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フロンティアグリーディア〜今日と今日から〜  作者: 無食子
虹の旅路よ、世界に響け
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新要素というものは楽しいと言うこと

入りを描くのがすごく苦手。

もう何もかもが苦手だな私

「ようやく進んだ……データは取れた……だけど、想定外……まさか……これでトガムちゃんを撃破するとは……」


部屋の片隅で、女は呟く。

鍵盤をカタカタと言わせ、その存在たちについて観察する。


「もっとデータが必要……」


そんな折、この部屋唯一の出口から、扉を叩く音が鳴る。


「空いてるわよ……」


そう女が言うと、扉を叩く音は止み、誰かが入ってくる。


「ようやく進捗が進んだか? 東雲」


「えぇ……ようやくね……そっちはどうかしら……天北くん(・・)……」


東雲と呼ばれた女は、少し嘲笑うかのような顔で天北と呼んだ女を見る。


「どこみてんだ!! あと、俺は男じゃねぇ!」


少し感情的になった後、冷静さを取り戻したかのようにして天北は言う。


「……コホン……まあ、こっちは順調だ。調整班も調整完了している……別に心配するようなバグは起きないさ」


「ええ……もちろん。私のゲームにバグなんて起こさせない……そんなのは当たり前でしょう?」


少し高圧的な言葉で喋る。それをさらりと受け流すかのように、話を進めていく。


「そうだな。そんなことよりも今日話に来たのはそれじゃない。シフィリス・トガムのことだ。まさかヤツが最初に倒されるとは……てっきり最初に倒されるのは……」


「もういいの。過ぎたことは……」


少し不満気に言う女に、めんどくさいなと思いながらも話す。


「そうだ。パッチの方はもう上げたのか?」


「もちろん。第一段階が完了したもの。既に配信は完了してる……」


「ならいいが……あ、そうだ。西谷が言ってたぞ。お前が派手にやらかさないかって心配だってな」


「私が……? そんなことはないわ……だってこれは……私のゲームですもの……」


そう言いながら、女は頷く。まるで自分のゲームは完璧かのように、そう思いながら。


◇◇◇


8月に入った頃の朝。

俺は夏休みを満喫していた。

いつも通り起き、朝ごはんを食べ……皿洗いして……ん? メール?


「ふぁぁ……こんな朝っぱらからなんだ……」


俺はメールを確認する。

メールは2件来ていた。

一件目のメールの宛先人のところには、『鏡花』と書かれていた。


「ん……? 鏡花から……?」


メールを確認する。


「景兎、ちょっと前にフログリに新しいパッチノートが入ったじゃん? 色々確認したいからフログリ内に来てくれない? 場所はクランドね」


あぁ、そういえばこの前アプデ入ったって言ってたな……確かレベル上げに明け暮れていた時……だったか。


「そういうことならいくしかねぇかぁ……」


もう一件のほうも確認する。

宛先人には、『お花狂い』と書かれていた。


「うわ、嫌な予感しかしねぇ...…」


俺は、そっとメールを開く。

ウイルスとか入ってねぇよな……?


「キョートくんさ、ちょっと提案したいことがあるから少しだけ話せない? ネイチャーくんもいるから、空いてる日教えてね~」


おい、なんで確定で話し合いすることになってんだ。こいつ……


「まあ、いっか。明日とか空いてる…っと」


別にいいけどな、最近一緒にゲームできてなかったし...…って思ったけど、3日前くらいにしてたわ...…

あの吸血鬼との戦闘……いまだに思い出すぜ……


洗い物が終わり、俺は少しスマホを見る。


「うわ、ネットニュースになってる。そんなインパクトあったのかよ」


画面には、『ついに討伐か? ユニークモンスター討伐アナウンスに迫る』と書かれたネット記事があった。それは、この前討伐したユニークモンスター「青の吸血鬼」シフィリス・トガムについてや、謎の討伐プレイヤーについての考察が書かれていた。


「ま、考察とかは全部間違ってるけどな~」


そんなふうに独り言をつぶやきながら、俺は攻略サイトを見る。


「お、ちゃんと追加されてる」


そこには、「青の吸血鬼」についての情報が記されていた。

まあそれはそうだろう。なんてったってここのサイトはクラン『探索者(シーカー)』が管理しているのだから。


あの日、鏡花たちが授業を受けている間、俺はマロンさんとヴェルノさんに会っていた。

その時、俺の「大罪の告白〈憂鬱編〉」と、もらっていたカメラを渡した。

それを見て興奮していたマロンさんを今でも思い出す。

少し挙動不審だったのが前まで会っていたのと違って面白かったな……


「さて、色々準備できたし、フログリにログインすっか……」


俺はスマホを置き、4DRデバイスを装着する。

さて..………行くか。


---Log In


俺は王都クランドにある宿で目を覚ます。

確か前は……クランドで休憩して次のところへ行こうって言ってたんだっけか……



俺は、鏡花……いや、ミライに会うために、宿を出て待ち合わせ場所へと行く。

待ち合わせ場所には、すでにミライが来ており、レイも一緒に居た。


「おまたせー、いやぁ、悪いなぁ待たせて」


「おっそい! もう何分待ったと思ってんの~?」


そんな経ってねぇだろ……それにメールしたのさっきじゃねぇか……


「そんな経ってないでしゅよ……?」


そうだレイ、言ってやれ!


