ケモノ娘の甘いワガママ
羽休め回です。ほのぼの系?かな?
俺たちは「迷光喫茶 雛と翅」を出て、宿を取った。
ファイアワークスに言われたように、俺たちは旧大陸最西端の国、「ネウトレイリス協商国」へと行くことになった。
……7日で。
「さて...…今日できる準備はするけど……明日にならないとだめなんだよねぇ……」
「そうだな……天皇河さんを待たないといけないからな」
俺たちは今、天皇河 邪鬼子という人と行動している。
特に目的地を定めた記憶がないが、待つと言ってしまった手前、待たねばそれは裏切りと同じ……
「仁義を重んじる身からすりゃ……そういうのを守るってのが漢ってもんよ……」
「あんた、何言ってんの……」
まあ、インフルエンサーを裏切るって言ったら、何されるか分かったもんじゃないからな……
待たずに行くのも悪いし、それに最近は急ぎすぎたしな。
ここはゆっくり行ってもバチは当たらないだろう。きっと
「……でしゅぅ……」
レイがこちらをじっと見つめる。
何かやましいことを考えたような目ではなく、純粋に、驚いたような感じでこちらを見続ける。
「……あのぉ...…レイさん?」
「でしゅ!? あ、ボーっとしてたでしゅ……」
「おいおい、まだ眠いか? なら宿で寝ててもいいけど」
「ち、違うでしゅ!! ちょっとおとーちゃんにそっくりだっただけでしゅ!!」
「おとーちゃん……?」
そういえば、レイの家族について何もしらねぇな……
出会った時はボロボロの布雑巾だったから、何かあったことはそうなんだろうけど……
「なんだ? どこが似てたんだ?」
「……その憎ったらしい口調でしゅ……!」
「え……」
シクシクシク
レイに「憎い」とか言われた……シクシクシク
「あーあ、キョート泣いちゃった」
「でしゅ!? ち、違うでしゅ!? キョートさんじゃないでしゅよ!?」
「ハハハ……大丈夫だってレイちゃん。ただのウソ泣きだから」
ミライがそういうと、俺は起き上がりミライを詰める。
「おい! なんで言うんだよ!」
「見たらわかるでしょうが。純真なレイちゃんを騙そうとするな」
ミライは俺にデコピンをお見舞いした。
「いて...…! おいおいそりゃないだろ」
「あんたも殴ったからお互い様ですぅ~」
くそ……やったのは事実だから何も言えねぇ……
「てか、用意って何すんだ?」
消耗品の買い足しか……?
そんな必要な物とかあったっけな……
「そろそろ防具とかを新調しよっかなって思ってね。まあもう時間も遅いし、そこまで遠出とかできないからね」
「なるほどな」
たしかに、シフィリス・トガムとの闘い以降、碌に装備を買っていない。
ユニークモンスター戦がイレギュラーなだけで、魔導学府の周り自体は低レベルのモンスターが集うところだ。今まではそれでもなんとかなってはいたが、ここからは旧エンドコンテンツに行くんだ。装備の新調のタイミングなのは間違いないだろう。
「そういうことならついていくぜ。俺もこの街をぶらぶら散策したかったところだし」
「レイちゃんはどうする? ついてくる? それとも寝ちゃう?」
ミライがそう言うと、眠たそうに眼をこすりながら、レイが答える。
「つ……ついていくでしゅ……」
「おいおい、大丈夫かよ。やっぱここで寝てた方が良いんじゃねぇか?」
「一緒にいくでしゅぅ~」
レイがワガママ言うのは珍しいが...…なんでそこまでしてついてくるんだ……?
俺が悩んでいると、ミライが言う。
「んー……んじゃあキョートにおんぶしてもらいながらいこっか!」
「はぁ!? なんで俺が!?」
「わーい、やったでしゅぅ!」
なんで……なんでだよぉぉぉぉおお!!
