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フロンティアグリーディア〜今日と今日から〜  作者: 無食子
憂越は鬱りて、尚陽炎を見ず
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第十一限 七不思議その一、深夜一時のチャイム・上

長く苦しい戦いだった……

難産でした。申し訳ございません。

私たちは待ち合わせ場所まで行く。


「……来たか」


「もちろん! カトラリー……じゃなかった、アルスさんもいるみたいだね」


「お待ちしていました」


「……そいつも連れてくのか……」


ネストくんがそう言いながら、レイちゃんの方を見る


「私も一応特訓してるでしゅ……!」


「そうそう! ちなみに、私より強いから」


「そう言うわけじゃ……まあいい……」


すると、ネストくんとアルスさんは話を始める。


「俺たちが今から解き明かすのは「夜中一時に鳴るチャイム」だ。」


「夜中一時に鳴るチャイム……前言ってたやつだね?」


「ええ、そうです。"深夜1時、謎のチャイムが学校に響き渡る"という噂があります。ただ、私たちはそれ自体の理由はわかっているんです。」


「というと?」


「俺たち2人でベル魔法の仕組みを調べたところ、ある特定のタイミングだけ、起動するよう、細工が施されていた。」


なるほど……


「チャイムも魔法なの?」


「はい。この国は魔法で成り立っていますから。」


「魔法解析も盛んに行われている。だが、この魔法は不可解だった。」


「不可解? それはまたどうして?」


「この魔法は一般的な処置ではわかりにくい魔法で蓋をされていた。そして、それを解除するには、光魔法が有効だった。」


「光魔法?」


「光魔法も知らないのか? たしかに闇魔法を知らないのは納得できるが……光魔法も知らないって……お前の知識はどうなってるんだ?」


「こら、ネストさん。そんなふうに言ってはいけません!」


「しょうがないだろ、常識だぞ!? 光魔法といえばこの国の子供はみんな憧れる属性魔法だ! 数こそ少ないがみんな憧れる! それを知らないなんて……」


「そうだったんだ……」


知らなかったな……まさか属性魔法は7つだったとは……だとしたら派生系にもあるのか?

いやないか……

というかこの情報絶対誰も知らないことはないだろうし……意図的に誰かに隠されてそうだな……これ。


「はぁ……とにかく、光魔法が有効という言葉だな……」


「あの魔法の蓋は闇魔法で形成されたもの……ということになります。」


ん? どゆこと?


「つまり……光魔法は闇魔法に強いの?」


「そう……なりますね」


「反対に、闇魔法は光魔法に強くもある」


「ひょえ?」


なるほど……つまり対になってる関係性ってことね……

対の関係性でお互いが干渉し合うのが闇魔法と光魔法の実態ってわけだ。

そして闇魔法は使用者が少ない……ということは……


「つまり……闇魔法が使われていた……となると必然的に術者が限られるわけか……」


「まあ、そうなりますね……」


闇魔法……ネストくんでないとしたら……一体誰なのか……


「2人は犯人の目星はついてるの?」


「それが……」


「闇魔法を使う人間がまず少ないが、忌避される。それゆえに、使えるのに秘匿してる奴らだっている。あまり絞ることはできない」


そっか……やっぱ結構な人数が居るようなところだし、ネストくんは違いそう……


そう考えていると、ネストくんが口を開く。


「……だが、俺は1人だけ心当たりがある。」


持ってましたか、情報!


「俺の師匠……表向きは普通の人だが、闇魔法の先生として赴任している人がいる。名前は……」


私たちは固唾を飲んで見守る。

すると、ネストの口から発せられた言葉は意外なものだった。


「"アルト・ブルーム"という。」


「な!?」


「でしゅ!?」


え、まさかアルト先生が!?

