第二十四限 絵画、それは戒めを封じる札
遅くなりました!!
誠に申し訳ござません!!
今、私たちは学校の中に入ったところだ。
特に人の気配はしない。
今から私たちは七不思議の一つ、『音楽室の肖像画』を解明しに行く……
「ちゃんとついて来てるな……」
「そんな子供じゃないんだし、迷子になるわけないでしょ〜?」
「でしゅ!!」
「そうか……」
私たちはネストくんを先頭に、一直線に並んで進んでいる。最後尾はアルスさんだ。
「そろそろ着く。気を引き締めろ」
少しして、音楽室がある階……2階にたどり着く。
「鍵を開ける……アルスは見張りをしてくれ」
「わかってますよネスト」
そういうと、ネストくんは魔法を使い、鍵を開けようと試みる。
アルスさんは周囲の警戒をしている。
「おぉ……息ぴったりだね……」
「でしゅね……」
流石は幼馴染。コンビネーションも抜群だね。
お互いをいい感じに想いあってる証拠だね。
「……ミライさん? なんかニコニコしてるでしゅ?」
「へ? そんな顔してた?」
「でしゅ」
まじかぁ、全然気づかなかった。
情けない顔じゃないよね……?
まあ、微笑ましいとは思ってたけど、まさか顔に出ていたとは……これもユニークモンスターの仕業か? なんちゃって。
そんなことを考えているとネストくんが私たちに話しかける。
「おい、開いたぞ。これで中に入れる」
「お、もう開いたんだ。流石は闇魔法の天才ネストくん」
「お、お世辞はいい……そんなことよりさっさと済ませるぞ……!」
「はいは〜い」
「でしゅ!」
私たちは夜の音楽室を覗き込む。
「いやぁ……不気味だねぇ……」
「でしゅね……」
「夜の校舎はいつ来ても不気味ですからね……慣れませんね……」
夕方に来た時とは明らかに違う印象を抱かせる。
夜の帳が下ろされた暗い部屋は、その奥を表示しない。
「しっ……何か音が聞こえる……」
「何か聞こえるでしゅ……!?」
そうネストくんとレイちゃんが同時に言う。
耳を澄ますと、確かに謎の音が聞こえる。
「なんだこの音……話し声……?」
その音は、明らかに生物の声であった。
ただ、人間の声と呼ぶには少し異質であった。
「アルスちゃん……何か知ってるの?」
「実際には聞いたことないですが……特徴が一致するモンスターを文献で見たことがあります……」
「え!? ほんと!?」
「声が大きいぞ!」
「あ、ごめんごめん……」
しょうがないじゃん、声出ちゃうんだから。
とはいえ、流石は最優秀生徒……!!
なんでも知ってるアルスさん!!
「んで? どんなモンスター?」
「そうですね……この奇妙な声は……ミミックの鳴き声に似ていますね……」
ミミック……?
「ミミックってあれ? 宝箱に擬態する的なあれ?」
「はい、そうです。実はミミックの中には、宝箱以外にも擬態できる種類がいるんですよ」
「へー! そうなんだ……」
てことは……ミミックが悪さをしていると言うことか……
「てことは……絵に擬態している……ってこと?」
「そうですね……その可能性は高いかと」
なるほど……絵に擬態するミミックって何が目的なんだ……?
「……それで、どうするんでしゅ……? 奥に行くでしゅ……?」
レイちゃんが言う。
「うーん、無闇に突っ込むのはリスキーだよね……」
「ミミックと仮定するならば……おそらく絵は外殻だろう……」
「外殻……?」
「ミミックの特徴として、外殻と呼ばれる殻で本体を守ってるんです。その外殻は、ものすごく硬くて、魔法攻撃にも耐性がついてます。それに対して中はかなり脆弱で、弱点でもあります」
「だからミミックとの対峙には、基本的に外殻を自ら開けさせて中に魔法を撃つ……というのが基本戦術だ……」
なるほど……
「詳しいね、お二人とも」
「授業でしましたから……」
へー、学校ってそんなことも教えるんだ……
「だから、さっきのレイさんの質問の答えはこうです……」
「答えは一つ」
「正面突破あるのみです……!」
おう……マジすか!?
まさかNPCが正面突破を進めるとは……
ただ……この世界を知り尽くしている人たちが言うんだ。間違いないでしょ!!
「んじゃ! いくよレイちゃん!」
「はいでしゅ……!」
私たちは、音楽室へと入り、絵が置かれていたところまで歩く。
抜き足……差し足……忍び足……っと……
絵が置かれていたはずのところへ行くと、謎の違和感に気づく。
私は、謎の違和感の正体を知るため、絵に顔を近づけた。
絵の顔は"ニマリと笑っていた"。
〈Voice:シンボルモンスター ブルーピックスが現れました。〉
……っ!?
次の瞬間、私の顔を何かが丸呑みにする。
「うわぁ!?!?!?」
「でしゅ!?」
「ミライさん!?」
「ちっ……気づかれていたか……!?」
そんな声が聞こえる中、私は顔を丸呑みにしたものを剥がそうとする。
「はが……れ……ない……!?」
ダメだ……力が強すぎる……!!
