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時をこえて  作者: ユウ
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第一話

深い深い眠りの底にいる。

俺は夢の世界にいる。

しかしその夢は俺の世界じゃないらしい。

俺はその世界では傍観者で存在していない。

それは空気と同じ存在だ。

その夢は俺の意志とは関係なく進んでいく。




男と女がいる。

格好を見ると、男は武士のような、女は歴史に出てくるような昔の日本のお姫様のような格好をしている。

その二人は泥まみれになっていた。

ひどくボロボロだ。

よく見ると周りの景色も・・・色でいうと赤い。

一面が赤い気がするんだ。

「気がする」というのはわからないのだ。


「待っています、貴方が来てくれる事を・・・待っていますから!」


「・・・・・・」


男の声はいつも聞こえない。

いつもここで目が覚める。



「また同じ夢か・・・」


俺はいつもの天井を見る。

深いあくびのついでに深い溜息をつく。

わからないのだ、あの夢が。

ただの夢じゃないのは自分でも想像がついていた。

自分はその世界では空気同然で全くといっていいほど世界に干渉していない。

なのに自分はかつてその世界にいた、いやその世界を知っている。

ような気がするだけなのかもしれない。

考え事も程々にして俺は学校の支度を始める。


「暑いな・・・」


時期も6月にはいっていた。

もう立派に夏へと季節は進んでいた。

汗ばんだシャツを脱いで濡れたタオルで体を拭いた。

いつも着ている制服をハンガーから下ろしていく。

胸ポケットから生徒手帳が落ちる。


{川崎 真治 ○○高校3年生}


かわさき しんじ・・・これは俺の名前だ。

一応、高校生で今年卒業になる。

相変わらず自分の名前なのに他人のような感覚におそわれる名前だ。

俺自身、嫌いではないがこの名前は自分の名前じゃないような気がしてならなかった。

って、また変な考え事にふけってしまった。

朝飯を済ませてとっとと学校に行った。




学校についても別に変わった事なんてない。

いわゆる友達がいて、先生がいてって感じで。

唯一の楽しみといえば一つ学年が下の女の子。

姫路矢代さんを見る事ぐらいか。

その見た目は正直いって美しいという言葉が似合う感じで、とてもおしとやかで清楚な感じだ。

しかし彼女はどこか浮世離れしていた。

なんというか世界が違うのだ。

そのせいか、その子が友達と歩いている事も無ければ喋っているところも見なかった。

なんとなく気になる女の子、俺もそんな感じにしか見ていなかった。




学校が終わり生徒もばらける。

友達からの誘いもあったが、全て断って学校を出た。

最近見る、あの夢・・・あれが頭の中をかけめぐちゃって少し整理したかった。


学校を出て歩きながら考えていた。

あの夢の事を。

武士とお姫様の会話。

なんで夢なのにこんなに気になるんだろう。


「あたっ!!」


あた、というかけ声と同時に攻撃したわけではない。

痛いという意思表示の言葉だ。


「大丈夫?」


「大丈夫です、俺の方こそすみません」


見るととてもスラっとしていていかにも運動が得意っぽそうな綺麗なお姉さんだった。

どこか不思議な雰囲気を纏うその人に俺は目を奪われていた。


「あの・・・?」


「あ、いや、はい」


「ふふ、気をつけてね」


「本当にすみませんでした」


その女の人は微かな笑顔だけを残していってしまった。

でもこの不思議な感じは姫路さんに似ていたなって思った。

姫路さんを神秘的とするなら、今のお姉さんは謎の女性って感じか。



家にたどりつき、飯と風呂と宿題を適当に済ませて自分の布団へと入った。

その日は夢を見た。



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