21.待ち構えるレオン
レオンは椅子に座って目の前の扉を見つめる。
『ちょっと優しくしたからって、私の心が変わると思って?!』
ルミのあの言葉が、何度も胸の奥で反響する。
少し悲しげな表情が頭から離れなかった。
(確かに、都合が良すぎる話だよな…。)
俺は彼女の後ろ姿を追いかけることが出来なかった……。
今更、初めに交した契約を無かったことにして、彼女に向き合おうと思った。
だが、それは俺のエゴだ。
使用人を下がらせ、明日、日が昇るまでは屋敷への出入りを禁じた。
最後までベルにアレコレ世話を焼かれたが、全て無視した。
玄関の扉の脇に椅子を置き、座って天井を仰ぎ見る。
自分の都合を押し付け、彼女を知ろうともしなかった。
そんな自分を振り返るには、長い夜がちょうど良い。
元々は自分で蒔いた種だ。
自分の都合を押し付けて、彼女のことを知ろうとも思わなかった。
両親が進めるので、屋敷に一緒に住むことになった。
屋敷内での生活の様子は、使用人からの報告を聞くばかりで、基本的には顔を合わせない。
本人も顔を合わせる気は無いようだった。
俺には都合が良かった。
鑑賞し合わなければ何の情もわかない。
使用人からは、ワガママで、横暴な態度で、日々、過ぎた発言に手を焼いていると報告が上がっている。
色目を使って男を引き込み、好きに遊んでいるらしい。と。
そんな日常の繰り返しでしかなかった。
最近のルミの様子を見て、彼女が気になる自分に気づいた。
彼女のことをもっと知りたい。そう思うようになった。
そして、はじめからやり直そう。そう決めた。
しかし……。
もぅ、夜が明ける
星空が去り、うっすらと外が明るくなってくるのを感じる。
すると、
カチャッ……
扉が、静かにひっそり開かれる音を聞き、反射的に椅子から勢い良く立ち上る。
扉が少し開いた隙間から、ルーミエールの姿が見えた。
「ルミっ!!」
思わず声を上げて玄関の扉を勢い良く開けようとした。
が、
逆に扉はバタンっと閉まり、グッと引かれていて開かない。
「………。」
なんと声をかけるのが正しいのだろうか。
聞きたいことも、言いたいことも、沢山溢れてきた。
だが、
「すまなかった。ルーミエール。君が無事に帰宅したことに、安堵している……。」
小さく呟いて、背を向ける。
部屋に戻る頃には、胸の奥でざらつく痛みが、ようやく眠気に支配されていく。
ベッドに身を預けると、ベルが部屋を訪れるまで、静かに夢の中へ沈んでいった。




