ!なんだって俺がこんなめに!?なんだあいつ!」
と少年は後ろをきにしたようすで住宅街のなかを駆け回る。様子を見る限りでは何者かに追われているらしい、と少年が立ち止まった
「ハッ・・・ハッ・・・ハァ、まいたか?・・・・・・・・撒いたみたいだな。アァーびっくりした!なんだったんだあいつ、ストーカー?通り魔?・・・まぁ考えて立ち止まってるよりはやく家に帰ったほうがよさそうだな。」
と少年の家があるであろう方向に足を向け路地を曲がろうとしたとき
『ミーツケター♪』
どこからか路地に声が響いた。高い可愛らしい少女の声、しかし少年はその声をきいた瞬間から気分が悪そうだ、少年を追いかけていたのはこの声の持ち主なのだろう
「おいおい冗談だろ?俺これでも陸上部だぞ!?」
たしかに不思議ではある。女が男に劣るとは言わないがやはり男のほうが運動神経はよい傾向にある。それに彼は陸上部だといった、まさにそれに違わぬ早さと走り方だったと思う。そんな少年が肩で息をするほどの距離を全速で逃げてきたのに追いかけてきた少女であろう声の持ち主は疲れをかんじていないかのように、まるで友達と日常会話でもするかのような気楽さでどこまでも明るく・・・それでいて底無しの穴を覗いてるかのような不気味さを纏った声で話しかけてきた。彼女は何者なのだろうか?
「あら?そうだったの、まぁたしかに学生にしてははやいほうだったよ♪」
まるでクスクスと笑うかのような声がまたも路地に響いた。しかし今度は指向性のある声だったので声の主の居場所がわかった少年が足を向けたまま止まった路地の先の影・・・丁度少年からは見えにくい場所。
コツン、カツンという足音を響かせながら少年に近づいている。
「でもそれじゃぁダーメ♪」
声の主が暗い夜道を照らす街灯の下に出てきたことでようやくその姿を認識できた。やはり少女であっていたらしい。年の頃は少年と同じで高校生といったところか、
光沢のある長いペールピンクの髪を頭の左右で縛る俗に言うツインテールと呼ばれる髪形に大粒のエメラルドのように煌めく大きな目に吸い込まれるように赤い唇。西洋人形のような白い肌に黒いゴシックロリータと呼ばれるような服。靴は光沢のある底厚のローファーのようなもの。頭にはちょっとずれたかんじで黒い小さめの冠があった。
妖しい雰囲気を纏ったとんでもない美少女がそこにはいた。
恐らくはその妖しい雰囲気の原因のひとつとして彼女が手にもつ物が一役買っているのだろう。
「おいおい、ずいぶんと洒落たストーカーだなおい・・・ところでその手に持ってるものもファッションかなんかか?かなり物騒なんでしまってくれると嬉しいかなぁ何て」
「ダメだよ♪女の子のおめかしを凶器扱いだなんてひっどぉーい♪・・・この出刃包丁ね、わたしのお気に入りなの。」
そう、彼女の手には街灯の光を反射して鈍く光る出刃包丁があった。
「あ・・・あぁそうハハハは・・・でも女の子がこんな夜遅くに一人でいると危ないぜ?」
「それってナンパ?それともお泊まりのお誘いかな♪」
・・・この子のキャラがわかった気がする。それにしても濃い上にシリアスブレイカーか・・・
「え!?い・・・いやほら早く帰ったほうがいいって言いたかったんだけど。」
「あぁー・・・そうだね、そろそろGHOの連中もくるだろうし楽しいから残念だけどおしゃべりもやめてはやく用事を済ませちゃおうかなぁ♪」
と少女は尋常ではない速度で少年に近づくと手にもつソレで少年の腹部を真一文字に切り裂き、返す手でソレを胸に突き立てた。
―――――えっ?―――――
少年は声にならない声で呟いた。少年は糸のきれた人形の様にその場に倒れ付した。
よく見ると少年の胸の傷から血液と一緒に青白い煙のようなものがでているのがわかる。
「あぁんもったいなーい♪」
少女がいうとただ漂っていただけの青白い煙が形をかえて球状になった。
「イタダキマース☆」
少女はそれをなんの躊躇いもなく口にふくんだ。
「ンッ・・・フッ・・・ンンッ」
