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フロンティアグリーディア〜今日と今日から〜  作者: 無食子
憂越は鬱りて、尚陽炎を見ず
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第六十三限 霧が晴れ、藍い空

憂鬱ノ章、終幕です。

「さて……報酬確認と洒落込もうじゃねぇか……!」


俺たちは勝った余韻が抜け切れないまま、報酬を確認する。


ユニークモンスターなんだ……さぞ良い報酬なんだろうなぁ!!


俺たちプレイヤーの5人は、報酬を確認するためにインベントリを確認する。


「あ、私のとこに全部入ってるかも」


ミライが言う。

なんであいつのとこに全部入ってんだよ……


全員がミライのところへと行く。



「これは……なんだろう……」


「なんていうか……文字だけじゃ何もわかんねぇな……」


そこには、『大罪の告白〈憂鬱編〉』と書かれたアイテム、『碧益(ルグブリス)の砂時計』というアイテム、『魔導大全〈光・闇〉』というアイテム、そして『憂鬱の鍵』というアイテムが入っていた。


「うーん……プレイ歴1年弱の見目麗しいファイアワークスお姉さんも、こんなアイテムは見たことないよ」


なんか言い方うざったいな……

まあでも、ファイアワークスもわからないのか……

どんなアイテムだろうか……


「とりあえず、出してみます?」


アグリさんが言う。

まあ確かに、出してみりゃわかるもんだしな……


ということで、とりあえず全部出してみた。

見たところ、『大罪の告白〈憂鬱編〉』と書かれていたアイテムは藍色の本のようなものであった。

ただそれだけのように感じるし、特に効果についての記載がない。

本の中身を読んでみるのは、また後でするか……


碧益(ルグブリス)の砂時計』と書かれていたアイテムは本当に砂時計のようなアイテムであった。

ただの砂時計だが、大きさは小さく、そして、砂が落ちてこない。

説明文にはこのように書いている。


「このアイテムは、「グランドクエスト」が第三段階になるまで効果を発揮しない。

FT

時が来るまで動くことはない。憂鬱な時の流れに沿って……」


……随分と意味深だな……


そして、『魔導大全〈光・闇〉』というアイテムは、説明文にはこのように書いている。


「光魔法もしくは闇魔法のどちらかを、適正やレベルに関係なく覚えることができる。

ただし、使えるかどうかはプレイヤーのレベルによって変わる。

FT

淡い青色の魔導書。その昔光と闇の魔法を使う大魔法使いによって著された。チスイと言う魔法使いは、この力で魔導学府に平和を築き上げたという。」


ご都合よく2冊あるな……選択式の意味ないだろ……


最後に、『憂鬱の鍵』というアイテムについて……


「とある枷を力へと変換するための鍵。

鍵を差し込み回すことで、外れる代わりに自身に「神罪:憂鬱」を付与する。

FT

罪の枷を解き放つのは、同じく罪の鍵である。

憂鬱を司りし鍵は、枷を持つものに爽快を剥奪する。」


これは……なんだ……?


