三人寄れば文殊の知恵、四人寄れば……・上
眠いのを我慢してなんとか間に合わせた……!
「……もう朝か」
俺は、太陽の光に晒されて、起こされる。
「……ご飯食べに行くか……」
俺はご飯を食べるために、下の階へと降りる。
リビングには、朝ごはんを食べている父と母、そして妹の飛鳥が居た。
「おはよ〜……んじゃ、いただきまーす」
「ちょっとお兄ちゃん? なんで私の隣に座るのよ」
理不尽な言葉が俺の元へと届く。
「はぁ? 空いてる席そこしかねぇだろ」
「そこの席は今日の占い的に良くないからあんまり座らないでくれない? 邪気が私に移っちゃうでしょ!」
「なにが邪気だよ……んじゃあ、どこに座れって言うんだよ」
「そんなの決まってるじゃない、お父さんかお母さんが食べ終わるのを待つのよ」
「なんでお前は食べ終わらない予定なんだよ」
「私がご飯食べるの遅いって知ってるでしょ!? お母さん達のが速いんだからそっちを待っててよ」
「はぁ……いい加減早く食べれるようになってくれよ……」
「まあまあ、お父さんもう食べ終わったから、ここに座りなさい景兎。お母さん、ごちそうさま」
「はいはい、お粗末さまでした」
父が立ち上がり、お皿を持っていく。
お母さんと飛鳥にそこへと座るように促された俺は、渋々座ることにした。
別に嫌と言うわけではない。
ただ、どこ座っても一緒なんだからそこ座ってもよかったんじゃ……と思ったのだ。
「まあ、いっか。いただきます」
妹の占いは当たる。
俺のこれまでの人生経験から得た知識に基づくと、従っていた方が良いと感じた。
少しモヤるが仕方がない。飛鳥の占いが当たりすぎるのが悪いのだから。うんうん。
ご飯はとてもおいしかった。
「ごちそうさま〜……って、まだ飛鳥食べてんのかよ」
俺が食べ終わっても尚、お皿にご飯が残っている飛鳥を見る。
お皿に残っているご飯は後1割ほどで、そんなに遅くはないと思える量だが、俺が座った段階では残り5割くらいだったと思うことを考えると……
うん、遅いなやっぱ。
「なに? 別に良いでしょ。お兄ちゃんみたいに早く食べれないの!」
「まあそうか。噛みしめて食べろよ」
俺はそう言い残し、部屋を出る。
そして、そのまま二階にある俺の部屋まで戻る。
「さて...…ログインするか……」
俺はゲーム機を装着し、ベッドに横たわる。
「早くいくか……鏡花とレイが待ってるしな」
---Log In
雨林の中にある大きな街。
中央の大きな宮殿を取り囲むようにしてできたこの街へと、俺は降り立った。
「待たせたな、ちょっと飯食ってた」
「遅い! 何時間待たせてるのよ!」
「いや、そんな待たせてねぇだろ」
俺は集合時間から20分ほど遅れて到着した。
その場所にはミライやレイはもちろん、天皇河さんの姿もあった。
「すみませんね、待たせてしまって」
天皇河さんに謝罪をする。
インフルエンサーの彼女の手にかかれば、俺など燃やすのも容易い。
やらかしたことはしっかりと謝らないといけないからな。
「いえいえ、私も先ほど来たばかりですから」
うーん……天皇河さんの性格がいまいちわからない……丁寧口調の時もあれば媚び媚びの口調の時もあるし……これがメリハリってやつか?
「そうだったか。なら、はやく出発しようぜ」
「ちょっと、なにあんたが仕切ってるのよ」
「いいじゃねぇか、ほら、早く行こうぜ。時間も限られてるんだからさ」
そう言うと、レイを担ぎレイに指示を出す。
「さ、行くぞミライ!」
「わかったでしゅ! れっつごーでしゅ!!」
「あ、ちょっと!? 置いてかないでよ!!」
俺たちは走り出し、この街から出る。
勢いそのまま、目的地である「ネウトレイリス協商国」へと向かった。
…………
………………
……………………
「なぁ……ミライ」
「うん……キョート……」
「で……でしゅぅ……」
「あれは……」
俺たちは今、立ち止まっている。
その原因は前方の道にあった。
道を塞ぐほどの大勢のモンスター。
まるで参勤交代を間近で見ているかのような圧迫感に見舞われた。
まあ、そんなのリアルで見たことないんだけど。
「「……あれを倒さないとダメ?」」
俺とミライが、天皇河さんに対して言う。
「……じゃないと、多分間に合いませんよ……?」
「「デスヨネー!?」」
前に居るのはモンスターの大群。
俺たちは四人だけ……
これ……いけるのか?
