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フロンティアグリーディア〜今日と今日から〜  作者: 無食子
憂越は鬱りて、尚陽炎を見ず
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第四十三限 黒藍の吸血鬼、その3

「おお〜たった数日でここまで人ってレベル上げれるんだね〜」


俺のレベルとネイチャーのレベルを見てファイアワークスが感嘆する。


「お前らやっぱ悪魔かなんかだよ。なんでモンスターの群れに飛び込ませるんだよ!! 俺まだ始めたてだぞ!?」


「まあまあネイチャー、そうかっかするなって。ネイチャーも大幅にレベル上がったじゃねぇか! 結果オーライ!」


「そうそう! それにこれはネイチャー君のためでもあるんだよ〜? レベル上げという厳しい試練を早めに終わらせるためのねぇ〜?」


「この短縮具合はコンビニ弁当とかカップ麺みたいな感覚だな!」


「お前ら……後で覚えとけよ……!」


どうせ別ゲーでボコボコにするとかだろう。それくらいなら受けてやるさ。ま、俺が勝つけどな!


俺たち三人はレベル上げの為に魔導学府の外にある森、「スルバの森」というところへ来ていた。

適正レベルは50以上。もちろん俺たちはそこまでのレベルに到達していなかったが、持ち前のプレイヤースキルでどうにか経験値を稼いでいた。


今のレベルは……52か……中々の成長具合だな……

まあネイチャーの上がり幅のがでかいが……

奴の今のレベルは50。出会った時はレベル20近くとか言ってなかったか? 上がり幅やばくね?


「さて、そろそろ戻ろうか。明日もレベル上げだからね〜」


「なぁキョート……いい加減レベル上げやめたい……もっと冒険とかさせてくれよ……」


「柄でもないな。どうしたネイチャー。お前自分の成長実感するの好きなタイプの変態だろ?」


「あのなぁ……俺息抜きでしてんだよ! だからテキトーにこの世界を冒険したいわけ!! わかるか!?」


「あーはいはいはい、わかったわかった。この持ちかけられた話終わったらちゃーんと解放してあげるから」


「ほんとか?」


「もちろんだよ〜、私が嘘ついたことあった? 今まで」


俺とネイチャーは顔を見合わせる。


「……何度もあったような……」


「あいつはペテン師だぞ……?」


「そこ! こそこそしない!」


俺たちは森を抜ける為に道を引き返していた。

すると、大きな地鳴りが響く。


「……なぁ、これこっちに突っ込んできてると思うか?」


「……可能性は8割ほどかな」


「……じゃあさ、勝負しないか? ルールは簡単、この近づいてくる魔物を先に倒した方の勝ち。勝者が他の二人に一つ命令を下せる。簡単だろ?」


「いいねぇ、乗った。やっぱ戦闘が一番好きだわ」


「君、さっきと言ってること違くない? さっきはダラダラしたいとか言ってたくせに」


「そんなの覚えてないな!!」


俺たちが振り向くと、そこには猪のような見た目をしたモンスターがこちらへ向かって直進……いや、突撃してくる様子があった。


「おやおや、ビンゴだね」


「どこがビンゴだ。2割外してるやつが……」


「2割は実質ないようなもんでしょ。それより……」


「勝負開始だ!!」


〈Voice:シンボルモンスター クラッシュボアと遭遇しました。〉


開戦の狼煙を上げたのは、俺だった。


「お先に行くぜ! 〈兎脚〉(ラビットフィート)!!」


俺はその脚力で、こちらへ突進してくる猪へと迫る。


「あっ! っちょ! まてよ!」


「なら私も……! 〈蔦い縄〉(ヴァインウィップ)!!」


「お前らだけ移動系スキルあってずりぃぞ!」


「はっはー! 持ってない方が悪いんだよ!!」


迫る猪に急接近するは、俺とファイアワークス。

猪はこちらに気づいたのか、標的を俺へと変えた。


「えっ? ち、ちょっ!」


そのあまりにも急激なブレーキに、土埃が舞う。

それを受けたのか、俺の視界からファイアワークスの姿が消える。


「お、そうこなくっちゃなぁ!!」


俺は『戦月兎(ミアテット)・直剣』構えを取る。

敵がこちらへと迫る……よし、行くぞ!


