表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/86

進軍のヴォカリーズ(3)

 聡いな。生徒と接してきて相応に場数を踏んできたか。

「父との別離を重ねたのでしょう」

「お父様が……」

「幼い頃、ジゲンゲートの彼方へ吸い込まれました。失踪扱いを経て、死亡したとみなされました」

「つらかったですよね……」

 何をしている。目にごみが入っていた、など、ごまかせば良かったのだ。

「近隣に、親代わりをしてくれた人がいましたので、それほどでも」

「誰か一人でも、ついていてくださったら温かくなりますよね」

 ここが、と、目白先生は胸を指した。

「大切な人……特に家族を失うことは、吹雪の中にぽつんと残されたようなんでしょうね」

 白く光る窓へ、彼女はゆっくり視線を移す。

「私は、初めからいなかったので……鶯谷先生に寄り添いたくても、できないんです」

 癖なのか? 彼女の背景によって形作られたものなのか、儚げに眉を歪ませるのだ。

「どうしたら、先生の灯火(ともしび)になれますか? どうしたら、先生に温もりを届けられますか?」

 目を背けられない。調子を狂わされてばかりだ。苛立ちと似て非なる感情が、こみ上げる。

「ねえ、先生……?」

 始めから答えを他人に求めるな。私に寄りかからないでほしい。

「あなたの選択が、最善策なのではありませんか」

 私は早口で返して、具合を確かめにきたジゲンⅡの医師と入れ違いに、処置室を出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