第五話 強敵とライダーキック
間に合わなかったよ……パトラッシュ……
〈Voice:リッチが出現しました。〉
俺の前に現れた「リッチ」と呼ばれたモンスターは、とてつもない気迫でこちらを見つめている。
「確実に格上の相手ってことか……面白い……!」
俺は剣を構える。リッチも敵意に気づいたのか、杖をこちらに構えてくる。
「…よし、行くぞ!」
動き出したのは俺からだった。
「能力 〈兎脚〉!」
俺はリッチに近づく。
「おらぁ!」
俺はリッチの首にめがけて斬撃を放つ。
カキンッ! 「んな!?」
弾かれた……!?
「お前……どんだけカルシウム取ってんだよ!」
リッチが俺を掴まんと手を出してくる。
「掴み攻撃か!! だがまだ〈兎脚〉の効果時間内だ!」
俺はステップで回避した。
「あぶねぇ……確実に急所に入ったと思ったんだが……」
『ーーーー 《フレア》。』
「!?」
何か喋ってる? まさか……!
その瞬間、俺の視界が明るくなった。
「まっ……ず……」
俺は炎に呑まれた。
…………
………………
……………………
「……っぶねぇ………! 盾が無ければ危なかった……!」
だがさっきの炎攻撃により、盾が溶けた。もう使い物にならないだろう。
それに先ほどの攻撃で俺のHPは2割を切った。
次ダメージをもらえば死は免れられない。
「こっからはスペランカーってことか……! なかなかキツイぜ……!」
攻略の鍵はさっき攻撃した時の弾きだ……
なぜ弾かれた……? リッチの様子からダメージは与えられてるはず……ならなんだ……?
「……まさか、クリティカルの無効化演出か……?」
おいおいおい、それだとしたらかなり厄介だぞ。
無効化されることがではない。
「……ははっ……正直舐めてたぜ……フログリのことをよ……
まさか、演出で弾いて一瞬スタンを入れてくるなんてなぁ……!」
おもしれぇ……!
なんだなんだ、あいつには何が効く? クリティカル全部無効か?それとも……
「蹴りのが痛ぇかぁ!!!?」
俺はリッチの首に蹴り込む
『ーーー!!!』
「っは! やっぱ斬撃は無効するが"打撃"は有効か!!」
弱点が分かれば後は……
「蹴りを入れ込むだけだなぁ!!!」
俺はリッチの周りを周り牽制しながら首に全力の蹴りを入れていく。
『ーーー!!!!』
「おいおいどうした!! やっぱ蹴られるのは痛ぇってかぁ!?」
「ーーーー 《フレア》!」
「その攻撃はもう見切ったぜ!」
俺は上側にジャンプする。奴の炎魔法攻撃は直線上にしか当たり判定がない。つまり上か後ろに逃げれば奴に隙が生まれる。
「さて! こっからどうす……る!?」
なんだ? 急に足が重く……まさか
「まずい……スキルが切れたか!?」
「ーーーー 《フレア》。」
このままじゃ死……
「うおおおおお!!!!」
瞬間、何かが俺の前に立ち塞がった。
その何かを起点に攻撃が二股に分かれ、俺は間一髪死亡を免れた。
「あ……あなたは……」
「遅いと思って来てみたら……まさかリッチとはな! 大丈夫か!? キョート!」
「ティアさん!!」
俺の前にティアさんが現れた。
「さあ! 立てるか?」
「もちろんです。こんなところでへこたれてちゃ、冒険なんてできないですよ!」
「相手はリッチ、はっきり言って君の格上だ。私が囮になることで君を逃がすことも出来る。それでも挑むか?」
なるほど……だが……
「はっ……ここまで派手に喧嘩ふっかけといて、今更逃げるってのは、俺の流儀に反します。」
「……なるほど」
「だから、サポートお願いします。ティアさん。」
「はっはっは! そう言われたらするしかないな! 任せろ! 思いっきり暴れてこい!」
「はい!」
「行くぞ! 〈牽声〉!!」
「ーーー!!! ーーーー!」
「はっはっは! そんな細い声で私に勝てると思うなら、大間違いだ! おりゃああ!!」
今、リッチのヘイトはティアさんが受け持ってくれている。ダメージも与えてくれているなんて、ティアさんには頭が上がらない。
「持ち上げてくれてるんだ……バッチリ決めないとな!」
〈兎脚〉はリキャストタイム中だが……
俺が攻めるならここしかない!
「行くぜ…… 〈兎蹴〉!!!」
この能力は自身の脚力を上げる〈兎脚〉とは根本が違う。
これの効果は……!
「キックモーションを最適化し、その威力を増強する!!!」
だがその代わりMPを消費する……! だからこそのMSP上げ!
