第六十二限 黒藍の吸血鬼、その22
ちょっと長めかも
〈『戦月兎』武器の隠し効果が解放されました。〉
戦月兎の隠し効果……か……
俺は、すぐさま詳細を確認する。
『戦月兎・直剣』
鍛え上げられた業物の一振り
銘にはネロ・スミスの名が刻まれている。
兎人 能力を使用する際、補正がかかる。
[隠し効果]
ユニークモンスターのあらゆる攻撃に対して《カウンター》をすることができ、その際、AGL及びTECに補正がかかる。
特殊効果〈合体〉
この武器と『戦月兎・円盾』を同時に装備している時、宣言可能。
『戦月兎・円盾』
鍛え上げられた業物の一帖
銘にはネロ・スミスの名が刻まれている。
兎人 能力を使用する際、補正がかかる。
[隠し効果]
ユニークモンスターのあらゆる防御に対して《防御崩し》をすることができ、その際、DEF及びLUKに補正がかかる。
特殊効果〈合体〉
この武器と『戦月兎・直剣』を同時に装備している時、宣言可能。
そして、武器の横にこのような文字が表示されていた。
『合体可能』と。
俺は少し都合が良すぎると思うと同時に、ちょうど良いとも思った。
「おいおいネロ……特大サプライズってかぁ……?」
俺は独り言を呟く。
「よそ見ですか……憂鬱ですねぇ……!!」
吸血鬼は俺に向かって突進を仕掛ける。
「宝玉爆発……STR…TEC…VIT……〈茎命撃〉」
吸血鬼の右腹を貫くかのように、銀の槍が突き刺さる。その瞬間、吸血鬼は芯からの痛みを受けたかのように感じたのか、動きが止まる。
「なっ……これは……」
「ビンゴ!! あそこにあの例の紙があるってのは聞いてたよ〜?」
吸血鬼は上を見上げる。
「憂鬱だねぇ? その気持ち、私も同じだったさ……」
東の屋根に、槍を放った元凶が居た。
「やぁっと使ってあげれたよ……ナイトブレイカー……」
「……実に……憂鬱です……ね……!!」
吸血鬼が魔法を放とうとしていた。
ただ、吸血鬼の動きが、明らかに鈍くなっていた。
「【ブラッドショック】!!」
「そんなに私が憎い……? でも、私の役目は終わったから……ごめんね〜?」
そう言うと、ファイアワークスは吸血鬼の攻撃に直撃した。
「後は頼んだよ……? キョートくん……!!」
ファイアワークスが脱落した……がまあ祈符があるだろう……気にすることでもない。
よし決めた……こいつを使う……
俺は『戦月兎』を持ち、構える。
「さぁ……行くぜ……〈合体〉!!」
そう宣言すると、『戦月兎・直剣』と『戦月兎・円盾』は、変形・合体した。
その姿は、大剣のような形をしており、名前も変化していた。
まじか……大剣とかよく持てるな俺……まさかそのための必要ステータスか……?
『戦月兎』シリーズが合体した姿……
その名を『戦月兎・兎十大剣』!!
その追加効果は…… 奥義〈鋭兎角撃〉の使用可能……何かはわかんねぇ……が……
これで準備完了だ……!
「これが私に仇なす者の本気ですか……良いでしょう……であれば……私の最高に憂鬱な技で……授業を終わらせましょう……」
「教えてやるよ……俺の爽快な終幕をな……!!」
俺は全身に力を込める。
吸血鬼……シフィリス・トガムは魔法を放とうとしているのか、構えを取る。
行くぜ……
幾分かの静寂が、辺りを包み込む。
俺と吸血鬼……そして吸血鬼を挟んで俺の反対側にはミライとアルス……
当たれば死ぬ。そして、外せばミライ達が死ぬ……
どっちに転んでも負け……ここまでやってきたことが全部水の泡になるかもしれない極限状態ってわけだ……
やってやろうじゃねぇか……
行くぜ……〈ラックトップブースト〉……〈ラストスパート〉……!!
〈ラックトップブースト〉
自身のLUKを参照し、攻撃力と防御力を増強させるスキル。
〈ラストスパート〉
自分のHP、MPがどちらも2割を切っていた場合に使用可能。
攻撃に大幅な補正が乗る。
今まで俺は体力が少ないことが致命的であった。
だが、その体力の少なさが……今では俺の味方となる……!!
MPを減らしまくって2割まで行った……全てはこの時のため……!!
さらに……〈兎脚〉!! 〈会心の一撃〉!!!
〈会心の一撃〉
次の攻撃がどの部位にヒットしたとしても会心の一撃、つまりクリティカルにできるスキル。
実際にクリティカルするかどうかは不確かだが、そんなのは俺のPS次第!!
