第二十七限 8つの本、図書館会議
間に合う!! 勝った! 第1章完!(嘘)
「さて、まずはこれまでの成果を、時系列に沿って追っていこう。指差し確認は物事においてとても大事だからね」
ということで会議が始まる。まずは分かってることを振り返るみたいだ。
この場にいるのは、俺、ミライ、レイ、アグリさん、マロンさん、ヴェルノさんの6人だ。
進行役はヴェルノさんがしてくれるらしい。
「まず、僕たち『探索者』とキョートくんが出会う前、僕は、見つけたある本から、ユニークモンスターが出てくるのではないか? という仮説を立てた」
「そやね。それでウチに連絡してここにくる途中にアグリちゃんと出会った」
「ですね!」
「そしてそして、この図書館で待っている間に来たのが……」
「俺だな」
「そして、僕たちと手を組み、一緒にとある本のシリーズを探すことになった」
「「ウツギさんの袖の中」だったよな? たしか」
「その通りだキョートくん。そのうち1巻,2巻,5巻,6巻が見つかっているらかく」
ここまではあってる。
「さて、次に、ここからは僕たちの視点の話だ。キョートくんやアグリくんは知らないかもしれないから聞いてくれ。あ、そこのミライくんとレイくんもね」
ここからは俺たちが知らない話……か……
てかアグリさんも? 一緒のクランってわけじゃないのか?
「僕たちはキョートくんと別れた後、この魔導学府内容を隅々まで調査した。」
「この図書館はウチら探さなかったんだけどね。ここキョートくんが探すって言ってたじゃん?」
「そうだな」
まあ探したの今日の朝くらいだけどな……ははは……
「そこで続きとなる巻を見つけた。僕が見つけたのは「ウツギさんの袖の中」の7巻だ」
ほう……ちゃんと探し物をしていたらしい。
流石はそういう系のクランだ。
「これはある商人の家に置かれていたやつなんだが、その内容が少し奇妙でね」
「奇妙……というと?」
「キョートくんは前見た巻を軽くしか読んでないからわからないかな……? 多分」
「まあ……そっすね……」
「あの本はどれも一巻で完結するタイプなんだよ」
「……???」
どゆこと?
「もう少し噛み砕いて説明しよう。つまり、1巻と2巻に直接的な繋がりはないんだ。短編集というのに近いかもね」
「あぁ……そういう感じの……」
現実にもよくあるやつだ。代表的なので言えばギャグ漫画とか四コマ漫画みたいなやつ。
1巻まるまるが一つの物語として完結させ、別の繋がりのない話をこの2巻に記す……って感じなのだろう。
「そして、7巻は何が奇妙かという話だ。その法則性が崩れたんだ」
ここで発言したのはミライだった。
「つまり……連続性があって他の巻と繋がっているってことですか?」
「その通り……ミライさんだっけ?」
「はい。ミライです」
「ミライさんの言ったように、この7巻は6巻と繋がっていたんだ」
なるほど……
「これまであった法則性をいきなり崩すようなものが登場した……だから奇妙だ……と?」
「うん、そういうことになるね」
なるほど……すごい研究者目線な話だな……
「それが僕の行動だ。その後はこの本の読破と重要そうな内容の抜粋作業に取り掛かった。君たちにも後で見せるよ」
マロンさんが口を開く。
「今度はウチやね。ウチが見つけたのは8巻。あった場所は魔導学府釣り協会の資料倉庫だね」
「釣り協会? そんなのあるんだ」
「あるよ。一般に開かれていて資料室も見学可能。申請すれば持ち出しも可能と結構いいところだよ〜。あ、もちろん釣りも楽しいよ」
「まあリーダーは釣りそんなしないけどね」
「はぁ? リアルではするけどぉ?」
「まあそうらしい。ゲーム内ではほとんど見かけないけどね」
なるほど……
マロンさんの釣り事情はどうでもいいとして……
「その8巻はもう読んだんですか?」
「ヴェルノには読ませたよ。わたしはまだ読んでないけど」
「リーダーは活字を読むのが苦手なんだ」
「はぁ? リアルでは読むけどぉ?」
「……まあそうらしい。ゲーム内では僕に丸投げだけどね」
なんだこいつら、コントしてんのか?
まあそんなことはどうでもいい……問題は……
ここで口を開いたのは、またしてもミライだった。
「その話って繋がってるんですか? 7巻に」
ミライがこちらを見つめてくる。おい、なんだそのしてやったり顔は! うざったいぞ!!
まあいいや、俺も聞きたかったことだし……
ヴェルノさんが口を開く。
「いや、これが繋がってなかったんだよね」
「なるほど……」
つまりは8巻はそこまで重要じゃない……ってことか?
