表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/86

激動のヴォカリーズ(10)

「次は、鶯谷先生ですよ!」

 とうとう椅子を離れなければならないのか。全部、目白先生に任せたかった。生徒には秘匿するが、隠し題の和歌は数種用意されているのだ。後のグループが、考えもせずに正答することを防ぐためだった。

「国名と地名の読み方を書いてもらうぞ。五問中三問以上正解したら、クリアだ」

 A4用紙を一枚、生徒達に渡す。定期テストのサービス問題として毎回出している、国名漢字クイズをアレンジした。四人いるのだ、文殊菩薩を超える知恵が浮かぶのではないか。

「え、四つ目なんなの?」

「点字ぽいんだけど」

「最後のは、音符みたいじゃん」

「ダニー狂ってる」

 意外にも早く見つけられた。当イベントは「ジゲン間交流」が目的だ。ジゲンⅢ以外の言語を、覚えて帰ってもらおう。なお、ダニーは私を指している。

「授業で時々教えてきたが、あまり聞いていなかったようだな?」

 知るかおっさん、と四人は顔で示してくる。歌だけでなく表現力も練習しているようだ。

「点字のように突起が付いている方は、ジゲンⅠの文字、音符に似ている方は、ジゲンⅡの文字だ。各ジゲンの国名を書いている。全問正解したら、大したものだぞ」

 確実にスタンプを得たいのなら、漢字の三問を当てれば良い。ジゲンに関心があれば、残りの問題にも挑んでもらいたい。

「その問い、某らも解かせていただかん」

 白い詰襟が、スタンプシートを提示しながら現れた。

『キャー、目黒くん!』

 合唱部グループは肩を寄せ合い、転入生に熱烈な視線を送っていた。

「無礼者、王族の前だぞ」

 側にいた同じジゲンの留学生を、目黒くんは制した。

「止めよ。某は、一留学生にて候。上下などあらぬ」

「あの……目黒くんは、三組よね? 他の組のお友達とグループを作ったの?」

 恐る恐る訊ねる目白先生へ、彼は堂々と答える。

「開催前のご説明では、必ず同じ組の方とグループを編成すること、とは伺っておらぬで候。若し誤っておるならば、直ちに改めむ」

 一組の留学生と、ジゲンⅡより来た二組と四組の留学生も頷いた。

「そこまでしなくても大丈夫よ。私達がもっと丁寧に言わなきゃいけなかったんだわ」

「忝い」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