俺の全てのバフスキルを上乗せし、特大火力の準備が整った。
「全てをこの一撃に込める……!!」
「憂鬱ならざる者に停滞の安寧を……【シャドウボール】!」
「行くぜ…… 兎人族流……奥義……〈鋭兎角撃〉!!」
俺は、『戦月兎・兎十大剣』を構え、奴の【シャドウボール】に真正面からぶつけ合う。
「くっ……キツすぎだろ……なんだこれ……」
呆れるほどバフを積んだはずの俺の一撃を受けても尚、奴の【シャドウボール】は壊れる素振りを見せない。
「憂鬱ですねぇ……私がここまで本気になるとは……さぁ……爽快に死んでください!!」
「そうかい……だが……お前の相手は俺だけじゃねぇってことを忘れんなよ……!!」
俺がそう言うのと同時に、吸血鬼は後ろから衝撃を加えられる。
「私から……あなたへ……」
「……ぐっ……!?」
「光のある朝を……【サンシャイン】!!」
アルスが、吸血鬼へと光を放つ。
その威力は、吸血鬼の手を狂わせるのに十分なものであった。
「キョートさん! でしゅぅぅぅぅぅう!!!」
何かが投げつけられる。
それは、俺の身体にぶつかると、パリンという音を立てて壊れる。
そして、画面が表示される。
「……! こいつは……!!」
それは、宝玉を割った時の画面だった。
俺の目の前で今、最大級にアツいガチャが開かれていた。
一つ目……STR!
二つ目……VIT!!
そして三つ目……LUK!!!
これは来たぜ……近年稀に見る……
「超大当たりだ……!!」
俺はだんだんと【シャドウボール】を押し返す。
その勢いに押されたのか、徐々に吸血鬼が後退する。
「くっ……憂鬱ですねぇ……これほどの力がどこから……!!」
「教えてやるよ……シフィリス・トガム……憂鬱に塗れたお前と違って……青春ってのは……爽快なんだよ!!!」
「「「いけぇ!!!!」」」
「でしゅぅ!!!」
「キョート……やれぇ!!!!!」
「キョートさん……私も……【サンシャイン】!!」
意思という名の剣は、ここで完全に交差した。
「く……くそがぁああぁあぁああ!!!!」
俺は奴の心臓を貫いた。
…………
………………
……………………
「憂鬱……ですねぇ……」
奴は倒れ、言う。
「ですが……良いものを……見してもらいました……」
消えかかる蝙蝠に、果たして人は言葉を発せるだろうか。
「主様……いえ……アルスさん……申し訳ないことをしましたね……」
その声は、吸血鬼、シフィリス・トガムではなかった。
「アルト先生……!!」
「ミライさん……レイさん……あなた達は素晴らしいですよ……あなたも……あなたの仲間も……」
「でしゅ……」
「これにて……授業を終わります……お二人とも……大変優秀な生徒でしたよ……」
奴は、身体の半分……下半身が丸々消えていた。
「最後に……罪を追い求めるあなた達へ……新大陸へと行きなさい……」
「新大陸……?」
そう言うと、急速に消えていき、やがて姿形は跡形もなく消えていった。
程なくして、全員の画面に【儀式終了】という文字が映し出される。
……どうにも憂鬱というか……もやもやする終わり方だったな……
〈Voice:『真・ユニーククエスト:憂越は鬱りて、尚陽炎を見ず』をクリアしました。〉
〈Voice:ユニークモンスター『黒藍の吸血鬼』シフィリス・トガムを討伐しました。〉
〈Voice:レベルが上昇しました。〉
〈Voice:ドロップアイテムを獲得しました〉
〈Voice:称号アチーブメント獲得 奥義会得〉
〈Voice:称号アチーブメント獲得 武具解放〉
〈Voice:称号アチーブメント獲得 偶発的スロッター〉
〈Voice:称号アチーブメント獲得 死からの復活者〉
〈Voice:称号アチーブメント獲得 憂鬱と爽快〉
〈Voice:称号アチーブメント獲得 永遠に眠る者〉
他12件
怒涛の通知が飛んでくる。
まあ、ユニークモンスターを倒したとなればそうなるか……
「……よし、報酬確認だな!」
「お前な……」
ネイチャーがツッコミを入れたその時……
カーン!カーン!カーン!カーン!
「「「「「!!!?」」」」」
突如、大きなベルの音が、俺たちの耳に爆音で流れ込む。
どうやら、NPC達には聞こえていないようだった。
《フロンティア・グリーディアをお遊びの全てのプレイヤーの皆様にご通達です。
ただ今の時刻より、ユニークモンスター『青の吸血鬼』シフィリス・トガム を討伐したことを記録しました。
討伐プレイヤーは、ファイアワークス、ミライ、キョート、ネイチャー、アグリの5名です。
また、これにより、グランドクエスト「フロンティア・グリーディア」が進行いたしました。》
「うわ……うるさ……」
この時、俺はまだ知らなかった。
このアナウンスが世界に混沌とどよめきを与えていることを……
吸血鬼戦堂々終戦!!
初期構想を全て書き切れた……わけではない!!
まだ書きたいことがたくさんある!!
これからも「フロンティアグリーディア〜今日と今日から〜」をよろしくお願いします!
ちなみに、この章ももう少しだけ続きます




