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進軍のヴォカリーズ(1)
鶯谷先生が、私の元へ駆けつけてくださった。胸が高鳴るはずなのに、締め付けられるような苦しみに浸された。
教科が違う私を、何かと助けてくださるのは、どうして? 私に少なからず関心を持っているため? 私の思い込み? そうよね、鶯谷先生はいつも、周りをサポートしてくださっているわ。全身がカッターみたいに張り詰めていらっしゃるけれど、心は毛糸玉のように柔らかくて、温かいの。だから、困っている人がいたら放っておかずにいられない。
私は、当たり前だと思わないわ。鶯谷先生は、颯爽と校舎を歩きながら、何かに悩んでいらっしゃる。本当に優しい人はね、自分を惜しげもなくすり減らせるの。そして、自分も大事にできるのよ。
鶯谷先生のような教師になりたい。だから、ちゃんと言わないといけないの。
どうして泣きそうなお顔で、私を見ていたんですか。




