第二十五限 異変、それは罠
今回は景兎もいます。
私たちは今、音楽室に佇んでいる。
さっきのアナウンス的に、どうやらあのモンスター……ブルーピックスとやらは倒せたようだった。
「…………ふぅ……たおせた……のかな?」
そんな私の側に駆け寄ってくる人物がいた。
「ミライさん!!」
そのまま私に抱きつく。
「わあ!? レイちゃん!? びっくりした! あ、ちょっと! 今の私汚いよ!?」
私の身体は、あのモンスターの体液と思わしきものでいっぱいだった。
対象を徐々に溶かして貪るタイプのモンスター……とかなのかな……?
「無事でよかったでしゅ!」
「うん、無事だよ」
そこにネストくんとアルスちゃんも寄ってくる。
「大丈夫か? その……ミライ……」
「吸収される前に倒せてよかったです……そのまま飲み込まれて殺されるところでしたね……」
やっぱそう言う感じなんだ。怖いなぁ、モンスターって。
そんなことを思いつつ辺りを見渡す。
たくさんあったはずの肖像画は軒並み消えており、私が切り裂いた跡が至る所にある。
夕方に見た音楽室とはうって変わっていた。
「ここだけ見ると凄惨な事件現場みたいだね」
「人が一人死にかけたからな。あながち間違いじゃないだろう。」
「そうだね……え、そうかな……?」
まあいいや、今は深夜だし……めっちゃ眠いからね……頭回って無さすぎるところがあるみたい。
「手当てをしますね……【ハイエクスヒール】!!」
すると、みるみるうちに体力が回復する。
流石はアルスさん。なんでもできるね……ベタベタはそのままだけど……
「わぁ……早く帰ってお風呂に入りたい……」
「そうですね……そろそろ行きましょう」
と言うわけで、立ち上がる。
私たちは何事もなく外に抜け出すことができた。
私たちは、校門前で立っていた。
「いやぁ……これで3つが解決かな?」
「ですね……残るは4つですね……」
「残る4つは……『あるはずのない謎の部活』、『謎の教室』、『夜中に現れる吸血鬼』……そして、『黒い謎のカード』でしゅ……?」
「そう言うことになるな……明日からはその残る4つの捜索だ」
やることは決まった。後は解散するだけ!!
「んじゃ、おつかーーー」
その時、"一つの音がした"。
それは、音楽室に置かれたスピーカーから……いや、全ての教室から……いや、校内のあらゆるスピーカーから聞こえる。
"キーンコーンカーンコーン"……と。
「こんな時間にチャイム……? なんでこんな時間に……ってえ?」
待てよ……? そういえば、七不思議の最初って……
辺りを見渡す。レイちゃんはなんともなっていない。というか、気づいていないのだろう。耳を塞ぐだけで後はなんの変化も見せていない。
問題は二人の方だった。
「そんな……どうして……!?」
「ありえない……俺たちが壊したはず……!」
明らかに動揺を隠せていない。
まるでありえないことが起こったかのように取り乱している。
「ねぇ……二人とも……これさ……もしかしてなんだけど……」
「これは……七不思議の一つ……俺たちが最初に対処した七不思議……『深夜一時のチャイム』……」
「でしゅ!? これ、そうなんでしゅ!?」
「やっぱりそうなんだ……」
私はメニューを開き、今の時間を確認する。時刻は、午前1時ぴったりであった。
でもどうして……? なんで……?
"あれは私たちが壊したはず"……
「完全に壊しきれていなかった?」
確かにあの装置は再生機能が付いている。それは実証済みだ。
ただ、あの異変は全て壊したはず……
そうは言っても、現実で起きたのはたしかに「チャイムが鳴った」ことである……
「なんなんだ……? これは……」
その後、私が頭が回らないことを理由に今日は一旦解散した。
明日……というか今日、夜にまた確認をするらしい。
宿屋に帰り、レイちゃんと分かれ、ゲームを終了する。
「ふぅ……つかれたぁ……」
シンボルモンスターと連戦した私の身体は疲労のピークを迎えていた。
「明日、景兎に色々話すか……ストレス発散に……ふふふ……」
そんなことを言いながら私は就寝する。
時刻は深夜1時を超えていた。
◇◇◇
俺は、朝日に照らされ目覚める。
時計は7時を指していた。
ふわぁぁ……まだねむい……
もうちょっと寝るか……
その時、ドアが開く。
「おにぃちゃん!! 早く起きて来なさい!!」
「誰だ……俺の至福の睡眠を邪魔するのは……って飛鳥かよ……」
俺は飛鳥に無理やり起こされる。
今日は夏休みだ……特に学校もない……あ……休日か……ほな仕方ないか……
俺の家は少し特殊な"決まりごと"がある。
それは、「祝日の朝御飯と晩御飯はなるべく家族みんなで食べること」だ。
父は仕事で忙しく、妹はオカルト、俺はゲームにどっぷりと浸かっている。これにより家庭崩壊を危惧した母が下した決まりごとである。
祝日は父も休みであり、俺たちももちろん休み。母は専業主婦だからもちろん家にいる。暇かどうかはおいといて、みんなが集まれる機会が祝日なのだ。
もちろん、いつも晩御飯が一緒というわけではないが、朝は絶対に揃う必要がある。
だから、母は祝日をかなり重く置いているし、この決まりごとを破ると色々と罰が下される。
