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憧れの悪役令嬢に転生したからと言って、悪役令嬢になれる訳では無い!!  作者: 瑠美


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30/32

30.レオンの幼少期

「俺は幼少期のパーティで彼女に出会った。」


レオンは忘れられない運命の姫君の話を始める。


「彼女は商人の娘で、庭の花を見ては、俺に色んなことを教えてくれた。」


「この花は高く売れるとか。あの花の種は希少で、この近辺では手に入らないとか、この花からとれる染料は貴重だから高く売れる~とか……。」


思い出話を語るレオンの表情は柔らかく、遠い地に思いを馳せるように穏やかだ。


「幼い頃から、爵位やら身分やらを叩き込まれているだけの生活にうんざりしていた俺は、彼女が自分自身の力で歩いている背中に憧れていたのかもしれない。」


会う度に育って行った憧れからの恋心……か。


「だが、彼女は、ある日からパーティに顔を見せなくなった。この街を去ってしまったのか、何があったのかは、誰も知らない。」


私は、話を聞いているうちにその想い人のことを知っている気がしてきた。

「その子の…名前は?」

と聞くと、レオンは首を横に振った。


「マスカレードは仮面に隠されたものは詮索しないのがルールだ。」


なんか、その話知ってる気がするんだけど、どこで聞いたんだろ…思い出せない。


レオンは続ける。

「彼女が忘れられなかった……。美しい黒髪の少女だった。植物のことに詳しくて、商人を生業にしている。俺が知ってるのはそれだけだ」


レオンは話を終えると、私に改めて向き直る。

「ルーミエール…。この髪は?」

私の髪を指に絡めながらレオンが聞く。


「………。これは…変装する…ために。」


あれ?

いや、そうだ。レオンにバレないようにと思って染めただけ。


「変装してどうしたかったんだ?」


「どうって…バレたらきっと……」

--きっとみんな私を蔑む--


あれあれ?

いや、ち、違う。ルーミエールってバレたら、


色んな陰口を言われて……

冷ややかな目で見られて……

やっぱり、私はここにいるべき人じゃないって……


思ってしまう……。


何かが重なるように私の中で想いが揺れる。


「ルーミエール……。」

レオンは、名前を呼びながら私を引き寄せ、そのまま抱きしめた。


「俺が覚えている記憶がもうひとつある。彼女の髪からは君と同じ花の香りがした……」


そんな訳……。

うっすらと思い出される記憶。

私の子供の頃じゃない。

彼女の記憶。


仮面に花を飾り、それを付けたら今まで見た事がない世界が広がっていて、誰もが平等に、自由に居られる魔法。

姿も身分も偽ることが出来る。

仮面は魔法のアイテムだった。


「今まですまなかった……。今更何を言っても届かないかもしれないが、聞いて欲しい。俺はずっと、過去の幻影を追って君を見ていなかった。でも、少しずつ君を知って行くうちに、自分の中の気持ちが、止められない程に大きくなっていったんだ。ラルフに君を奪われて、どうしたら君がもう一度俺を見てくれるのか、そればかりを考えた。ルミ。君を愛してる。

今度は“本当の婚約者”になってくれないか」


私の頬を伝う涙は私のものなのか、ルーミエールのものなのか分からない。

でも、私の記憶。いや、ルーミエールの記憶が、想いが流れてくる。


私は、レオンの胸に顔を埋める。


流れてくる彼女の記憶。

ルーミエールは商人として街を転々とし、ある貴族に養子に貰われた。そしてパーティで再開したレオンは、昔と違って冷酷で…。

レオンの気持ちが自分に無いと言われてもなお、レオンを想う気持ちは捨てられなかった。

彼女も仮面の下の魔法の時間が忘れられなかったのだから……。


私の好きと、ルーミエールの好きが合わさって、溢れる。


「あーあ。僕も失恋かァァ~。」

二階の窓からラルフが大声で独り言を、こちらに向けて叫んでいる。


「邪魔するなっ!ラルフ」

レオンが静かに言い放つ。


ラルフは手をヒラヒラとさせながら、

「ドレス。めちゃくちゃ可愛いと思うんだけど。レオンはどう思う?」

っと聞いてくる。


レオンは

「あぁ。とても魅力的だな。」と返すと、

私の方に目線を落とし、

「とても、似合ってる」

っと優しい眼差しを送ってくれる。


ラルフはバルコニーの柵に頬杖をついて少し寂しそうに、でも、どこか嬉しそうに、こっちを見つめている。


「レオン。大事にしろよ?」

と、レオンに言い放ち、

「ルミ!レオンが嫌になったら僕は何時でも待ってるからね?」

っと、甘い声色で、私に投げかけた。


「待つ必要はないな!」

レオンはラルフに向かって叫んだ

そして、こっちを見つめると、唇にちゅっとラルフに見せつけるようにキスをした


私は、突然の出来事に息を飲み、ドキドキする心臓を抑えながら、じわじわと押し寄せてくる恥ずかしさに目が泳ぐ。


困惑しながら窓を見ると、ラルフはヒラヒラ手を振って室内に帰って行った。

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