第四害 試練に終わりなき
気づいたら寝落ちしてしまい、遅れました。
びっくりです。
ユニークモンスター……レックス・イラベスティアの舎弟になった俺は、レックス……いや、オジキに呼ばれ、ついて行くことになった。
少し歩くと、広い空間に辿り着く。
「オジキ……ここは……?」
俺がそう言うと、オジキが答える。
「ここはな……オレの持っている庭の一つだ。お前さんには、ここで試練をしてもらう……」
え……庭……!?
にしては広すぎるだろ……!
東京ドームくらい……いや、下手したらもっと広いぞ……!?
それに……試練……?
驚いている俺を横目に、オジキは話を続ける。
「今からここで……モンスターを十体抜きしてもらう」
「……なるほど……」
モンスター十体抜きか……
確かに単独撃破は面倒臭いだろうけど……そんなに辛くは感じないな……
「今のお前さんからしてみりゃ十分格上相手だ……だが、お前さんはこのオレが認めた男だ。たとえ負けようが、何度でも立ち上がれ……」
「オジキ……」
「もし逃げたくなったって言うなら、そんときゃ勝手に逃げろ。お前さんはその程度の男であったと落胆するだけだ。だが……期待を裏切るんじゃぁねぇぞ……?」
そのドスの入った言葉は、ものすごく低い声で俺へと届く。
そして、俺の画面に通知が飛ぶ。
〈『ユニーククエスト:【試練・十獣との勝負】』 を受注しますか?〉
ユニーククエスト……!!
おいおい来たぞ……まじかまさか俺にも来るとはな……!
こんなクエストを出すってことはよ……オジキは俺のこと、相当期待してくれてるってのか……そんなこと言われたらよ……
「もちろんっすよ! オジキ!!」
やるしかねぇよな……!!
〈受注しました〉
その後、オジキから試練についての説明を受けた。
出てくるモンスターは全て、俺より高いレベルらしい。制限時間などはないし、何度でも再挑戦できるようにか、外には休憩場所まで完備されている。
手厚いサポートだな……
「オレはちと用事がある……この試練がおわりゃ、言いに来い……」
「わかったっす」
俺は力強く、されどどこか真剣な眼差しでオジキを見る。
「……楽しみにしちょるからな……」
そう言うと、オジキはどこかへと立ち去る。
後に残ったのは、俺とレイ、そしてヴァリエンテのみであった。
「……キョート殿……中々見ものであるな……流石はレイの選んだ殿方……」
「ちょっと言い方に語弊があるのはなんなんでしゅ!!」
兄妹だからか、はたまた単に波長が合うのか、息のあった漫才をしている二人を横目に、俺は考え事をしていた。
オヤジ……いや、レックスが言うには、今の俺だと少し厳しい……らしい。
だが……俺はそこら辺のプレイヤーとは違う……例えどれだけレベルが離れていようが、倒すことだってできる……ましてや、何度もリトライできるってなら……割とすぐに突破出来そうだな……
「おっと、もうこんな時間か……我は少し用事がある故、少し離れさせてもらう。では、キョート殿、レイ、またの日を!」
そう言うと、ヴァリエンテは急いでいるのか、走って行く。
「おぅ! またな〜」
「もう来ないで良いでしゅ〜!!」
おいおい……レイさん、それは流石に可哀想だぞ?
と言いたいが、それは心の中にしまっておこう。
一度、小屋の中へと入り、リスポーン地点を更新してから、もう一度外へと出た。
すると、始まったのか、一団体のモンスターが現れる。
見た目的にはおそらく狼的なやつだろうか。6体同時に召喚されていた。
「さて……とっととクリアするか……!」
こんな試練……すぐにクリアしてやるぜ……!!