「あれはいわゆる大量発生と言うやつですね。ここいらに住む通常モンスター達が1箇所に集まる現象です」
「大量発生……なるほどイベントだったのか……」
こんな物騒なイベントもあったのかよ……これ街の近くで出来たらどうなるんだ……?
「ここら辺でまだよかったです。もう少し奥側だとレベル的に無理でしたので、なんともできなかったですが……」
そういうと、天皇河さんは弓の弦に手を掛ける。
「……本気かよ……あの量……バカみたいだぜ……?」
「まあ……やれないことはないし……倒してみる?」
「が……頑張るでしゅ……!」
「知ってますか? 一本の矢は弱くても、三本の矢は、強いんですよ☆」
そう言うと、天皇河さんは弦を引く。
集中しているみたいだ。話しかけるのは野暮だろう。
「俺たちもできることをするか……」
「私、ちょっと試してみたいものがあるんだよね。だからキョート、露払いお願いね」
「任せろ……お前達には攻撃なんてとどかねぇよ……!」
俺は走り出す。
気づかれていないのか、はたまた攻撃しないと敵対化しないのか、案外すんなりと近づけた。
「これは……もしや罠だな?」
近づきすぎることで敵対化すると読んだ……ただ、俺は生憎だが近接職……近接技しかできないが……!
「速さで全てを補ってやるよ!! 〈兎脚〉!!」
俺は脚力を増強し、敵へと更に近づく。
「オラァ!!!」
俺は「雷電」を取り出し、モンスターの群れに一撃を加える。その後、すぐさま距離を取る。
「斬ったら離れる……! これがヒットアンドアウェイの基本!!」
手前にいたモンスターを倒す。が、それを何とも思っていないのか、俺の方へとじっと視線が向く。
「せめて見てやれよ……! 俺がその間に倒すからよ!!」
再度、モンスターの群れに接近する。
「オラァ!! もう一発ゥ!!」
モンスターの群れに対して剣を振りかぶる。
が、読まれたのか、剣を振り翳したところにはモンスターがいなかった。
「学習能力はえぇ……二度同じ手は食わないってか?」
縦振りがダメなら……横振り……!
「行くぜ……〈双剣斬〉!!」
俺は二つの刃を交互に横薙ぎし、辺りにいたモンスターを一掃する。
しかし、それでも尚多すぎるモンスターを見て、俺は途方もない感覚に襲われる。
「おいおいマジかよ……まだいんのかよ……」
モンスター達が俺の方をガン見する。
そして、少し様子が変わる。
おそらくだが、俺へのヘイトが溜まってるのだろう。
「ようやくやる気になったか? かかって来いよ、モンスターの群れなんてぶっ壊してやるからよ……!」
「キョートさん! 少ししゃがんで!」
「んえ?」
「……〈三矢撃ち〉」
背後から声が聞こえた。
次の瞬間、俺の背後から矢が三本飛んでくる。
「ぅおあ!?」
俺は咄嗟にしゃがんで避ける。
その矢はそのまままっすぐ進み、俺の前に居たモンスターを根こそぎ消し飛ばした。
「……っぶねぇ……」
「……まだ残ってますね……」
俺よりも左右にいたモンスター達が、遂に攻撃的になり始める。
その標的は俺ではなく、天皇河さんの方へと向かっていた。
「まずい……守るぜ……!」
俺は「雷電」をしまい、新たに「戦月兎・直剣」と「戦月兎・円盾」を取り出す。
「ここから先は通さねぇよ……」
だが……この数……耐え切れるか……?
視界の奥の方には、レイが何体かヘイトを買ってくれているのが見える。
天皇河さんがもう一度撃てるまでに何分かかる……?
2分弱くらいか……?
2分守りきれってか……? この数のモンスター相手に……?
「来いよ……俺が相手だ!!」
モンスターが一斉に俺の方へと向かう。
その圧倒的な質量相手に、俺は為すすべなく死ぬ……と思っていた。だが……
「【憂鬱空間】!!」
俺の左側から声が聞こえた。
その言葉を聞くと同時に、モンスター達の動きがゆっくりになっていった。
「ミライか……!」
「キョート! 今のうちに倒して!!」
「わかってる!! 〈兎斬〉!!」
俺は斬撃を飛ばし、敵を切り伏せる。
「行きます……〈三矢撃ち〉!!」
天皇河さんの矢が、またもやまっすぐ貫かれれ、一直線に綺麗になった。
とりあえずはまだ接近していない……そう確認した後、俺は振り向く。
「いやぁ……危なかった……ミライありが……え?」
「まだまだ来てるよ、気にしないでいいから早く前を向く!!」
「いや……気にするだろ……お前それ……」
俺はミライを見て呟く。
「"青すぎだろ……"」
そこには、髪色が藍色に染まり、少し静かなオーラを纏ったミライの姿があった。
ミライの様子が少し変みたいです。
なんだろう? 次回わかるかも?




