第十一話
鷹城皐月さん・・・夢の中に出てきた高城五月さんその人。
「それで、夢の中に出てきた高城五月さんと鷹城皐月さん・・・何か関係があるんですか?」
「関係はあります、いえ関係という言葉では軽いぐらいのものです」
「俺は貴方の他にも夢の世界で鏡花と呼ばれていた人にも会いました、その人との接点はあるんですか?」
「ちょっと待ってください、いきなり質問責めでは困ります」
「あ、すみません・・・」
お互いに少し間をおく。
「私の事を話すのならまずは貴方の事を私が知っておく必要があります」
「そうですね」
「貴方はその夢の中では一体誰なんですか?」
「俺は・・・誰でもないんです、その世界ではただの傍観者で」
「傍観者・・・?」
「俺はその世界では傍観者なんです、強いて言えば天崎武直の近くにいつもいます」
「武直様の・・・」
皐月さんは少し考えている。
「天崎武直の近くに力丸って人に鏡花がいたのは知っているんです、それ以外にその近くにいた人はいないんですか?」
「いませんね、武直様の近くにいたのは力丸様と鏡花ちゃんだけです」
「じゃあ、俺は一体・・・?」
夢の事なのに何故だか恐くなってくる。
それも当然だ、どういうわけだがあの夢の世界の住人と現実の住人はシンクロしている。
意味はわからないがシンクロしている、それは良い。
俺とこの人達との決定的な比較点・・・それは俺には夢の世界の実体がない。
「貴方が誰かなのは私にもわかりません、恐らく鏡花ちゃんのこの世界の姿は私にもわかります、一回ですけど見たことがありますから」
「・・・・・・」
「勿論見たときにわかりました、この子は鏡花ちゃんだって」
「でも・・・?」
「はい、貴方には感じられないんです・・・」
「じゃあ、俺って・・・」
「待ってください、そう悲観的にならないで・・・まずはどうして夢の世界の私達がここにいるのかを話します」
続けて皐月さんは話し始めた。
「まず、ここにいる私と夢の私は同一人物であって違う人です」
「早速意味がわからないんですけど・・・」
「転生石の事をもうご存じですか?」
「いえ・・・」
転生石?
名前の通り、転生できるとでも言うのか、まさか・・・だって現代においてそんな魔法みたいな事ができるわけないのだ。
それこそ夢の世界のようなはるか昔にそんな事ができるわけがない。
しかし皐月さんの説明はそんな考えを簡単に覆した。
「転生石というのは、朝霞の国周辺で発掘された極めて稀少な功績の名前です、もう薄々おわかりいただけたと思いますが、私がここにいるのは転生石のおかげなのです」
「そんな、転生なんて信じられるわけ・・・」
「でも現に私はここに生きています」
「・・・・・・」
「その時に転生石を持っていたのは私の知っているところでは4人」
「4人?」
「はい、まずは私と鏡花ちゃん、そして転生石を分け与えてくれた朝霞姫・・・そして武直様の4人です」
この4人のうち2人の所在はわかっている。
でもあとの2人は・・・。
と、ふと思い出した。
「そうか・・・」
「はい、恐らくは貴方と同じ学校に通う方、あの人が朝霞姫でしょうね」
「じゃあ天崎武直は一体・・・?」
「まだわかりませんか、同じ夢を恐らく私達は見た、それは貴方も同じです」
「あぁ・・・」
「鏡花はあの女の方、私は高城五月、そして朝霞姫・・・もう残っているのは一人しかいないんです」
「そんな馬鹿な、じゃあ俺が天崎武直だっていうのか・・・?」
「はい」
そんな馬鹿な、この言葉だけが頭をかけめぐっていた。
朝霞姫と予想される姫路さんはともかく、俺が知っている二人は夢の中で明確にそれが自分自身だとわかっていた。
だから鏡花=御剣華織、高城五月=鷹城皐月というのはわかる話だ。
しかし俺自身は天崎武直を第三者目線で見ているという事実がある。
俺が天崎武直であるはずがない。
それに転生したのなら俺は全くといって良い程、天崎武直としての記憶がない。
「大分・・・混乱させてしまったようですね」
「・・・俺は誰なんだ・・・」
「・・・貴方は絶対と私は言い切れませんが武直様です、私はそうだと信じています」
鷹城皐月さんは勘定を済ませて先に喫茶店から出て行った。
しばらく時間が経ってから俺も家へと帰る。
そんな、転生なんてものを信じろっていうのか!?
だってそんな昔から転生なんてものができていたのならどうして現代にその技術がないんだ?
・・・次は姫路八代に話しかけてみよう。
恐らくは彼女が朝霞姫、ならばこの夢の謎も・・・いや全ての謎に決着をつけられるだろう。
だからもう一度夢を見よう。
最後の決着をつける為に・・・。
終