〈兎跳躍〉(ラビットスプリング)!」


俺は跳躍し、猪の真上まで跳ぶ。

猪は気づいたのか、そのまま直進してくる。

ただ、若干スピードが遅くなっているように感じた……


おいおい……着地狩り狙う気かぁ?

なら……


「さらに! 〈兎跳躍〉(ラビットスプリング)!!」


俺は更に跳躍を続ける。

その行動は猪を釘付けにするのに十分だった。


……いいね、かかった……!!


「行くぜ……! 〈兎跳躍〉(ラビットスプリング)!!!」


落ちるタイミング、それも地面に当たる直前、俺は跳躍した。

その行動に意表を突かれたのか、猪は止まろうと土煙を出す。

だが……その行動は裏目にでた。


「からの…… 〈兎斬〉(ラビットスラッシュ)!!」


俺は猪の顔面に目掛けて斬りつける。

猪は、咄嗟の行動で牙に攻撃を逸らす……だが、そんなのはしったこっちゃない……!


「おるぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」


片手剣でラッシュ……中々イカれたものだが……今はそんなのどうだっていい!!


「ここで……ぶっ倒してやるよぉ!!!!」


明らかにダメージを与えるようなエフェクトを纏い、牙が沈む。

両牙が折れた猪は、ただの豚に成り下がったわけだ。

そんな俺に対して、横槍が入る……

俺のすぐ目の前を何かが豪速球で通過する。


「うわぁ!!? 槍ィ!? ってことは……!」


「ゲホッゲホッ……させないんだけど!!」


それはファイアワークスだった。

その体は土まみれであり、さっきの土煙に巻き込まれたのだと一目でわかるような見た目だった。


「この魔物を討伐するのは……私……!」


ファイアワークスの槍が奴の手に戻る。

その後、何かを溜めているように光り出す。


「もう怒ったから……さぁ……〈茎命撃〉(ペネトレイションボア)!!!」


その槍が赤色に光る。

そして、それが投げられる。

その軌道はまるで弧を描くかのように、対象の急所へと吸い込まれるかのように投げられる。

まるで赤い流星かのような光の線を描く。


その一筋の光は、猪の眼球へと一直線に放たれる。

猪は反応に遅れたのか、気づいた頃にはすでに貫通されていた。


「ボァァァアアアアアアアア!!!」


猪が発狂する。

だが、まだ殺れてはいない。


「チィっ……まだ足りないか……! ならもう一発……!」


ファイアワークスがそう言うと、ファイアワークスの隣に一本の風が吹く。


それは矢だった。


「…………〈狙撃〉!」


その攻撃を喰らい、猪は転倒して暴れ出す。

しかし、やがて暴れなくなりそのまま地に伏せる。


「悪いな……ラストキルはいただいていくぜ……」


猪の巨体を最も簡単に貫通し、討伐に成功したのは、たった一本の矢であった。


〈Voice:シンボルモンスター クラッシュボアを撃破しました。〉

〈Voice:レベルが上昇しました。レベル52→レベル53〉


…………

………………

……………………


「ぃよっしゃぁ!! 俺の勝ちぃ!!」


「マジかよ……このことは水に流すか、ファイアワークス」


「そうだね〜、こんなことで友達使うのは反則だし〜」


「おい、何なかったことにしようとしてんだぁ? 俺の言うこと一回聞く権利もらったぞ!!」


「くそ……お前ら漁夫の利うますぎな……」


「てか、さっさと戻ろう。もうそろそろ夜になるし」


「そうだな」


俺たちは魔導学府へと戻る。

その後は特に何事もなく解散し、ログアウトした。

鏡花……あいついつ送ってくるんだ……?

もうそろそろ死ぬぞ……ネイチャーがだけど。

俺はそう思いながら就寝した。


翌朝、俺の元へと一通のメールが届く。


景兎へ

助けて欲しい。

学校に来て。

鏡花より


……ふっ……


「ようやくお出ましか……随分待ったなぁ……」


俺はあの悪友馬鹿共の二人にメールを送る。

そして飯を食べ、ストレッチをしてからゲームを起動する。


「よし、やるか、フログリ」


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