…………
………………
……………………
「すぅ……すぅ……すぅ……」
「……結局寝るし...…やっぱ置いてきた方がよかったんじゃないか……?」
「いやいやキョート。レイちゃんはこぉんなにかわいいんだよ? そんな子の頼みを断るっていうの?」
「そりゃ断るだろ。この世界がどれだけ治安が良いのかは知らんが、寝てるやつが襲われないって保障があるわけじゃないだろ。それに、襲われたときにお荷物になったことでレイを後悔させたくない」
俺のその言葉を聞いて、ミライが目を丸くする。
「……キョートもちゃんと考えてんだね」
「なんだそれ、まるで何も考えていないみたいな言い方だな」
「そりゃ、いつもの言動を聞いてる身からするとね」
「何だと? 俺は結構真面目に考えてるだろ」
「そうかな...…そうかも……?」
何だこいつ……
「ってかミライ、なんでお前はそこまでしてレイを連れていきたがってんだ」
それにミライは答える。
「会議終わってからのレイちゃん、ちょっとおかしかったでしょ?」
「まぁ、おかしいと言われたらおかしいな」
「普段は見せない強情なとことか、ワガママを言うところとか。なんでかなぁって考えてたのよ」
「おん、それで、何がわかったんだ?」
「もしかしたら、レイちゃんは寂しいんじゃないかなって思ったの」
「寂しい……?」
まあ、先ほどのレイの行動は、「寂しい」というバックストーリーがあれば全て辻褄は合う。
「それは予想か? それとも事実か?」
「まあ、予想にはなるけどね。レイちゃんの本心とかは解らないし。でも、「おとーちゃん」って単語を出すくらいには、寂しい気持ちになってるんじゃない?」
「……でも、こいつ父親のことを「憎ったらしい」って言ってたけどな」
「そこは……ほら、反抗期的な?」
「ほんとかよ……」
こいつ、たまにテキトーなこと言うからな……ほんとそういうとこだぞ、モテないところは。
「まあ、でも幸せそうに寝てるよ?」
ミライがレイの方向に目をやる。
それにつられて、俺もレイの方向を、限界まで首を後ろにしてみる。
そこには、ぐっすりと眠り、口を少し開けて幸せそうな寝息を立てているレイの姿があった。
「……まあ、たしかに幸せそうだな」
「でしょ~? この寝顔を見れただけでも宝物だよね~」
ミライが感慨深そうに空を見上げながら言う。
「……てか、お前いつからそんなレイに甘い感じになったんだ?」
「まあ、学校生き始めたときからかな。やっぱ青春をこの目で目の当たりにしたからさ。苦楽を共にした的なね☆」
そういいながら、顔にピースして決めポーズをとってくる。
こいついっつも元気だな……
「なるほどな、リアルでは青春できないから、せめてゲームでは青春しようって魂胆か」
「はぁ!? ちょっと聞き捨てならないんですけどぉ!! 誰のせいで青春できないと思ってるんですか!!」
「なんで俺のせいみたいになってんだ。お前が始めた物語だろ」
「くっ...…本当のことだから何も言えない……!!」
よし、勝ちました。
「ちょっと? なに勝ったみたいな顔してんの? いつ勝負はじまったっていうのよ」
「勝負ってのはな、ゴングが鳴らなくても起こるものなんだよ」
そういいながら、俺は走り出す。
「あ、ちょっと!? レイちゃん落としちゃだめだからね!! てか逃げるな!!」
「わかってるって! でも逃げるぜ!!」
俺たちはそんなことをしながら、買い物を済ませた。
そして、宿屋に戻り、レイを寝かしつけた後、ゲームを終了する。
「んじゃ、また明日」
「んじゃあね」
俺たちは、そのままログアウトし、色々した後に就寝した。
◇◇◇
キョート達が寝たのと同時刻。。
「それじゃあみんな! おつじゃきぃ〜」
少女……「天皇河 邪鬼子」は配信を閉じる。
そして、リアルの姿へと姿を変える。
その姿は、アバターの姿と、雰囲気や髪色こそ違えど、ほとんど同じであった。
「さて...…明日は休みで、明後日は配信……今日はもう遅いし...…」
少女は、朗らかに笑いながらつぶやく。
「明日も会えるんだ……さて...…しっかり"映え"ていこう☆」
少女は、大きなベッドに似つかわない小さい身体を起こし、壁を見る。
「目指せ! Nさん超え!」
そのような決意表明がその瞳の先にあった。
レイがヒロインなんやなって(血涙)
それはそうと次はしっかりと合流します。
多分、きっと、メイビー
定期
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