26.帰宅して
ぅん?
寝ぼけた思考回路を手繰り寄せながら、ぼんやり意識が戻ってくる
すると、フワッとベッドに下ろされて、目が覚めた
「お目覚めかな?」
私を見下ろす黒い瞳は、月夜に照らされて、さらに深みを増して艶やかに輝く。
私あのまま眠っちゃったんだ。
私は起き上がってラルフを見上げると、ラルフはベッドの端に腰掛けた。
そして、私の頬に手を添える
指先が触れるだけで、心臓がうるさくてどうしようもなくなる。
「君がレオンをどれくらい思ってるかは分からない。けど、忘れたいのであれば、僕はいくらでも助力するつもりさ」
「……え?」
「そして。努力もする」
「努力?」
ラルフは柔らかく笑って言葉を重ねた。
「そう。君が僕を好きになってくれるように。」
その言葉の意味を理解するより早く、
ラルフの顔がゆっくりと近づいてきた。
息を呑んだ瞬間、チュッと小さな音がした。
……え?
あまりにも一瞬で、頭が真っ白になる。
熱が顔に一気に上って、反応に困って目をギュッとつぶった。
ラルフはさっと離れて、両手を耳元に掲げ、何もしてませんみたいな素振りを見せた
「あー……。ごめんごめん、今のは無しで。」
「ホントならこのまま押し倒してしまいたいところだけど……君の気持ちを、尊重したいからね」
からかうような言葉なのに、目の奥は真剣だった。
そう言って立ち上がり、私の頭をポンポンと撫でると、
「歩き回って疲れてるだろう?使用人を呼ぶから、支度して休むといい」
と言ってドアの向こうに消えていった。
私は、しばらくその扉を見つめたまま、息をするのも忘れていた。
――心臓、まだドキドキしてる。
指先で頬に触れると、そこにまだ温もりが残っているようで……。
今日の街の風景が、ラルフの笑顔が、全部まぶしく思い出されて。
胸の奥が、どうしようもなくざわめく。
「……どうしよう……」
呟いてベッドに横になる。
月明かりがカーテンの隙間から差し込み、私の頬を静かに照らしていた。