「これで全部だね……さて……どうする?」


ということで、報酬を分ける時だ。

『大罪の告白〈憂鬱編〉』は全員分ある。

『魔導大全〈光・闇〉』に関しては2つある。

そして、魔法を使えるのがミライしかいないから、ミライに渡すことになった。


議題に上がるのはこれ……


碧益(ルグブリス)の砂時計』と『憂鬱の鍵』、この二つだ。


「どうするよ、誰が欲しい?」


「うーん……私は良いかなぁ〜、そこまで追い求めてるわけじゃないし」


「俺もパス。というか、俺もアイテムもらってるからな」


ネイチャーが言う。


「は? お前ももらってんの?」


「本とかはないけど、なんか耳飾りをもらった」


「はぁ? なんでお前だけ……」


その時、視界に槍を回収したファイアワークスが映る。


「おい! ファイアワークス! お前もなんかもらってんじゃないのかぁ!? あぁ"ん?」


「いやぁ! 悪いねぇ! 私だけ武器もらっちゃってさぁ!!」


「こいつ……!!」


その後ろに居たアグリさんに目線がいく。


「アグリさん……その眼鏡……」


「あ……キョートさん……! 前に見えないところ見えるって言ってた虫眼鏡がモノクルになりまして……報酬として……」


「な……なんだと……」


俺は唖然とした。

吸血鬼との戦いよりも、ファイアワークスと出会った時よりも、何よりも唖然とした。


「なんで……なんで俺だけ!! 特殊アイテムもらってねぇんだよぉ!!!!!」


悲しみと憂鬱が込み上げてきた。


…………


………………


……………………


「結局、俺にはなんにも特殊報酬はなしか……トホホ……」


「まあまあ良いじゃん、私の砂時計あげてるんからさ!」


「まあ……もらってるけどよ……結構クるぜ……」


あの後、砂時計を俺が持つこととなり、解散ということになった。

8時から学校が始業すると言うこともあり、皆急いで帰って行った。

後に残ったのは、俺とミライ、レイ、そして、NPCのアルスとネストだけだった。


あの3人が離れてすぐ、ネストが目覚めた。


「あれ……あいつは……っ!!」


目覚めたネストに、アルスが抱きつく。


「良かった……ネスト……!」


「アルス……は、離れろ……」


ちょっと締め付けが強いみたいだが、微笑ましい光景だ。


「そういえば、お前ら二人は最後の授業日なんだろ?」


俺は、ミライとレイに問いかける。


「うん……アルト先生がいないから、あるのかはわかんないけど」


「最後の授業、頑張るでしゅ!」


「おう、終わったら連絡してくれ」


「わかったよ〜」


「でしゅ!」


ここで、夜明けまで続いた吸血鬼戦は、終わりを告げた。


さて……次はどうするか……


◇◇◇


ミライとレイちゃん、私たち二人は、最後の授業を受けるために教室へと向かった。

正直な話、もう学校も終わりかと思うと寂しくなる。


「レイちゃんは、これからどうするの?」


レイちゃんはあくまでキョートについて来ている。

私はたまたま同じ場所にいたパーティーメンバーってだけだ。


「もちろん! キョートさんと冒険がしたいでしゅ!!」


「……やっぱそうだよね」


「でしゅ?」


少し期待を持っていた。

もしかしたら心変わりして私と冒険に出たいとか言うかも? とか、ちょっと悪いななんて思っていた。

まあ、そう上手くはいかないか……


「さて、そろそろ着くよ〜」


「で、でしゅ!」


私とレイちゃんは授業をずっと受けていた部屋へと来た。

が、そこに人影などはなかった。

アルト先生は死んだのだ。

さっき、あの中庭で。

そう思うと、込み上げてくるものがある。


疑っていたとはいえ、私はアルト先生に、少なからず愛着というか、信頼というか……安心していたのかもしれない……


教室の空気は、酷く憂鬱であり、私たちの心を写しているのかと思うくらいだ。


そこへ、一つの足音が聞こえる。

そして、扉が開かれる。


「話には聞きましたよ。ミライさん、レイさん」


「あなたは……学長先生……」


その音の正体は、学長先生であった。


「私共教職員も、今朝知りました。そして、少し前の行動の違和感に合点がいきました。」


「違和感……?」


私は疑問に思った。

何か見落としていただろうか……疲れているのか、頭は回らない。


「あなた達の持つ黒いカードのことです」


「黒い……カード……」


あ、そうじゃん! まだ七不思議は残ってるじゃん!!