…………
………………
……………………
俺は目が覚める。
そこは、ベッドが置かれた小さな小屋であった。
「あ、キョートさん。おはようでしゅ!」
「んぁ……レイか……これで何回目だ……?」
俺はレイに尋ねる。
「えっと……ここで目覚めたのは23回目でしゅ」
てことは……24回目の復活か……
「これ…………」
俺の中で沸々と湧き上がる。
「これ、クソゲーだろぉぉぉおお!!!」
「でしゅ!?」
この十連戦……おそらくクソゲーの匂いがする……てかして欲しい。
と言うのも、どの敵もクソほどいやらしい戦い方なのだ。
俺は、先程まで相対していた五体目の敵、「マトンイーグル」なんかは顕著だ。
そもそも届かない。奴が空を飛んでいる為だ。
空飛んでるやつに有効な手札がねぇのが悪いのか……? だとしてもアホだろ。あいつ……
その他の敵も、いやらしいったらありゃしない。
悉く武器破壊か武器落としを狙ってくる植物系モンスターとか、地面を掘り進めるモグラとか……
とにかくバリエーションに富んでいる。
故に、戦い方をその都度その都度変えないといけない為、とてもしづらい……それに、どれだけ進めようがクリアできなければ最初からとなってしまう。
これが一番きつい……オオカミとかもう20戦以上したぞ……アホだろ……
うーん……どうすれば奴らに勝てるか……
「キョートさん、どうするでしゅ?」
その時、突然レイが俺に話しかけてくる。
「どうって、なにがだ?」
「お父様はあぁ言ってたでしゅけど……正直言うとキョートさんには関係ないものでしゅ……だから……無理なら……」
「何言ってんだ、レイ」
「でしゅ……?」
「俺は出来ないなんて1ミリも思っちゃいねぇ。何故なら、人間誰しも……出来ないことなんてないって思ってるからな。だから、この試練も、舎弟ってやつにも、全部クリアしてやるよ」
その言葉を聞いたレイは、少し笑顔を取り戻したように頷く。
「……わかったでしゅ! 私も、キョートさんについていくでしゅ!」
「まあ、無理に戦闘についていくのはしなくても良いかもな。普通に死ねるし」
「で……でしゅね……」
俺が死ぬのは別に良い。何度でも復活できるからな。でも、レイが死んだら復活できるのかといわれると……答えはきっとノーだろう。
まだ、人の死に様にあまり立ち会っていないからわからないが、そんな気がするのだ。
「さて……もう一回死んでくるか……」
俺はそう言いながら、剣を構えて外へと出る。
ただ……もう20戦以上もしてんだ……ある程度の動きは読める……
最初に現れたのは、いつも通りオオカミであった。
「さて……もう何度目だ……?」
オオカミ……正式にはパックウルフと呼ばれるこいつらは、特定の行動をしてくる。
近づけば噛みつき、遠ざかれば爪攻撃を群れ単位……つまり今だと6体同時にしてくる。
だが、別に統率が取れているわけではない……!
「お前の攻略法なんて……とっくの昔に構築済みなんだよ……!!」
俺はオオカミへと接近する。
予想通り、噛みつき攻撃をオオカミは繰り出す。
「はっ!! 読めるんだよ! こう何度もやってるとな……!!」
俺はバックステップをし、一体のオオカミを引きつれる。
「お前ら群れるオオカミはな、一人になった時が一番弱ぇ!!」
俺は刀身に力を込める。
「〈兎斬〉!!」
その刀身は、オオカミの首筋にしっかりと入り込み、オオカミの体を真っ二つに裂いた。
「よし! 次は2体目!!」
俺は同じ手法を使い、一体……また一体と切り裂いていく。
そして、最後のオオカミを斬った時……俺の画面に通知が飛ぶ。
〈ネクストエネミー:ローズトレッチ〉
出たな……装備品剥ぎ取り野郎……!!
俺は剣を持ち、構える。
「そう何度も剥ぎ取らせねぇよ……!」
敵の出現が完全に完了した時、合図があった。
〈試練再開:2戦目〉
2戦目……ローズトレッチとの戦闘が始まった。