そうしているうちに、どんどんと体にモンスターの一部が纏わりつく。
くそ……! 剥がれない……!
そして、私は右腕を残して、モンスターに飲み込まれてしまった。
「あれを取らないとでしゅ……!!」
「ミミックの行動……人の捕食……? いや、首を切断するはず……一体なに……?」
「アルス! 考え事よりまずは救助だ!!」
「……! わかってます!!」
私は、ぼんやりと聞こえる音がみんなのものであるとわかった。
みんなが助けてくれようとしている……?
ただ、耳で聞く限り、戦況は芳しくなかった。
「あいつ……魔力を吸って増強しようとしてる……!?」
「まずいですね……このままだとミライさんが死んでしまいます……」
「ミライさんが死ぬのはまずいでしゅ……!!」
たしかにまずい……私はプレイヤーだから、何度死んでも復活する。だがこのまま行くと、次はみんながターゲットに……それだけはまずい……!
ただ私は今、魔法が使えない……杖が封じられているからだ。唯一杖に依存しない魔法はあるが……使えるかは不明だ……
すると、頭に響くような声を聞く。
「ケテ……ケテヨ……」
「ダレカ……タスケ……」
……!? これは何……!?
断続的に頭に響く声……このモンスターの被害者……?
もしかして……これは絵に吸い込まれてしまう的なやつか……?
もしかしてあの顔は……被害者の顔……!?
やってくれるじゃん……!
だとしたら……うん……これだ……
私は自分の中で決めた"ある作戦"を実行するため、自身の意識を集中させる。
私の魔法には、鏡洛魔法という魔法がある。
杖を必要とせず、自身の近くの範囲であれば思い通りの地点で発動できるものだ。
この魔法ならば……みんなに作戦を伝えられる……!
鏡洛魔法【ミラーテレパス】!!
「……!? なんだこの感覚……!」
「これは……ミライさんの考え!?」
「すごくいっぱいながれてくるでしゅ!?」
(みんな! 聞こえたら大声で教えて!!)
「え……きこえてるでしゅ!!」
「大丈夫でしょうか!?」
「今助けてやる!!」
(おーけー聞こえた。実験成功! 私は大丈夫! それよりやばい発見したかも!)
「やばい発見……? なんだそれは!」
(この中には、こいつに食べられた被害者が入ってる。丸ごとそのままね)
「な……!?」
「それは……まずいですね……もしかしたら倒してしまうと中の人間も死んでしまうかもしれません」
「でもどうするでしゅ……? このままだとミライさんも食べられるでしゅ……!!」
(だから、今から私の作戦を教える。それに従ってやってほしい!)
「なるほど……信じていいんだな?」
(もちろん)
「……わかりました。やります。」
(ありがとう! じゃあまずはアルスさん、私に取り憑いたモンスターめがけて光魔法を撃ってほしい!)
「……え?」
(頼んだよ!)
「えぇ!? そんなことしたら最悪ミライさんが死ぬのでは!?」
(大丈夫だって! ミミックの耐性に対しては誰よりも知ってるでしょ!)
「ですがあれがミミックかどうかというのは……いえ、わかりました。全力で撃たせていただきます」
(頼んだよ!!)
「行きます……【シャインエッジ】!!」
私の身体に大きな衝撃がのしかかる。
「くっ……流石はアルスさん……中にいてもHPを2割近く削るなんて……」
ただ……これで準備は整った。
この状態であっても、ステータス画面は開くことができる。
そこにしっかりと"装填"されたのを確認した私は言う。
「ブルーピックス……だっけ? びっくりしたけどさ……ミミックの仲間は中からの攻撃に弱いんだよね……?」
すると、目の前で数多の人間の顔を出す。
抵抗している様子だ。
「人質のつもりかな? でもね……私にはどうでもいいの。あの3人の安全を守れるなら……ね!!」
金切り声のような音を出す。
先ほど音楽室に入る前に聞いた声と似ている。
「落ちろ!! 【イミテーション〈シャインエッジ〉】!!」
私の目の前に、光の刃が現れると、顔を見事に切り裂いていく。
『グヌ……グフゥ!!』
「やっと聞いたよ、お前の本当の声!!」
その刃はさらに加速する。私の周りについていた絵が切り裂かれていく。
絵は粉々に切り裂かれ、コアが露見する。
「私のMP全額ベット!! 最後まで斬りつける!!」
最後の一撃がコアに接触する。
『グ……グワァァァア!!!』
コアが破壊される音が、音楽室に響く。
『ア……アルジ……サ……マ……』
そう言い残すと、絵は消滅する。
「ふぅ……私の顔を汚した罪は……高くつくよ……」
〈Voice:シンボルモンスター ブルーピックスを撃破しました。〉
「ア……アリガ……ト……ウ……」
そう聞こえた気がした。
最近景兎がでてきていませんね。
つぎの話は景兎がでてきます。
よろぴくねぃ