この効果を見た時に思ってたことがある。
その昔見た番組、そのかっこよさに憧れ、一時期は真似をしていたそれを再現できるのでは? と……!
「行くぜ……ライダー…………キィィック!!!」
「いけぇぇぇえ! キョート!!」
俺はリッチの首にめがけて特大の蹴りをぶちかました。
『ーーーー!!!!!!』
「砕け………散れ!!!!」
『ーーーーーー!!!!』
次の瞬間、リッチの首が砕け、俺の体力が削れる音がする。
「おるぁぁぁぁあああ!!?」
リッチの首をへし折った俺はそのままのスピードで壁に激突した。
「…………いてててて……HPが残り1だ……」
幸運のおかげだろうか、運良く生き残った俺はリッチの居た方を見る。
〈Voice:リッチを討伐しました。〉
「…………ぃよっしゃぁぁぁ!!」
「流石だ! 格上相手によく動いた!」
これでクリアだ……あれ……なんのクリアだっ……け……
「キョート? キョート!!? しっかりするんだ!」
俺は視界が真っ暗になった。
気がつくと俺は、見たことがある天井を視認する。
「……ん……ここは……」
「あ、おにいちゃんおきた? よかったぁ〜」
「……ここは……俺はあの後どうなった……?」
「ティアさんがたいへんだっていってはこんできたんだよ? おにいちゃん、つかれてきぜつしてたんだって」
疲れ……? そんな仕組みがあるのか……てかVRでの気絶って死亡ってことか……?いやでも俺は運ばれたらしいし……
「……そうか。まだやってないことがあるから、少し出かける。」
「あ、ティアさんがおそとでまってるよ! おにいちゃんのことしんぱいみたい!」
「そうか、わかった」
どうやらまだチュートリアルは終わっていないらしい。俺はティアさんのところへと向かった。
「キョート! よかった! 起きたんだな! 何か変なところはないか? 心配だったぞ!」
「あ、はい。特に異常はないですね……それより、依頼達成の報告をしないとですから」
「それもそうだな。私が諸々スムーズに行けるように手配している。後は報告するだけだ!」
「いろいろ感謝します。ティアさん」
「いやいや、感謝することはない。私は私ができる最善を尽くしたまでだ。それに、後進の育成はしっかりしないとな! キョートも冒険に出るんだろう?」
「あ、はい、そうですね」
「冒険をする上で忘れてはならないのが、常に危険が纏うということだ。どれだけ肉体を屈強にしても、死ぬ時はあっさりと死ぬ……それが人類というものだ。種族問わずな……
危険を乗り換える時、この言葉を思い出すんだ。
『人間は今日と共に始まり、今日からの景色を見る、その先の未来を見据える。』」
「……なんか変な言葉ですね」
「そうか? まあ、長ければ……『今日と今日から未来を掴む』とでも覚えていればいい。キミの成長を楽しみにしているぞ! キョート」
「はい」
〈Voice:クエスト:コボルドの群れ討伐クリアしました。〉
〈Voice:クエスト:薬草採集クリアしました。〉
〈Voice:クエスト:鉱石採集クリアしました。〉
〈Voice:チュートリアルクエストを全てクリアしました。〉
〈Voice:隠しクエスト:リッチ討伐クリアしました。〉
〈Voice:レベルが上昇しました。レベル2→レベル6〉
〈Voice:新たなスキルを獲得しました。〉
〈Voice:称号獲得 脱・初心者〉
〈Voice:称号獲得 二刀流〉
〈Voice:称号獲得 骨折り得〉
〈Voice:称号獲得 蹴り上手〉
〈Voice:ようこそ、フロンティアグリーディアの世界へ〉
……おお! 一気にウィンドウが出てきた……すごいな……
「ってことは……こっからがフロンティアグリーディアか……わくわくしてきたぜ……!」
よっしゃ行くぞ!! まずは王都とやらだ!
「さてさて時間はっと……え、もう夜中3時!?
やばい! 寝ないと死ぬ!」
ということで、俺は一旦ログアウトした。
次の日の学校は死ぬほど眠かった。
称号 について
〈脱・初心者〉
チュートリアルクエストをクリアするともらえる称号。大体最初にもらえる。
〈二刀流〉
両手に武器を持って敵を倒すともらえる称号
二刀流なら大体持ってる
っていうか職業が二刀流で持ってない方がレア
〈骨折り得〉
リッチなどの系統モンスターの骨を折るともらえる称号
折る時は一瞬だけ力を加えよう
〈蹴り上手〉
蹴り攻撃で一定以上のダメージを出した時にもらえる称号
これは上の称号もある。
次回は鏡花チュートリアル編です。
多分長くはない。