いやいや、またまた……うーん……


「それは本当なの?」


私がそう聞くと、ネストとアルスさんは言う。


「俺は嘘は言ってない、アルト先生は俺の師匠であり、闇魔法の使い手だ。」


「もちろん、それだけでアルト先生がやったと決めつけるには早計ですが……」


「ただ、あいつがしている可能性はある。それに、理由がわからない」


んー……なるほど……


「ひとつ聞くんだけどさ、その七不思議っていつから流れ始めたの?」


「いつ……でしたら……私たちが入るよりも前からと言われています。」


「んー……それだと……アルト先生が犯人とはならないわけだね……する理由がないし」


「理由なんていくらでもできる」


そんなもんかなぁ……


「まあ、話しててもわからないし、早速行こう〜」


「まあ……たしかに見てもらった方が早いと思います。」


「……まあそうだな……こっちに来い」


ネストくんに連れられ、来たのは放送室と書かれた場所だった。

ふとアルスちゃんの方を見ると、何やら魔法を……


「……それもしかして解除魔法?」


「その……七不思議捜索の一環として必要なことでして……」


「いやまあ、大丈夫大丈夫。誰にも言わないよ〜」


放送室に入る。


「あれ……何にもないけど……」


「言っただろ、特別な処置がないと見えないって……少し離れてろ」


ネストくんはそう言い、私たちを離れさせる。

そして魔法を放つ。


「【ブラックアナライズ】!!」


すると、視界に悍ましいような黒いような怪しげな物体が出現した。


「これがベル魔法……青黒い蓋がついてる……」


「なんだか悍ましいでしゅ……」


私たちが見たのは、ベル魔法……そして、大きな青黒い蓋だった。


「少し離れてください……【サンシャイン】!!」


そうアルスさんが叫ぶと、ベル魔法を覆っていた青黒い円盤は消え去った。


「これで確認できますね」


「とにかく見てみますか!」


と言っても、私は専門家とかじゃないし魔法の読み方とかも素人同然だけどね……


私たちは、ベル魔法を見る。

ネストくんとアルスさんが指を刺しながら説明してくれる。優しい。


「これが、通常のチャイムを鳴らす魔法式……そして、これが……謎の魔法式……「夜中一時に鳴るチャイム」の正体だ……」


謎の魔法式は、確かにおかしいものだった。

なんというか、不釣り合いというか……

例えるなら、"真円を書いている最中に星を描くことに移行した"ような……それが4つあり、あたかも元々ついているように見せるが、そこは明らかに異質だった。


「なるほど……これを無くせば解決?」


「ええ、そのはずです」


「ただ……これを完全に消失させることができない……」


「というと?」


そう言うと、アルスさんが魔法式の前に行く。


「闇夜を切り裂け……【シャインエッジ】!!」


そう言うと、魔法式の中にあった"異物"の一つを砕いた……しかし……


「うわ! 他のところが……!」


その他3つの"異物"が青黒く光り、すぐさま"異物"を完成させる。


「つまり、こういうことです……いくら破壊しても、すぐさま再生するんです……」


「ということは……」


考えられるのは2つ。一つはベル魔法そのものを破壊する方法……ベル魔法がなくなり少しは不便になるだろうがいけそうではある。

もう一つは……全ての"異物"を一気に破壊する方法……ただ難易度が恐ろしく難しい。


「一気に行くのは難しいよね……」


「えぇ……4つ全てとなるととてつもない集中力と時間が必要ですし……一瞬となるとかなり厳しいですね……少なくとも1人でするのは難しいと思われます」


「うーん……そうだよねぇ……」


うーん……どうすれば……


そんな時、ふとレイちゃんが呟く。


「なら……みんなで一斉に解除すればいいじゃないでしゅ?」


みんなで……一斉に……

私とネストくんとアルスさん、3人同時に叫んだ。


「「「それ(です)!!!」」」


「でしゅ!?」


そうか……そう難しく考えることはない……単純でいいんだ……!


「だとしたらだ……無くすには魔法に関しての一定以上の知識を持つものかつ、闇魔法と光魔法を扱える者が4人要る……俺とアルスは確定だとして……後1人が必要だ……」


「1人? 2人じゃなくて?」


「私であれば二つ同時に解除できます。流石に4つ同時は無理ですが……」


「まじすか……」


「魔法式の理解と繊細な魔力操作。これがアルスが最優秀生徒と謳われる理由の一つだ。」


なるほど……


「だとしたら、後1人だけど……」


私とレイちゃんはできない。どちらも闇魔法や光魔法に疎い。


「他の生徒は……もういなさそうでしゅね……」


時刻は夜の11時半。もう生徒たちは寝る時間くらいだ。むしろいる方がおかしい。そんなレベルだ。


「先生に頼むのは……」


「無理だな。俺の知る限り、この学校で闇魔法使いはアルト先生ただ1人だ。俺たちはアルト先生を疑っている。頼るわけにはいかない。」


「光魔法の先生とかは居ないの?」


「光魔法の先生は……居ないですね……光魔法使いは、進路先として魔導学府の官僚になることがほとんどですので……」


なるほど……それで……


「うーん……だとしたら困ったな……人がいない……」


どうしたものか……いっそのこと、私が魔法をコピーできたらな……


そんなことを考えていると、私の画面(しかい)にあるものが表示された。

それはUIであった。UIには短くこう書かれている。


〈鏡洛魔法【イミテーション】を獲得しました。〉


ん……? なんだこれ…………?

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