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始めようか


謎の美女にかなり強引に、しかも荷物を持たされついて行かされると、辺りは裏道のような通りになった。


…え



清志郎は身の危険を感じた。


むしろ身の危険を感じるのは目の前のゴスロリ女の方じゃないのか。

いや、中学生だからって危険視してないのかな。

最近のDCはやばいんだぜ、お姉さん。いや、俺はやばくないけど。




なんてことを思ってるうちに、ネオンがともされた店の前に来た。

それほど時間が経っていないというのに、まるで夜のような雰囲気だ。


「ミュージックバー・サムネイル…??」


何と言うネーミングセンス…


清志郎は、少なくともこれよりはまともな名前を付けられるような気がした。


これが英語で書かれているならまだしも、全てローマ字で「My-ujikku.Ba-.Samuneiru」と書かれているのである。


きっとここの店主は相当すごい(低い)英語力に違いないと清志郎は思った。


「ボサッとしてんなよ、扉開けなさいよ」


美女は清志郎を怒鳴り付けた


「え」


清志郎はアンプを抱え込んでいる


「え」


「じゃないっつーの…」


美女は清志郎を睨みつけた。美しい顔つきだが、鬼の形相とはまさにこれである。


「こんな女に肉体労働させる気なわけ」


「…………」


清志郎は言葉を失った。


自覚あるんだ、やっぱり。そうだよな、こんだけ綺麗なら言われまくるんだろうな…



清志郎はアンプをそっと置いて、扉に手をかけた。


左手で扉を引く。思ったより渋く、力が入る。



「!」


清志郎は扉を引き終えると、美女の方を見た。


「なんすか」


「何が」


「いや、今何か言いましたか…」


「別に…」


清志郎をよけて、美女はアンプを軽々持ち、奥へさっさと行ってしまった。


「あっ…」


清志郎はその場に残された。


「どうすりゃいいんだ…」



帰るか?いやでも…

帰ったらただじゃすまなさそう…

帰らなくてもただじゃすまないよな、きっと…



清志郎は何だか寒くなってきた。


家を出たことを激しく後悔しはじめた。


…〜♪〜〜




「??」



どこからか音楽が流れている



「………」



〜〜♪〜〜♪〜




清志郎は音楽のする方へ歩きだした。

建物の中は薄暗い。





……………




どうやら発信源はドアの奥からのようだった。




ドアをゆっくりと開く



「……!!」





目の前の光景は




そこらじゅうの照明に照らされ、先ほどの美女がエレキギターを掻き鳴らしていた。


十数人ほどの客は皆、それに共鳴するように叫んでいる。



「すごい!!」




美女の手つきは凄まじかった。

まるで何かのスポーツのように、長い腕と細い指は動きつづけ、止まる気配は一切ない。


力強く、体の中で音がびりびり来る。




「………!!!!」



すごい、すごい、すごい、すごい、すごい!!



〜〜〜♪





美女は曲を弾き終えた。



歓声が狭い部屋の中に溢れる。




「…じゃ、次」



〜♪〜〜♪




曲調が変わった。


しんと、辺りが静まり返る。


「…この曲」


清志郎には聞き覚えがあった。


エレキギターの音だからか、何となく違うように聞こえたが、間違いない。

この歌、昔から知っている。

誰の歌なのかも知らないが、昔から聞いていて体に染み付いている。


歌いきれなかった、あの鼻歌と同じ曲。





「聴いて」



清志郎は武者震いした。


歌が始まる



「!!」


気がついたら、客を掻き分け、清志郎は美女からマイクを奪い取っていた



美女は少し驚いた顔をして清志郎を見た


客は全員呆気に取られている


「歌うのをやめないで」


「!!」


美女の口がそう動いた。


「あんたにガイド出してあげる。臆すんじゃないぞ」

彼女は一瞬微笑んだ。




ジャジャーン!!



「!!」


清志郎は染み付いた歌詞、メロディーを口に出した。


『ああ〜』



いや、違うこれじゃない


伴奏をしながら、美女は主旋律を弾く。

それに合わせながら清志郎は歌う。


「もっと自分に酔っていい」


美女は囁いた。


「堂々としろよ。」


「アゴ引いて、ノドで合わせるんじゃなくて腹に力入れて。」



なんでだ





何で俺は人前で歌ってるんだ。


しかもこんなに堂々と注目浴びて


綺麗な姉ちゃんに伴奏してもらって



大して上手でもないのに超カッコつけて






でも何でだ








めっちゃ気持ちいい




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