激動のヴォカリーズ(castling4)
「教皇様、アレテ様と坊ちゃんをお守りください」
ロロは黄金の斧を握りしめて、祈った。
「頼もしいと、思ってくださったでしょうか」
雷で戒めても、ジゲンⅠの住人はなお怒りが収まらなかった。
「あの方々のご病気を治せません……」
使用許可ランク10になって扱えるようになった、とても良く効く癒しのマホーが効かない。
「裏切り者の一味よ、白に染まれ!」
「平等な世界への歩みを邪魔するな!」
住人達より白い滴が落ちてゆく。雷に抗おうとして、血を流しているのだ。
「おやめください、お心を失ってはいけません……!」
ジゲン差過剰反応の症状ではない。シロエの呪い? または、ゲートが暴走した影響? どちらにしても、早く治してあげなければ!
(甘いのよ)
雪に紛う小さな紙片が、舞い降りる。聞いた者まで凛とさせる言葉を伴って……。
「アドミニス様」
住人達が平たい紐に捕われ、恐るべき速さでねじ曲げられていった。紐は、紙吹雪がじゃばらに折り重ねられてできた物であった。
「更に痛くさせて、いかがなさるのですか……」
(生かして動きを止めるなら、これぐらいしておくべきね)
くの字・への字・L字・U字にされて、住人達はおとなしくなった。
(ゲートを閉じれば、治るわ)
ロロの前に、しわだらけになって丸められた折り紙が現れた。メッセージの主がひどく疲れている様子を表しているようだった。
「お待ちくださいましね。ツコロクモ・ミウ・シモコク」
折り紙が花開くように、ゆっくりしわが伸ばされた。やがて薔薇の形となり、パーチメント色から蒼に変わった。
(いいマホーを使えるじゃない)
「アドミニス様、ご無事で何よりでございます」
スクエイアの証が映し出したイメージがはずれていて、ロロはほっとした。
(間一髪だったわ。暗君の弟は厄介ね)
「呪いで、ゲートを思いのままにできると伺っております」
(暗君の弟を改心させるつもり? ここで討ち取らないと、ジゲンに明日は無いわよ)
「はい」
冷たいように聞こえるが、アドミニスはスクエイアとして何をなすべきか教えてくれている。
(ウグイスダニの元へ行かせて)
蒼い折り紙の薔薇が、ロロの髪を飾った。
「かしこまりました」
斧の柄に腰かけて、ロロ達は王城へ飛び立ったのだった。