例えば俺であれば、ゲーム没収とか……
いやいやいや! 考えたくもない……せっかく良いところだってのに大きく出遅れちまう……まあもう十分出遅れてはいるんだが……
それに今日はクラン『探索者』とのミーティング(仮)みたいなことをするんだから、尚更まずい。
ということで、降りてリビングにいく。
リビングには、家族が全員揃っており、俺が最後だった。
「あ、やっときた! 早く食べたいんだけど!」
「遅かったな……景兎。昨日も夜更かししたのか?」
「父さん……うん。全然した。」
「まったく……そんなことばっかしてると大きくならないぞ……」
「まあ……もう十分すぎるくらい大きくはなってるけどねぇ……」
「心意気の話だ、母さん」
俺の家族は今日も賑やかである。
俺の父、凍角 鋼成は堅い男だ。
仕事に真面目であり、母一筋の堅い男である。
かなり古い考えを持っており、「男はこうであるべき」を貫いているハードボイルドな男である。
ただ、かといって古い考えに引っ張られているものでもない。新しい考えを取り入れつつ、イケメンおじさんを極めてるのだ。
はっきり言って頭おかしいと俺は思っている。
ただそのおかげで、俺たち兄妹の趣味に理解を示してくれているのは幸いである。
母もおかしいんだが……まあ別に今考えなくても良いか……そんなこと。
「さあさあ、冷めないうちに食べて食べて」
「それもそうだな……それじゃ……手を合わせて……」
「「「いただきます」」」
「めしあがれ♪」
これが我が家の祝日の風景だ。
肝心のご飯だが……
「ウマッ!」
「美味しい!!」
「流石母さんの作った料理だ……ほっぺが落ちるほどの美味しさとはこういうことだな……」
みんな爆笑した。
父はちょっとユーモアのある一面もあるのだ……と改めて気付かされた。
「喜んでもらえてよかった〜」
実際、母は料理がとてつもなく上手い。そして美味い。
昔5つ星ホテルのシェフをしてたとかなんとか言ってた気がするが真実かは定かではない。ただ、それを真実であるかのように思わせる腕前を確かに持っている。
ほっぺが落ちるほどの美味さってのは、あながち間違いでもないわけだ。
「そうだ、お父さん、今日は何するの?」
母が言う。
「そうだな……久しぶりの休みだし、どこかに出掛けようかと思う」
飛鳥が言う。
「あ、それならさ! デートしてきなよ! お母さんとお父さんで!」
「え?」
「だって、今日の運勢は大吉だからね。お父さんもお母さんも!」
妹の運勢占いは信用できる。なぜかは知らないがすっごく当たるからだ。ほんとなんなんだこいつは……
「……そこまで言うなら……母さん、行くかい?」
「ええ……もちろん……」
「ごちそうさまでした。食器洗っておくから支度しなよ」
ということで、目の前で惚気が始まったのを横目に俺は皿洗いをする。
まあ、祝日は俺が皿洗い当番だから、いつも俺がしてるんだけどね。
父と母が出掛ける。
俺と妹は留守番を言い渡された。
「よし! これで友達呼べる!」
「おまえ……それが狙いかよ……」
「いや、お父さんが大吉なのはほんとですぅ〜」
「はいはいそうですか」
「お兄ちゃんどうせ部屋から出ないんでしょ?」
「まあそうだな……少し買い物するかもしんないけど、基本部屋だな」
「じゃあ、リビングはあんまり無闇に入らないでね。今から友達呼んで遊ぶから」
「わかってるよ」
どうせファッションショーとかだろう……全く……中学生だろお前は……どこから金捻出してんだ……あ、占いか……
ということで、今俺は自分の部屋にいる。
「まあいいや! 俺は俺のしたいことするかぁ!」
鏡花からメールが届いていた。届いたメールには一言
『明日宿屋で会おう。時間は大体10時ごろとかで』
と書かれていた。
「俺その時間帯会う約束してんだけどなぁ……」
とりあえず……待ち合わせ場所変えれば良いだろ。
うんうん、これでよし……っと。
さて、起動しますかぁ……フロンティアグリーディアを!
---Log In
少し動きましたね。
ここで景兎の家族構成について
父・凍角 鋼成
仕事人であり愛妻家
ハードボイルドな一面が見られるが、新しいものも取り入れはするスタイル。
趣味はトレーニングと読書
母・凍角 紗恵子
専業主婦であり、色んなことに手を出している。
美魔女であり、愛夫家
凍角兄妹が趣味人な理由の大半。
あらゆる項目でステータスカンストみたいな性能をしている。
最近の趣味は「雑談配信をすること」
妹・凍角 飛鳥
中学生であり、優秀な占い師候補生。
正確性99%であり、未来を見ているかのような占いには界隈どころか跨いでまで知れ渡っている。
幼い頃から占いが好きであり、勉強し続けていたらこうなっていた。あと普通に才能ありすぎ。
成績は優秀。普通に学年上位であり、進学校に進学するつもりである。
少しブラコンがまじっている。
最近友達が兄のこと好きと言ってきたので、内心モヤモヤしながらアドバイスをしている。
兄・凍角 景兎
言わずもがな
もっと詳細に知りたいひとが多かったら、またどこかでいうかもしれません。




