第二十三限 罪、それはいずれ知る事
遅くなりましたことを深くお詫び申し上げます。
……いっつも謝ってんなこの作者
魔物がいるはずがない……とな……
「それは一体どうしてなの?」
「この学校……いえ、この魔導学府には、対モンスター用の結界が張られているはずなんです。にも関わらず、ここには魔物がいた……と言う話です。しかも話によると喋る魔物……あまり例を見ません……」
「喋る魔物……ってそんなに珍しいの……?」
私がそう聞くと、ネストくんが喋る。
「珍しいというか……ほとんどいない……と言う方が正しいだろう。喋る魔物もいるにはいる。例えば、『不眠の徘徊者』とかな」
『不眠の徘徊者』……!
サマルテGTのことだ……NPCにも知られているくらい有名なの!? もしかして……
私はネストくんに聞いてみる。
「それって……あの金属の身体をしたやつだよね? 知ってるの?」
「知ってるも何も……常識だろ?」
アルスさんが言う。
「そもそも、人間にとって最も脅威である"原初の十四罪"は周知のことですから。幼い頃によく聞かされる童話にも出て来ますし」
"原初の十四罪"……!?
原初の十四罪のことを知ってるってこと!?
と思ったが……そりゃそうか……どうやってその名前が知れ渡ったのかって聞かれたらそりゃそうなんだよね……
でも知ってると言うことは……聞けるチャンスだね……?
「ところでさ……一つ聞きたいんだけど……」
「なんでしょうか?」
「その原初の十四罪ってなんの罪があるの?」
罪ということはなんらかの罪が割り当てられているのだろう……だって罪だもんね!
その質問に、アルスさんは答えあぐねているようだ。
少し時間が経ち、ついに答えが返ってきたが、その答えはあまりよくなかった。
「それは私たちにもわかりません……」
続けてネストくんが喋る。
「それは誰にもわからない。少なくとも公には公開されてないからな……」
「え!?」
公に公開されてない罪!? どゆこと!?
「実は……これらの罪と諸々を定めたのは三柱教会というところでして……その内容を開示する例はあまりないんです」
そうだったんだ……
罪……うーんなんだろ……窃盗罪とか……殺人罪……的な……?
罪……教会……まさか……
「ところででしゅ……今知られてる「罪」はなんかあるでしゅ?」
私が考察しているのをよそに、レイちゃんが言う。
「あ! それ知りたい!! もちろんあるならだけど……」
それがあるならこの考察のあたりかハズレかはわかるはず!!
そう言うと、アルスさんが答える。
「一応何個かわかってはいますが……それがどれかまでは……」
「いいからいいから〜」
「そうですか……今わかっている罪は『傲慢』『嫉妬』『暴食』『邪心』………そして『無情』です。」
ふーん……ふーん……うーん……?
あれ……途中までは合ってると思ってたんだけど……あれ……なんか違うな……
私の考察は違ったのか……?
「とにかく! それくらい喋る魔物は珍しいですし、この魔導学府に魔物が侵入すること自体難しいはずなんです! 少し話を脱線しすぎましたね」
おっとそうだったそう言う話だった。
「それがどうしてか……魔物が居たと言うわけだよね……」
「そういうことになる……」
すごいね……怪談っぽくなってきたじゃん……
「次はどうするの?」
ネストくんが答える。
「次は夜0時まで待って音楽室に侵入する」
「そういえばアルスさん、委員会の仕事は?」
「今日の分はすべて片付けてきましたので、ここからは共に行けます」
なるほど……
「てことは夜0時にあのいつもの場所に集合って感じかな?」
「そうだな……それと」
ネストくんは懐から何かを取り出す。
「……これ、作ったからやるよ……」
渡されたのは黒いフード付きのローブだった。
縁のところには水色になっている。
「……これは?」
「もし万が一敵に見られでもしたら面倒だからな……俺の手作りだ……」
「敵って誰だ……? それはそれとして、こっちの方が雰囲気出るね!!」
「レイってやつの分もある。もちろんアルスのもだ」
「うわぁ! ありがとでしゅ!!」
「ネスト……これは遊びじゃないですよ……?」
「顔バレしない方が都合いいだろ!?」
レイちゃんの方は赤色、アルスさんの方は黄色になっている。
「……ここで着るのはダメ?」
「ダメに決まってるだろ! 目立つぞ!」
私たちは一時的に分かれ、後ほど集合ということになった。
といってもほんの3時間くらいなので、レイちゃんをアルスさんに預けた。
私はと言うと、少しログアウトして考えごとをしていた。
「うーん……なんだぁ……?」
教会と罪、それを聞いて真っ先に思い浮かんだのは七つの大罪だった。あれは確か「人間が過ちを犯してしまう時の原動力」的なニュアンスだった気がする……
だが、少し違った。『邪心』と『無情』……こんなの聞いたことない……
それと……もう一つ気になることは……サマルテGTはなんの罪を背負っているのか…… ということ……
「……うーん……だぁ!! ダメだぁ……何もわからない……」
私は攻略サイトを見ることにした。
わからないなら先人の知恵を借りろってね!
ふむふむ……聞いた話と大体同じだな……
アルスさんに聞いた話と大体同じことが攻略サイトに載っていた。
そして、私と同じ結論……七つの大罪ではないかという結論に至ったであろう人たちの書き込みもあった。
「うーん……でも聞いた罪と七つの大罪には違う点がいくつもあるし……」
そして、もう一つ重大なことも書かれていた。
「現在発見されているユニークモンスターは5体……」
5体のうち一体は、サマルテGTだ。
そして残りの4体は……
『砂漠の使者』、『黄金竜皇』、『酩酊の女将』、『悪魔女王』と呼ばれているらしい。
「随分とかっこいい呼び方ばかり……強いってことだよね……」
どのモンスターも討伐には至っていないのだ。
強いに決まってる。
他にも色々探したが、特にこれと言って情報はなかった。
魔導学府の七不思議についても書かれていない……
やっぱり私が最初に踏んだのか? このフラグを……
そうこうしているうちに、約束の時間が来る。
「もうそろそろかな……行くか」
---Log In
「おまたせ〜! 待った?」
「そんなことはないですよ」
「ようやく集まったか……さて、作戦の説明だ」
そういうと、ネストくんは淡々と説明する。
「まず俺が音楽室の鍵を開ける。闇魔法でな。
次に、そのまま中に入る。全員でだ。以上だ」
ん? おや?
「え? それだけ?」
「それだけだ。何か問題があるか?」
いやたったそれだけかい!!
まあ、一応テンパらないために重要ではある……のか?
「とにかく、この作戦は速さが大事だと思います。先生たちが居ないとは限りませんので。バレずにこっそりするのであれば、尚更です。」
アルスさんが語った。
「まあそうだね……」
「がんばるでしゅ!!」
さて……行くか……
いざ! 2度目の深夜の学校へ!!