少女のくちから出てきた球は先ほどよりかは一回りちいさくなっていた。
「ハァ・・・ハァ・・・私が食べきれないだなんて、それに・・・とぉっても濃くて・・・とぉっても美味しい♪」
両手を頬にあて少女は幸悦した顔で呟いた。非常に扇情的で卑猥な感じではあるのだが場面を見るとかなり猟奇的だ。
そもそも彼女は何者なのだろうか?これまでの言動を見る限りどう考えても普通ではない。それでは彼女はいったい誰なのか。
と、いきなり乾いたおとが響いた。決して住宅街で聞けるようなおとではない・・・いや目の前の光景も普通ではお目にかかれないものだがそうではなく・・・いやまぁとにかく拳銃の音、それも二回。あの少女が少年に止めをさしたのか?いや・・・ちがう。狙われたのはあの少女のようだ、バク転の要領でかわしたようだが少女の隣の塀にはしっかりと弾痕が刻まれている。
位置的には胸と頭部を狙ったようだ。
「チッ、もうきやがったのか」
さっきまでのぶった口調からいきなり乱暴な口調にかわった。どうやらこちらが素のようだ。
影が少年の隣に落ちてきた、いや降りてきた。
黒いフード付きのロングコート、そのしたも黒のワンピースのような服に黒のショートパンツ、黒のブーツと隙のない黒づくめの格好のせいで性別や年齢はわからないがフードから覗く瞳は透き通った蒼、まるで瞳のなかに大空が広がっているかのようだ。
「やっと見つけたわ、今日こそしとめてあげる。」
声から判断するとまだ若い少女のようだ。それに既に何度もであっているかのような言い方だ。彼女達は知り合い同士なのだろうか?
それに第一声から物騒なことをいっているが彼女は少年に目もくれていない。味方なのか?
拳銃をもち民家の家屋の屋根から飛び降りてもいたがる素振りを見せない、となりの血溜まりをまるで普通だというかのように無視・・・完璧に相手と同種な気がする。
「あら、いいのかしら?その少年、ほっておくと異化しちゃうわよ?」
「残したの?」
「違うわよ食べきれなかったの。私べつに仲間増やしたいとかないしね♪知ってるでしょ?」
「あんたがたべれなかった?冗談はよしなさい。ただの人間よ?」
なんの話をしているのだろうか、いまの言い方だとまるで自分達が人間じゃないかのように聞こえる。
人間じゃない?そんなことがあり得るのだろうか。だが現に目の前で超常的なことがおきている。
「関係ないわ、私だって・・・あんただってもとは人間じゃない。それに魂の質に肉体の脆弱性は関係ないわ。」
やはり人間ではないようだ。それにいまの会話からいくと少年の体から漏れていた青白い煙は魂で、少女はそれを食べていたことになる。そして彼の魂の質(?)がよすぎるがゆえに少女は食べきれず魂が残ってしまった。結果少年のからだになにかしらの異変が起きるということか?すると彼女達は死神かなにかであろうか?
「あんたと一緒にしてほしくはないわね・・・化け物。」
「あんただって同じよ、その内堕ちてくるわ・・・必死に人間の真似なんかしちゃって。そんなに人間の体が恋しいのかしら?」
「黙りなさい!・・・お話はここまで、私達の関係に言葉は要らない。」
「あらあらフラれちゃった~Mayちゃん凄くざーんねーん。でも~私は別にあんたにようなんてないし帰らせてもらうね♪バーイバーイ☆」
というやいなや少女は地面にのまれるように消えた。
残された少女はいらただしげに地面を蹴った後赤い水溜まりに沈んだ少年に気づいて
「そういえばこいつ・・・異化が遅い?かといってlevel4クラスにくわれて昇化するなんてありえな―――」
少女が考え込んでる間に少年の体に変化が起きた。
全身が例の青白い煙に変わったかと思いきやその煙がさまざまな色にかわりはじめたのだ。赤、青、緑、黄、藍、紫、橙、白、黒と
「―――――!?そんな・・・嘘でしょ?昇・・化が始まって・・・。」
最終的にはその曖昧な色のままヒトガタを形作り・・・発光した後には先程の少年が無傷のままそこに横たわっていた。
みんなも夜道ではゆっくりしていってね!