第二十二限 激闘、スライム戦
〈Voice:シンボルモンスター メランコリースライムが現れました。〉
シンボルモンスター……ユニークモンスターの一つ下……通常モンスターの中だと一番強い……とかだったかな……
メランコリースライム……? 悲しみのスライムってことかな……
「シネ!!」
「おわっと!??」
「でしゅ!」
そんなことを考えていると、早速攻撃が飛んできた。
なかなか殺意が高い……
「レイちゃん!!」
「わかったでしゅ!! 〈怒棍〉!!」
レイちゃんは、叫ぶと同時にスライムにぶつかった。
痛打の一撃がスライムを襲う。
「グッ……!? クッ……!! ワタシノジャマヲスルナ!!」
すぐさま自身の身体を変幻自在に変え、触手を生み出してレイちゃんに襲う。
「ま、まずいでしゅ!!」
「まかせて! 【ディグウォール】!!」
その言葉と共に、レイちゃんの前に土の壁が現れる。
「よし! 成功!!」
成功するか怪しかったけど、できた!!
「どんどんくるでしゅ!!」
「なんの!! 【フレア】!!」
ダメージにはならないけど、怯ませることはできるはず……!!
放たれた炎の玉は、スライムに直撃する。
「よし! 怯ませ成功!!」
「グヌ……!? コシャクナ……!!」
スライムは私の方を目掛け触手を出して攻撃してくる。
「えっ……はや……!!?」
触手が私の身体を突き破ろうと……その時、私の眼の前に居たのはレイちゃんだった。
レイちゃんはその触手を殴り飛ばし、その触手を翻させる。
「大丈夫でしゅ!?」
「うん! 大丈夫!」
普段はホワホワしているレイちゃんが機敏に動く。
トイレの壁を利用して巧みに触手を避ける。
その動きにスライム側もついていけていない様子だ。
「クッ……チョコマカト……コザカシイ!!!」
「おっと、そこはダメだよ!! 【ウィンドカッター】!!」
風の刃がスライムの触手を切り裂く。
その身を切ることには叶わなかったが、亀裂を入れることには成功した。
「よし! 部位破壊の基本は狙い撃ちってね!!」
「コノッ……カトウセイブツガ!!」
ついにレイちゃんと私の両方に触手が飛んでくる。
ただ、数は少ない……なら……
「【マッドブレイク】!!」
【マッドブレイク】は本来、足止め用の魔法だ。
予め魔法をかけた土を設置しておき、相手が踏むと相手を硬直させるというある種の運ゲー魔法だ。
ただ、私は思う。この魔法を"今攻撃モーション中の相手に直当てするとどうなるのか?" と。
答えはこうなる。
「ンナ……!? ウゴケナ……イ……!?」
「予想通り!! ちゃんと機能するみたいだね!!」
魔法耐性が高い相手に効くか……難点なところだったが……無事成功した。
「レイちゃん!!」
「はいでしゅ!! 〈怒棍・巳麓〉!!」
「グッ……グハァァア!!!!」
その一撃はとても重い音と共に……スライムの脳天目掛けて放たれた。
「……アルジサマ……」
スライムは倒れた。
「ふぅ……やったでしゅ……?」
「レイちゃん!! 流石!!」
私はレイちゃんに駆け寄り、レイちゃんを抱きしめる。
「でしゅ!? み、ミライさんも無事でしゅ……?」
「全然平気! レイちゃんの方は?」
「大丈夫でしゅ……!」
ホッ……良かった……
しばらくして、謎の壁により閉まっていた扉がぶっ壊れ、開けられた。そこから、アルスさんが入ってくる。
「お二人とも、大丈夫でしょうか?」
「うん、全然大丈夫!」
「でしゅ!」
「お二人とも、ご無事で何よりです。ところで……その倒れているスライムのような何かは……」
「これが怪異の正体です」
「でしゅ」
すると、アルスさんはなるほどと頷く。
「つまり、このスライムが鳴き声を発していた……というわけですか?」
察しがいいね、流石優等生。
「そういうことになるね……」
「とりあえず、ここから出たいでしゅ……」
「それもそうだね」
「では、こちらへ」
そう言ってアルスさんは私たちをトイレの外へと案内する。
そこにはネストくんの姿もあった。
「良かった、無事だったか」
「おかげさまで……」
「お前達が入って少ししたら、急に壁が出来てな……アルスを呼んで二人で破壊活動をしてたんだ」
「すごく硬かったですし……土属性も水属性も効かない壁でしたから……地道に光魔法で壊す以外なかったですからね……」
「そんなことしてたんだ……」
てかそうか……光魔法なら壊せるんだこの壁。
でも私光魔法持ってないからな……
「そういえばですが、この中で何があったか、詳細にお聞かせ願えませんか?」
「もちろん! 教えるよ」
私たちは、事の経緯を説明した。
それを聞いたアルスさんとネストくんは言う。
「そうでしたか……申し訳ございません……」
「すまない……俺が二人だけに行かせたから危険な目に遭わせた……申し訳ない」
「全然! 気にすることはないよ! ね、レイちゃん」
「でしゅ! こうして私たちも生還してるでしゅ! 大丈夫でしゅ!」
うん、すごく明るい。そしてかわいい。
戦闘中はすごくクールになるのギャップがあって良いんだよなぁ……レイちゃん。
なんというか言葉のキレ? 的な何かが研ぎ澄まされているところが良い。
私たちは謝る二人の顔を上げさせ、再び話す。
「まあ、これで七不思議は一つ解決かな?」
「そうだな……トイレの鳴き声の正体は、トイレに擬態したスライムの仕業だったわけか。」
「それにしても……まさか学校内にモンスターが居るなんて知らなかったよ〜」
そう私がヘラヘラ言うと、深刻な顔をしたアルスさんが一言。
「それに関してなのですが……おかしいんですよね……」
ほぇ? あれ、なんかおかしいところあるかな……
そんな疑問を代弁したのは、レイちゃんだった。
「おかしいって……なにがでしゅ?」
「普通であれば……こんなところに魔物が居るはずがないんです」
……ほほう……?