私は話の話題である黒いカードを取り出した。


「これのことですか……?」


「そうです。そのカードには、辞職する人にのみ配られるものです。辞職する代わりに、あらゆる授業への参加資格を持ち、魔導学府のあらゆる場所で優遇される特別なカードなのです」


「辞職の……カード……」


知らなかった……教わりもしなかった……

そんな意味があったとは……


「そして、そのカードは、他人に渡すことで、「あなたに全てを託します。」と表明する……そんなカードになっています」


「……!?」


「あなた達へ、アルト先生から手紙を預かっていましてね……その時はなぜそのようなことを言うのか疑問に思っていたのですが、こうなることを予見していたとは……」


「手紙……でしゅ?」


「はい、そうです。これが手紙です。お渡しします」


私たちは、学長から手紙を渡される。

そして、そのまま読む。


「これは……先生……」


不思議と何かが込み上げてきた。

ゲームの世界で、しかもたった14日間しか居なかった教室で、14日も会っていない先生の手紙を読んだ私の目からは、汗が止まらない。

止められない。


「ミライさん、レイさん

この手紙が読まれていると言うことは、私はもういないのでしょう。改めまして、短期間授業コース卒業、おめでとうございます。

あなた達へ言いたいことはたくさんありますが、全てその本に書き連ねておきます。お二人が爽快に生き、常に幸福であることを祈っておきます。

担任 アルト・ブルーム」


そして、読み終わると同時に、黒いカードが形を変えた。

それは本のようなものへとなり、表紙にはタイトルが映し出される。


タイトルは「ウツギさんの袖の中」、その10巻目であった。


「ウツギさんの袖の中には、いつのまにか蝙蝠がいたよ。すやすやと、気持ちよさそうだよ。」


……そうなんですね……先生……


〈Voice:『ユニーククエスト:七つの不思議探検隊』をクリアしました。〉


私達は、学長先生から卒業証書をもらい、この教室を出る。


「私たちはいつでもあなた達を歓迎します」


「ありがとうございます。またいつか、ここにきます」


「でしゅ!」


「では……お気をつけて……」


そう言われ、見送られる。

私たちは学校の門の前まで来た。

門の前にはキョートが居て、私たちのことを待っていた。


「おい! ミライ!」


突然、私を呼ぶ声が後ろから聞こえてきた。


「お前……今日でお別れだったよな」


そこにいたのは、ネストくんとアルスだった。


「ネストくん……うん、そうだね」


「ネストでいい」


「え?」


「お前とはもう……友達だろ……」


ネストくんは照れくさそうに言う。


「ネストくん……」


「俺は、あの戦いで何も出来なかった。それどころか、吸血鬼に身体を使われる始末だった」


ネストくんは、拳を突き出して言う。


「だからな、俺も、アルスも、もっと強くなってお前達の元へと行ってやる。お前に相応しい男になって追いかけてやる。だからな……元気で居ろよ」


「ネストくん……プロポーズみたいなこと言うね」


「んな!? な、な、何がプロポーズだ!! ただの決意表明だろうが!!」


ネストくんが挙動不審になっている。

最初に会った時みたいになってるな……


アルスさんが少しむくれている。

お? 嫉妬かな?


「うん。待ってるよ〜。私たちも歩みを止めないけどね。ネスト」


ネストは、頭を振り、何かを払ったようになった後、手を出しながら言う。


「あぁ、元気でな」


「うん、そっちこそ」


私達は、固い握手を交わした。


「ミライさん、レイさん。どうかお元気で」


「うん! またね〜!」


「バイバイでしゅ〜!!」


私たちは、お互いが見えなくなるまで手を振った。

キョートは何も見ずに、ただ真っ直ぐと歩いているだけだった。


「キョートも手を振れば良いのに」


「何言ってんだ。俺はほぼ部外者だろ。それに、俺が関わるようなものでもないからな」


「まあ確かに……」


思えば、長く短い学校生活であった。

『フロンティア・グリーディア』……このゲームは本当に……


キョートが突然話しかけてくる。


「お前、楽しそうだな」


私は答える。


「そう見える?」


その瞳は眩しく、その口は緩み、絶えない笑顔をキョートに魅せていた。


青春とは、かくも爽快なのだ……

私は改めてそう思う。

第一章完遂!!

いやぁ楽しい!!

ここまで見てくれた方、応援してくれている方、本当にありがとうございます!!

次は少し毛色が変わる話になる予定です。

多分短くなる予定です!

これからも、「フロンティア・グリーディア〜今日と今日から〜」をよろしくお願いします!!

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