第八話 新たな風と特異点
私、鏡花は、フログリにログインする前に攻略サイトを見ていた。
「ふーん……聖戦士についてはくわしく書かれてないみたい……」
わかってることはNPCがなっていることがあるということと、光の攻撃を持っていること。
「光の攻撃……? そんなのあるんだ……」
このフログリにおいて、属性は大きく二つの分類に分けられる。
一つは、「属性魔法」として分けられているもの。
属性は、「火、水、土、風、木」からなる5元素と、
派生系の「毒、氷、岩、雷、空」からなる10属性である。
もちろん、ここに光属性なんていうものはない。
ではもう一方、「属性魔法としては区別されていないが明確に効果としてある属性」ではどうか。
今判明している属性……あー……長いので不区分属性、としよう。
その判明している属性は、「病気、呪い、陰、陽、聖」等がある。らしい。
攻略サイトに書いてるってことはそういうことなのだろう。
「つまり陽属性とか聖魔法? ってことになるのかな?」
わからないがそうなのかもしれない。
更に攻略サイトの奥地へと進んでみた。
「なになに……? 『他にも、公式の出した1stトレーラーには、意味深に映る黒いモヤなどがあり、これは陰属性を表してるのでは? と噂されているが、一部ではもう一つの属性魔法なのではないかとも噂されている。更にごく一部では、職業なのではないかとも議論されている。』ね……」
正直言うと私の欲しい情報ではなかったので後で読むことにしよう。
「さて、次は鏡洛魔法について……あるかな〜」
と、一通り目を通したが、そう言う記載はどこにもなかった。どころか、鏡洛魔法の「鏡」の字もない。
「あれー? てことはまだ未発見ってこと?」
まじか、発売一年で未発見なことあるんだ……
「それにしても、NPCなんて興味ないのか、それともまとめきれてないのか……」
NPCに関しての言及はほとんどなかった。
そこまで進んでないということなのだろうか?
モンスター図鑑も確認したが、NPC欄というのはなかった。
「一般モンスター、上級モンスター、シンボルモンスター、ユニークモンスター……ねぇ」
NPCはないかぁ……探すしかないか……
その時、私のケータイが鳴った。
「あ、メールだ。景兎からだね絶対」
内容は、「着いたから合流しようぜ」とのこと。
時間を見ると、夜の9時を回っていた。
「……はぁ……遅いねぇ……まったく……」
わたしはログインした。
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ーーーー
時は進み。
俺、キョートは、ここにいる鏡花……いや、ミライと共に依頼を受けた。
「魔職と戦士職とか相性バッチシじゃん! タンクよろぴく〜」
こいつ……俺が戦士職すること知ってただろうが……!
「誰がするか! 俺は回避に徹する!」
「回避タンクってものがあってな?」
「ぜってーしねぇ!」
そんなことを言いつつ、俺たちは依頼を受けることにした。幸いにもはじめたての冒険者用クエストは山のようにあるようで、すぐに依頼を受けることができた。
何度か依頼を達成した時だった。
「……一つ気になったけど、そのウサギの耳みたいなの何?」
「おんやぁ? ミライさんしらないんですかぁ?」
「ムキー! ムカつくなぁ! 早く教えなさいよ!」
「今かよ! しゃぁねぇなぁ……これは俺の種族兎人族が生まれつき持ってる耳。アクセとかじゃないし、ちゃんと斬られたらダメージも出る。」
「なるほど……感触はどんな感じ?」
「あんま人間と変わらないっていうか、正直言ってほぼ一緒。ただ、耳が長いと視覚的に邪魔になるかも」
俺は短めだけど。
「ほう……なるほどね〜」
「てかさ、そんなことよりさ」
「うん」
俺たちは今、絶賛ランニング中である。
この後ろにいるライオンみたいな動物と。
「今の状況をなんとかした方がいいんじゃないかなぁって!」
「お! そうだね!」
『ぐ"る"が"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"!!!』
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」
「誰だよ! あいつのしっぽ踏んづけたやつ!」
「まさかあんなところにしっぽがあるなんて思わないじゃない!! 罠でももう少しわかりやすい目印あるわよ!」
「おいおい! クソゲー脳が廃れてきてんじゃねぇかぁ!?」
「何その脳! わたしには元々ありませーん! てか、そんなのより! 本当にどうする!? もうスタミナ切れるわよ!?」
「俺はまだまだ走れるけどな!」
「うるさい! ……こうなったら……するしかないんじゃない……?」
「そうだな……」
俺たちは、同時に"立ち止まる"。そして、振り返って一言。
「「あのライオンをぶっ飛ばす!」」
依頼を達成しまくった今の俺たちのレベルは14と16。
ちなみに14が俺で16がミライだ。
「といっても、ミライ弱点知ってるのか?」
「知らないけど?」
「は!?」
「だから今"調べる"んだよ! キョート! がんばって!」
「はぁ!? 無茶言うなよ!」
『ぐ"る"が"ぁ"ぁ"ぁ"あ"!!!』
「おわっ!?」
「ちょっと!?」
「ふっ……不意打ちとは卑怯なり……」
「いやバリバリわかってたでしょ!」
「とりあえず倒せばいいんだよな? てことはよ……数打ちゃ倒せるってことだよな!!」
「うーん脳筋!」
いくぜ、〈兎脚〉!
ライオンの背後に回り込んで……そのままジャンプ!!
そして行くぜ新スキル!!
「〈兎垂蹴〉!!」
俺は大きく跳躍し、ライオンを捉える。
そして、そこに向かって蹴りをぶちかます。
「おるぁぁぁぁぁあ!!」
『ぐ"る"が"ぁ"ぁ"ぁ"あ"!!?』
よし! ダメージはあったみたいだな!
「キョート! 準備できた!」
「よし! ぶちかませ!!!」
「炎属性魔法……【フレア】!!」
ミライの放った炎の塊は見事ライオンに命中した。
すると、ライオンは悶え苦しんだ。
『ぐ"る"が"ぁ"ぁ"ぁ"あ"!!?』
「よし!」
「流石に一発じゃ倒せないか……レベル差大きいのかな……?」
「なら!!」
俺は懐から剣と盾を取り出す。ミアからもらった大切な武器だ。
「……行くぜ……!!」
剣に体重を乗せ俺は必殺の一撃を放つ。
「〈兎斬〉!!」
『ぐ"る"が"ぁ"ぁ"ぁ"あ"!!!!!』
ライオンはその場に倒れ伏した。
「ぃよーし! 討伐完了!」
「本当に死ぬかと思ったー」
「ふっ、まだまだだな」
「あのね、言っとくけど私魔職なのよ? AGL上げてるわけないでしょ」
「おいおい、それはやらない奴の言う台詞だぞ。お前ならちゃっかりAGLあげてるとかあるだろ。」
「さぁねー、でもまあ、倒せたなら結果オーライかな
!」
「おい! まだ話は終わってないぞ!」
あいつ……
そんな時、俺たちの目の前にある画面が表示された。
「ん?」
「お?」
〈未知なる物体接近中、ちゅう…………い…………〉
突然ノイズが走り、画面が割れる。
俺たちは当然戦闘体制になり、そのまま来る"何か"をじっと待っている。
次の瞬間、辺りが暗くなった。
「違うキョート! 上!」
「上か……! ……!?」
上を見上げた俺たちは絶句した。
その上には、太陽光を遮り、宙に浮く謎の大きな……ファンタジーに似つかわしくない"機械的な"身体をしたモンスターだった。
〈ユニークモンスター 『不眠の徘徊者』サマルテGTが出現しました。〉