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フロンティアグリーディア〜今日と今日から〜  作者: 無食子
憂越は鬱りて、尚陽炎を見ず
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第五十二限 黒藍の吸血鬼、その12

戦闘描写上手くなりたい侍

俺たちは、吸血鬼を中庭へと叩きつけた。

私たちは、アルスちゃんを吸血鬼から解放した。


((さて……どう出る……?))


いつの間にか拘束されていたはずの翼は、拘束から脱し、その羽を大きく広げていた。

そして、奴の容貌も少し変化する。

人の姿に取ってつけただけの翼がついていた擬態状態のような姿が、吸血鬼のイメージにぴったりな黒の襟長コートを羽織り、さらに髪の毛が逆立っていた。


ここからが本番ってわけだ……


「先にしておきます! 〈鑑識眼〉!」


アグリさんのスキルか!

便利スキルってのは聞いてたがめっちゃ有能なスキルだ。


「弱点の変化なし! HPが4割ほど削れています!」


「オーケーだ……なら、このまま削り切るぞ!」


その鼓舞に返事はなく……ただ、その行動のみがその鼓舞に答えた。


全員が瞬時に展開した。集中砲火でまとめて削られるのを阻止するためだ。

吸血鬼は睨み、俺たちの行動を待つかのように動く。

俺たちが展開し終えると同時に、吸血鬼は動き出す。

その標的はネイチャーにあった。


「チッ、やっぱ後方から狙ってくるか……!!」


後方狙撃を真っ先に狙うのは定石……ユニークモンスターともなると流石に考えて動くか……!


「だが……そうはいかねぇ……」


(この攻撃は最初に見せた突進攻撃……速さ的にここで避けるのが正解……なら!!)


「実践できてこそのプロゲーマーだろ!!」


吸血鬼が突進のモーションを繰り出すと共に、ネイチャーも姿勢を変える。立ち状態から中腰へと変化させたネイチャーは、そのまま吸血鬼の下になるようにブリッジをする。ネイチャーは当たるギリギリをスレスレで避けた。


「よっしゃ避けたぜぇ!!!」


「チッ……!」


ネイチャーは、そのままぐるりと回転し、吸血鬼の方へと身体を向ける。

勢い余って通り過ぎた吸血鬼の身体に狙いを定め……


「〈狙撃〉!!!」


その一撃は確かに当たる。

ただ、急な方向転換からの狙撃だ。急所へと当たることはなかった。


「チッ……やはり厄介……」


狙撃が決まると同時に駆け出したのは、俺とファイアワークス、そしてレイだ。


「悪いね吸血鬼くん、倒されてねっ!」


「行くでしゅ!! 〈怒棍〉!!」


〈兎脚〉(ラビットフィート)!!」


ファイアワークスの槍が吸血鬼の翼を貫く。

しかし、その傷はすぐに修復され始める。


「自己回復持ち……!?」


レイの攻撃は足へと命中した。

確かに体勢は崩れ、吸血鬼はよろめく。


「よしでしゅ!!」


「チッ……目障りですね……! 【ダークバウト】!!」


吸血鬼はレイに対し魔法を放つ。

だが、その攻撃はレイには届かない。


「まっすぐにやっても当たらないでしゅ!!」


焦ってるのか、奴の攻撃が単調になってきている。

おいおい、相当ピンチのようだな……このまま押し切る!!


〈兎斬〉(ラビットスラッシュ)!!」


斬撃が吸血鬼の胴へと目掛けて飛ぶ。


「なっ……これしき……!」


「そうはさせないよ? 〈蔓の鞭〉(ヴァインチェイン)!!」


「避けさせない!! 【プラントチューン】!!」


根と茎、二つの障害が奴の翼を拘束する。

その力は、吸血鬼の奴が振り払えないほど強大な力のようだ。


「な……なに……!?」


その斬撃は止まることなどなく……吸血鬼へと命中する。

その衝撃で、吸血鬼は吹き飛ばされ、翼が千切れる。

そのまま地面へと転がり落ちる。


「まさか……ここまでとは……」


「まだ終わってない……」


「なに……!?」


「お前は……俺が仕留める……!」


ネストが前へと出る。そして、満身創痍で動けない吸血鬼に対して杖を翳す。


「ここで仕留める……【ブラックスケア】!!」


「やめ……ろ……!!!」


青き痛みが吸血鬼を襲う。

その痛みは、耐え難い苦痛のような痛みであり……

吸血鬼は、生き絶えるかのように、その場へと倒れ伏す。


「…………よし……!」


ネストが震える。

その震えは、怯えからではない。感極まったような震えであった。


◇◇◇

「……勝ったぞ……勝ったんだ!!!」


ネストくんが歓喜する。


「まじか!! 勝ったのか!! ユニークモンスターって案外大したことないんだな!!」


ネイチャーさんは尊大になる。


「みんなの勝利でしゅ!!」


レイちゃんは分かち合う。


「まさか……ここまであっけなかったとは……とりあえず銀の武器で刺してラストアタックもらっとこ」


ファイアワークスさんは小賢しい。


「おい! お前ずりぃなほんと!!」


「いいじゃん、そういうのって大事じゃん?」


キョートの友達のお二人はわちゃわちゃしている。


「そんなことしなくても! HPは0ですから!」


アグリさんの目が、このモンスターの戦闘不能を指し示す。


「すまない、誰かアルスを回復してやれないか……!」


「わかったでしゅ!」


ネストくんが、アルスさんを抱えながら、レイちゃんが回復をしている。


みんなが、わいわいしている。


だが、何か引っ掛かる。

何故、こんなにもあっけない……?

