第七話
目を覚ますといつもの天井があった。
頭の中が混濁しすぎている。
無理もない、夢が進展し始めてから日数もそんなに経っていない。
わずか短時間の出来事。
一体なにがきっかけでこんな事が起きているのか。
鏡花・・・。
夢の内容はこの少女を多く映し出していた。
でも不思議な感覚だと思う。
俺はこの鏡花とおいう少女を知らないのになぜだか今でも隣にいてくれる。
そんな感覚に陥ってしまう。
・・・そういえば似たような感覚をしっている。
あれは誰だったのだろう。
夏の暑さでサウナ状態になっている部屋を抜け出す。
おっと、その前にシャワーでも浴びて汗を流すか。
今日も学校はさぼりだ!
シャワーを浴び終わり新しいシャツを着直す。
ちなみにズボンはジーパン派だ。
とりあえず街中をふらつこう。
部屋にいたってボーっとするだけだ。
それになにより俺自身もこの夢がなんなのかって事、知りたいと思う。
街中を歩くとすぐさま夏の太陽が照りつける。
暑いのは嫌いなはずだったんだが、夢を見るようになってから何故か心地良い。
それどころか胸が躍る。
ふと、見ると喫茶店にあのお姉さんがいた。
確か・・・御剣華織さん。
「なんだ人に注意しておきながら自分もさぼりかぁ~」
なんとなく親近感を覚えながら喫茶店の中に入っていく。
「いらっしゃいませ~、お一人ですか?」と店員さんが言ってくるが、それを制止し、御剣さんのいる場所を指さす。
店員さんは察してくれたのか下がっていく。
「よぉ、御剣さん!」
「・・・っ・・・!?」
「な、なんだよ、どうしたんだ?」
「あぁ・・・君か・・・」
近くで見る御剣さんは酷くやつれていた。
俺が言えたギリではないがたった1~2日で何が?
「どうしたんだい、御剣さん」
「いや、なんでもないんだよ」
「なんでもないわけないだろ、他人事で見ても酷く疲れてる・・・良かったらでいいから何があったのか聞かせてくれないか?」
「・・・・・・」
少し間を開けて御剣さんは話してくれた。
何より俺自身もなんとなくだが聞きたかったんだ。
「朝霞の国・・・」
「え?」
「君は朝霞の国を知っている?」
朝霞の国、間違いもなければ俺自身も見ている夢の内容、その背景に出てくる国の名前だ。
ここは知らぬふりをしておこう。
「いや、残念ながら・・・」
「そうか・・・私はその朝霞の国にいるんだ、親族を殺害された・・・その悲しみと悔しさでいっぱいなんだ」
「親族を・・・」
その言葉でハっとなる、俺も知っているその出来事を。
「朝霞の国で私は一人の男性に育てられたんだ、その人はとても強くて夢の中で私はその人にとても強い憧れを抱いていたような感覚がある」
「それで?」
「私は・・・夏も終わりに近づいた時に・・・うぐっ!?」
急に頭をおさえて苦しみだした。
これ以上は限界だ、この人を休ませよう。
「ありがとう、御剣さん・・・わざわざ話してくれて」
「・・・いや」
「お金・・・俺のおごりにしておくよ」
勘定を先に済ませ、御剣さんを置いて店を出て行く。
朝から晩まで俺は自分の布団に寝っ転がり考えていた。
御剣さんの話、あれを聞く限りで俺が知っている事を合わせると夢の中の御剣さんはどう見ても鏡花だ。
俺との差はその夢の中での視点の違いか。
俺は傍観者になっているのに対して、御剣さんは鏡花として世界を見ていた事。
御剣さんと鏡花。
一体、そこになんの共通点があるというのだ。
時代背景的には、御剣さんは鏡花の子孫なのか?
あるいは前世か?
そうすれば無理矢理だがつじつまは合う。
じゃあ・・・俺は誰の子孫であり前世なんだ。
俺はその世界の全員を見ている、俺はあの世界じゃ第三者的な位置にいる。
強いて言えば天崎武直という人。
だが俺はその人をも第三者目線に近いところで見ているんだ。
御剣さんの視点とは決定的に違う。
考えても仕方がないのか。
いずれにしても今の情報量じゃ、「何故この夢を見ているのか」「御剣さんと鏡花の関係」・・・今、浮き彫りになっている問題を解決するには至らない。
後者の場合の推理はしてみたが、それでは前者は一体何故なのかがわからない。
なのでいずれにしても今は答えが出てこない。
答えが出せる、あるいは知っているのはこの世界の神様ぐらいか?
夢を見よう。
答えを知るためには夢を見続けるしかないんだ。
見たくなかった夢を今では見たいと思い始めていた。
何より、俺は行かなくちゃいけないんだ、あの場所へ。
「・・・?」
自分で思ってて何を考えていたのかわからなくなった。
「あの場所へ」・・・あの場所なんて知らない。
当たり前だ、俺は現代に生きる健全な高校生のはずだ。
考え疲れて眠りの世界へと誘われる。
その日はいつもと違う夢を見た。
終