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憧れの悪役令嬢に転生したからと言って、悪役令嬢になれる訳では無い!!  作者: 瑠美


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10.お庭で

「ルミ様。お望みの本が奥の本棚に1冊ございました。」


ニーナが分厚い本を本棚から探して持ってくる。


「ありがとう。そこにおいておいてくれる?」

近くの机に本を置くように指示する。


「あとは、書庫にもいくつかあるかと存じます。」


書庫か……。探してみるのもいいかもしれない。


私は机に向かい、椅子に腰かけると、

ニーナから受けとった「花と染色」の本を開く。

これで、好きな色に染められそうだ。


パラパラとページをめくると、その中にあるひとつの花に目をとめた。

この花、花壇で見た気がする。

花が染料として使えるなら、都合がいい。


「ニーナっ!お庭に行くわ!あと、庭師をついでに呼んでおいてもらえるかしら?」


「は。はい!かしこまりました!」

ニーナはバタバタと部屋を去り、私は再び本に目を通していく

まずは、刺繍糸を染めてみよう。

花の染料で、カラフルなグラデーションみたいにするのも悪くない。


それでドレスの裾にコツコツ刺繍していこう。

どうせ毎日暇なんだから、時間はたっぷり使える。


はぁ~夢は広がる~

私はニヤニヤしながら、お散歩用のワンピースに袖を通す。


汚れると悪いし、裾は少し短めで、袖があまり長くないものを選んだ。

髪の毛は、ちょちょっとまとめて~っと。


使用人を寄せ付けなくしてから、割と生活は快適だ。

食事だけはどうにもならないが、何故かたまにレオンが食事を共にすると言い、その時ばかりは美味しい食事が用意された。


ニーナは身の回りの世話を焼きたがっているが、自分のことは大概自分で出来る。


ブロンドのふわふわの髪の毛を三つ編みに結い上げて、カチューシャのようにふんわりとまとめる。

暑い日はやっぱり、まとめ髪に限る!


ちょうど支度が終わる頃に、ニーナが戻ってきた。

「ルミ様。ニーナでございます。庭師をお呼びしましたので、花壇の方に参りましょう」


「ありがとう。向かうわ。」

パラパラと書物を確認して、目的の花を確認し、お庭に向かって部屋を出る。


途中、使用人の視線がグサグサと刺さった。

使用人は、仕えるべき主人とすれ違う際には、頭を下げるものなのだが、私に対しては当てはまらないらしい。


「失礼ではなくて?」


とりあえず一言小言を発する。

ここの使用人は、一日一言何かしらで私の小言を回収しないと気が済まないらしいのだ。


こうやって悪役令嬢が作られていくんだな…。

使用人をあしらって中庭の花壇に出ると、たくさんの花が咲いていた。


「お嬢様。何か御用でしょうか」

庭師がつたないながら挨拶をする。


お嬢様って扱いなのか。なんかむず痒い。


「ルミでいいわ。」

「それより、ここの花を少しつんで行ってもいいかしら?」


「はい。こちらのお庭の花は全てルミ様のためにお育てしておりますので。」


そうなのか?!

まぁ、とりあえず、先程の書物にある花をいくつか見せてもらった。

どれもキレイに咲いていて、素敵だ

花の良い匂いが、辺り一面に漂っている


「よく手入れされているのね。流石だわ。」


きれいな花を観察しながら、庭師を褒めた。

ここまでキレイに手入れするのは難しい。虫が着いたり、草が生えたり、そんなものは一切見られない、見事な状態だ。


花に手を伸ばして状態を確認して、花を愛でる。

花のいい香りが辺りに広がっていて、つんでしまうのが勿体ない。


そうだ!この花の香料で、香水みたいなものは作れないのかな?

その辺は調べたらいくらでも書物はありそうだ。

後でニーナに探してもらお~っと。


はぁ~楽しい!!

ニヤニヤしながら自由に花壇を堪能していると


『ガチャン』


どこかで窓を閉める音が響いた。

使用人がまた何か私の小ネタを仕入れるために観察していたのだろうか?

まぁいいや。


いくつか、染料に使える花をつんで、後は……

「庭師?ソニアの花はないのかしら?」


「申し訳ございません。その花は花と言うより野花でして。草の間に咲いているものですのでこちらには……」


「そう。」


うーん。書物によると、ソニアの花びらの汁はオレンジ色の鮮やかな染料になる。

これが手に入らないのはちょっと残念だけど、他があるからまぁいいか。


あと、紫の染料があると嬉しい。

庭師に、相談して、いくつか花を増やしてもらうようにした。


花が咲く頃には、もう少しカラフルな染料が取れるかもしれない。

私がニヤニヤ妄想にふけっていると、


花の香りが風に乗って流れていく。

その香りに混ざって、違う気配が近づいてくる。

「珍しいな」

背後から低い声がして、私はびくりと肩を跳ねさせた。


そこには、白いシャツにスラックスという、ちょっとラフな格好でこっちに向かって歩いてくるレオンの姿があった。


婚約者と言われても、面と向かって会うことはなかなかない。

それこそ食事をたま~に一緒するくらい。

ましてや、恐らく部屋で読書でもしていたんじゃないかと言うラフな格好で……。


ドキッ……

ん?ドキってなんだ?


「ああ……あの……」

アワアワしながら、ジリジリ後ろに後ずさった。


レオンはズイッと近づいてくる。

え?なんか近くありません?なんで??

整った顔だちに、胸元のボタンがちょっとはだけたシャツが……。


どうしよう。

色気が……なんか、前にあった時と雰囲気がちょっと違いません?

直視出来ずに目線を逸らしつつ、なにか言い訳を考える。


送られてきたドレスを勝手にリメイクしてますとか言えない。

染料として使いたいからって、花をアレコレむしったとか……。

隠さなければならない事実が山のようにあった。


視線を感じる。

逸らした目線をチラッとレオンに戻すと、レオンはこちらをじっと見つめていた。


み!見られてるっ……。


「あ……あの……な、何か用かしら……?」

とりあえず、何か、会話を……。


「…………。」

だが、答えは返ってこない。


レオンは、私が持っている花籠の中から、ピンクの小さな花が沢山ついてる房を1つ手に取ると、


スっと私の耳元の髪に飾ると、ふわりと指先が頬をかすめた。


一瞬、時が止まる。


思いがけない行動に、頭が追いつかない。


ええっ!!?!


反応しきれなくて口元が歪む。

な。何……をっ……。


「明日は協会の孤児の元を訪れることになっている。」


「わ…わかっているわ。」

声が上ずっている自覚はある。

目が泳いでるのも許してもらいたい。


こんな急接近モードとか、ちょっと……心臓が……。


「忘れていないのならば良い。」


そう言って、レオンは私の頬から手を離すと、そのまま背を向けて、戻って行った。


びっくりした……。

このドキドキが、ドレスを勝手に作っていることがバレたらまずい。というドキドキなのか、はたまた、別のドキドキなのか……。


部屋に帰ろう。

そうだ!

一心不乱に刺繍でもして、何も考えないことにしよう。そうしよう!!


現実から逃げるように私は部屋に足早に戻って、先にピンク色に染ってしまった、自分の頬の熱を冷ましながら、刺繍糸を染め始めるのだった。

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