いや、そんなことないか……
「次に私が話して良いですか?」
アグリさんが言う。
「もちろんだ。見つけたものとか教えてくれ、アグリくん。」
「私はあの後、魔導学府にある広場近くの民家に訪れたんです。何かないかと探していたら、困っている人がいて助けたんです。そしたら……」
アグリさんが取り出したのは本だった。
「これがあったんです! 「ウツギさんの袖の中」の4巻です!」
4巻か……てかなんでそんな民家に?
「どうやら先祖が代々引き継いでいたものらしく、譲り渡してもいいって言ってくれたんです!」
おお……民家で入手とはなかなかの豪運……
そんな一民家に置くとは……そこまで重要なものでもない可能性があるな……この本……
「それで、譲り受けた後なんですが……しばらくログインできてなくて……」
なるほど……まあ現実世界でゴタゴタしていたのだろう。
「今日この後も終わり次第すぐに抜けないと友達に怒られちゃうんです。」
「え、じゃあ早くしないとまずいんじゃ?」
「大丈夫です! 1時間だけ許すと言ってくれたので今は入れてます! ほんと優しいですよね、私の友達」
なるほど……その友達優しいな……
「てことは早めに終わらせないとな。次は俺だ。」
俺は起こったことを言った。
流石にファイアワークスのことについては言及しなかったが……まああいつを関わらせる気ないし……いいよな。
「……そして、今日見つけたのがこの本。「ウツギさんの袖の中」の3巻だ」
「なるほど……となると残りは9巻のみとなるわけか……最終巻が残るとは……」
ゲームではよくあるやつだな……おそらく9巻に核心的なことが書いてあるのだろう。
「キョートくんとアグリくん。後でそれを見してくれないか?」
「あ、全然大丈夫ですよ。まだ1ページも見てないけど」
「私も大丈夫です!」
「あ、少し本の表紙とか見ても良いでしゅ?」
「どうぞ、遠慮なく」
なんかレイがしてる……まあ、どうでもいいか。
何故かレイとアグリさんが隣に座り一緒に表紙とかを見ている。
いつの間にレイとアグリさんそんな仲良くなったんだ? 一緒に本を読む間にまでなって……
もしかしてアグリさんってコミュ強?
「さて、とりあえず振り返りは以上だ。次に、今後の動きについてだ。」
「ウチらもどう動けばいいかわからんのよね……ひとまずはこの作品の解読が必要かもしれない」
「リーダーの言う通りだ。僕たちが出来そうなことはそれだけだ……だから、まずはこの本の重要そうなところだけを抜粋したものを用意した。3巻と4巻の方も抜粋するから、渡して欲しい」
「あ、わかりました」
「わかりました! どうぞ!」
アグリさんの胸ポケットに何か入っているのが見えた。
「アグリさん……それは?」
「あ、これですか? これはですね……民家に行った時に一緒にもらったルーペです! 活字が読みづらい人とかが使うやつですかね。多分ですけど!」
「へぇ〜……似合ってるね」
「えっ!? ほ……ほんとですか?」
「え? あーうん。探偵とルーペって似合ってるなって思ってね」
「ありがとうございます……!」
なんかだんだんとしどろもどろになったけど……
まあクソみたいな連想ゲームだったけど、喜んでるならいいか。
(キョートってそういうとこあるよね……)
「ん? なんか今変なこと考えたか? ミライ」
「いや? なんも?」
怪しい……こいつが変な顔をする時は碌なこと考えてないんだよな……絶対……
まあとにかく、俺たちは少し解読と抜粋の作業を待った。
その間、アグリさんは友人と交渉をするため一時的に落ち、俺たちは図書館ではなく近くのカフェでティータイムを満喫した。まあ味覚ないけど。
時間が経ち、アグリさんが戻ってくる。
「なんとかあと1時間だけオーケーもらえました!!」
「お、よかったね」
時刻は11時を回りかける。
「そろそろかなぁ? ウチの見立て的には」
「行ってみます?」
「行ってみるか。終わってなかったら先に他のやつ見してもらえばいいっしょ。」
ということで俺たちはヴェルノさんのところへ行く。
ヴェルノさんは疲れた様子で机に伏していた。
「あ……リーダー来たか……一応終わらせたよ……」
「よろしい。ありがとね」
「いやいや、安いもんさ……」
そのまま俺たちに向かってヴェルノさんが言う。
「存分に読んでくれたまえ、抜粋だから読みやすいはずだ。それでも文字数は多くなってしまうけどね……」
俺たちはその抜粋した文を読むことになった。
今回は会議回ですね。
みんなの個性が溢れ出てていいなと思います。個人的に
次の話は少し特殊な話です。
この章における大事な話です。お楽しみに




