8.レオン、朝食に誘う
朝、目を覚ますと、いつも通りの日常が幕を開ける。
「レオン様。おはようございます。本日の朝食はいかが致しましょう?」
律儀なベルは毎日朝食の伺いをたてにくる。
「いつもと同じで構わない。」
「かしこまりました。それでは、そのように」
と、毎日繰り返す会話を終えて、ふと頭の中に昨日の様子が思い出された。
「待て。」
ベルを呼び止めていつもとは違う指示を出した
「ルーミエールと朝食を共にする。時間はいつも通りだ。そう伝えておけ」
「……。かしこまりました。」
少し困惑した様子のベルは、各所にテキパキと伝達の指示を出しに行った。
ニーナの言うことが正しく、食事に何か原因があるようなら、確かめた方がいい
そんなことありえないとおもいつつも、なぜか引っかかりを感じる。
いつもは自分の方が朝食の時間は早い。
朝に弱いと聞いているし、『時間を合わせてなんて居られない。』という事で、別に気にせず別々に食事を取っている。
まあ、俺が言ったところで『そんな時間に起きる気は無い』と言ってくることは想像できるのだが。
とりあえず、朝の様子を見に行こうと、少し早めに部屋を出て、ルーミエールの寝室の部屋の前までたどり着くと、ニーナがバタバタと準備している様子が目に入った
「レっ!!レオン様っ!!申し訳ございませんっ!!今支度をっ!!」
「良い。ここで待っている」
壁によりかかり、周りの様子を伺う。
朝はニーナだけしか、部屋に出入りしてない様子だった。
さて。そろそろ時間だが……。
コンコン
ドアをノックし、中の様子を伺おうとした。
すると。ガチャっと勢いよくドアが空き、ルーミエールがひょっこりと顔を覗かせた
内心びっくりした。
壁から体を起こしてルーミエールに向き合うと、彼女は気まずそうに目を逸らした。
「……ハァ……」
小さくため息を着くと、朝食会場とは逆の、らせん階段に向かって歩みを進めた。
彼女は大人しく後を着いてくる
明らかに食事の部屋とは逆の道を歩いているのに、小言もなく黙って着いてきている。
螺旋階段に着くと、振り返って、昨日のことを尋ねた
「昨日は何故ここにいた?」
わざわざこちらの道から遠回りする理由が思い浮かばない。しかも、あんな体調で……
「え?」
ルーミエールは驚いた表情をして、目を逸らし
「私がどこに居ようと、私の勝手だわ」
と、言ってのける
俺の中の『なぜ?』の疑問が膨らんでいく。
これ以上の答えが返ってこないことを予見し、諦めて食事の会場に向かうべく、来た道をもどる。
食事の会場に着くと、使用人がバタバタと準備を整えている。
いつもはこんな様子を目にすることは無いのだが、ルーミエールの前には、焼き菓子が山のように積まれ始めた
朝食にそれを指定しているのだろうか?
「朝はいつもこうなのか?」
使用人に実を問うと、焼きたてを所望しているとの答えが返ってきた。
時間がいつもより早まったから、こんなにバタバタしているのか?
ルーミエールは、満足そうに紅茶を飲むと、一通りの焼き菓子を食べている。
注意深く使用人の声に耳を傾けると、
『聞いてませんよっ』
『お陰様で焼き直しだ』
『はぁ……ワガママ姫は……』
俺に聞こえないようにわざとルーミエールのそばで言っているようだ
「ご馳走様。部屋に戻るわ」
ルーミエールは、スっと立ち上がり、足早に部屋を出ていった。
その後、使用人は、並べたケーキをテキパキと片していくと、こちらに一礼して、
「ごゆっくりお召し上がりください。」
と、言い控えている。
まるで、ここから朝食が始まったかのような仕切り直しの一言を添えて。
結局、自分の中の引っ掛かりを払拭することは出来なかった。