そもそも、ユニークモンスターとはなに……?


(未だ倒した者は居ないとされるモンスター達。格的にはシンボルモンスターの上に位置していると言われる。)


ユニークモンスターってのは、倒されたことがないほど強い存在のはず……いや、もしかしたら隠密行動が上手だとか、発生条件が無茶苦茶難しいとか……そういうのがあるのかもしれない……


ただ、私たちはユニークモンスターにあったことがある……サマルテGT……あいつもユニークモンスターだ……あいつは徘徊型のユニークモンスターだと言われている……レベル50そこらの冒険者にやられるくらいなら、今はもう倒されているはずだ。何せ1年は経過している神ゲーだ……レベルカンスト勢はごまんといる。その人たちが束になれば勝てるというのが本当なら、とっくの昔にサマルテGTは撃破されている……だがそうはなっていない……


キョートも同じことを考えているに違いない……

だとしたらこれは……


◇◇◇

何かが引っ掛かる……

何故ここまで弱い……?

いや、他のモンスターに比べたら、この吸血鬼は比較的強い。だが、それは"比べれる程度"の強さなのだ。


比べれる程の強さの敵がユニークモンスター……?

確かにユニークモンスターに一度も会ったことがないやつはそういうかもしれない……

だが……俺とミライは違う……サマルテGTだ……

あいつは桁違いの強さだった。

まだ駆け出しとはいえ、勝てるビジョンが思い浮かばなかった……

だがこいつは違う……

何が違う……? 強さ……? ユニークモンスターにもムラがある……?

思い返せ……何か不自然なことは……おかしいところは……


俺は思考を巡らせる。

過去を遡る。

この違和感の正体は……?


(〈ユニークモンスター 『不眠の徘徊者』サマルテGTが出現しました。〉)


まて……! そういえば……アナウンスを聞いていない……! ユニークモンスターとシンボルモンスターには出現時にアナウンスされる……

それは俺がプレイしてから現在まで崩れることのなかった不変の原則だ……

だが今回の戦闘……一度もそのようなアナウンスはなかった……"ただの一度も"だ……


だとしたら……考えられるのは一つ……これは……


◇◇◇


((罠だ……!))


ネストくんの方から物音がする。

アルスちゃんが目を覚ましたようだ。


「あれ……ここは……あれ……ネスト……?」


「良かった……目を覚ましたみたいだな……」


ネストくんはアルスちゃんを抱きしめる。


「ちょっとネスト……やめてよ……」


頬を赤らめるアルスさん。


「ーーーーー」


「え? 急にどうしたのよ……ネスト」


アルスさんが何かを話した。ネストくんとの会話なのだろうか……


その時、一縷の闇が、線となって飛ぶ。

その軌道上に居たのは、ネストくんであった。


「危ない!!!」


私の叫びは、届く前に尽き果てる。


「……かはっ……!!」


ネストくんは斃れ伏せる。


「……へっ……? ネスト……? ネスト!?」


「……ネストさん!?」


アルスさんとレイちゃんが叫ぶ。

その叫びに全員が警戒をする…………


「おやおや……憂鬱ですねぇ……私の眷属が斃されましたか……これは困りました……」


足音が聞こえる。まるで立派な革靴を履いているかのようなその足音は、静かな中庭に大きく響き渡る。


「おや……当たったのはあなたでしたか……ネストくん……憂鬱ですよねぇ、まさか当たるとは思ってもなかったんですから……」


その顔は、以前にも見たことがあった。

あの時襲ってきた吸血鬼……それそのものであった。


「ですが……私も憂鬱なんですよ……最愛にして愛しい我が主を取られたのですから……ですから……おあいこですね……?」


私たちは今一度、その現実を直視してしまう。


「さぁ……憂鬱な私を……爽快な気持ちにさせてくださいね……ふふふっ…………」


〈ユニークモンスター 『青の吸血鬼』シフィリス・トガムが出現しました。〉


その時、()達は、背筋が凍えるかのような恐怖を感じた。

ようやく登場です。シフィリス・トガムさん。

名前を前に出したことがありますね。

そんな彼ですが、実は暗い過去を持っているとかいないとか……

その事実は実は読者は知っているのかも……?

さぁ、どうなんでしょうね

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