「違う違うレイちゃん。こういうのは思いっきり押し付けないと」


「おい、なに教えようとしてんだ」


「えへへ」


はぁ……こいつも相変わらずだな……


「そんなことより、今日は何するんだ? なんか新要素試したいとか言ってたけど」


「そうそうそれそれ。実はさ、最近のパッチノートで色々変わってさ。それを色々みたいんだよね~」


更新か……やっぱゲームだもんな……


ミライ曰く、今回の更新で変わったのが結構あるらしい。

新マップ「新大陸」の追加、新イベントの追加、新ルール「指名手配」ルールと「懸賞金」ルールの追加、そしてアイテムの弱体化と強化、ジョブの調整……などなど、色々増えたみたいだ。


「あとね、正式に「光属性魔法」と「闇属性魔法」が公開されたんだよ! これは試すしかないでしょ!!」


光……闇……か。

そういえば、あの戦いで会ったNPCもそんな属性の魔法使いだったな……


「てことは、ついにあの本を使うってことか?」


「そゆこと! まあ、私にそんな適性はないだろうけど、あるだけで幅が広がるからね。やるしかなし!


まあ、それはそうだな。


「てことで、とりあえず広いところに行かない? ここでやって何か爆発とかしたら嫌だし」


「確かにそうだな。移動するか」


「でしゅ!」




ということで、俺たちは広い平原へと移動した。


「ここなら爆発とかしても大丈夫でしゅ!」


「そうだな。それに、俺たちも逃げやすい」


そういいながら、俺とレイはミライから距離を取る。


「ちょっと! もうちょっと近くに居てもいいんじゃない!?」


「いやだよ巻き込まれたくねぇし」


「同じくでしゅ!」


「あのねぇ...…」


まあ、こんなんでデスペナルティとか食らいたくねぇからな……


「……って! なんで本開いて近づいてくるんだ!」


「ふっふっふ……死なば諸共よぉ!!!」


「ばか! 早まるな!!」


「でしゅぅ!!?」


ボコボコ! ボカッ!


…………


………………


……………………


「そんな茶番はおいといて……」


ボロボロのミライが言う。


「あのなぁ……」


全然綺麗な俺とレイが哀れな目で見る。


「ていうかちょっと! 反撃するとかひどくない!?」


「「当たり前だろ(でしゅ)レイ(キョートしゃん)が死んだらどうするん(でしゅ!?)」」


「……なんか...…負けた気分……」


まあ間違いなく負けてはいるんだが...…


「それで? 魔法はゲットできたのか?」


「うん。それは完璧だよ」


そういうと、ミライの手から光と闇が出てくる。


「ならよかった。アイテムはどうなったんだ?」


「多分消えたみたい……かな? 手元にないから使い捨てアイテムだったんじゃないかなぁ……」


「そうか……光魔法っていうくらいだから速くなれる魔法とかあるし、欲しいと思ったが...…現実はそううまくはいかないか……」


そのようにつぶやきながら、今後について考える。


「先生は「新大陸に行け」って言ってたんだよね……」


「どこにあるんだ? 新大陸ってのは」


「どうやらねぇ、旧大陸の西端から行けるみたいなんだけど……」


「ここは大陸の?」


「東側」


「てことは?」


「歩かなくちゃいけない」


俺とミライは、同時に手を地面につけ、四つん這いになって倒れる。

はぁ……こっから歩きかぁ……そう思いながらも話を続ける。


「じゃあどうするよ。予定通り蟲地王国に行くか?」


「んだねぇ。まあ、そもそもゆっくり行くつもりだったし」


「まぁそうだな……レイ、行くか」


「でしゅ!」


俺たちは、蟲地王国へ向けて出発した。


◇◇◇


「それじゃあみんな! おつじゃきぃ〜」


少女は配信を閉じる。


「いやぁ、今日の朝活終わり! さってっと、フログリしよ~」


少女はフログリを起動する。


「いやぁ、いつか会ってみたいなぁ。話題のあの人たちに……」


少女はそう呟き、笑いながら、ゲームの世界へと飛び込む。

少し、天邪鬼な笑顔を浮かべて。

4DRデバイスについて

正式には「4次元空間現実化システム」という。

4次元空間を3次元空間に落とし込み、あたかも本当に動いている様に感じさせる技術。

これは、数年前に開発され、ゲーム業界にいち早く取り入れられた。

まあ、いうなればただのゲーム機です。

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