第十九害 いざ、図書館に
私たちは、降りるために、対角の階段のほうまで来ていた。
「暗い場所だねぇ……【ライトアップ】」
魔法を使い、辺りを照らす。
階段の下は、5階までは繋がっていることが確認できたが、それより下の道は照らすことができず、繋がっていることは確認できなかった。
「うわぁ……何も見えない……」
「ほんとにこの下に階段あるの?」
じゃきーちゃんも不安になっているようだ。
「王子、どうなんや?」
「僕様に命令するナ! ……だけド、確かにおかしいナ……まさカ……アンティラの仕業カ……?」
王子が何かを呟く。
「アンティラ……? 誰それ」
私は、気になった言葉、「アンティラ」について、王子に聞く。
「アンティラ……〈四天蟲〉の一人ダ……この街、そしテ、このお城を作った建築隊長でもあル」
「……!」
四天蟲……肩書き的に、この国でトップの実力のやつだよね……
「四天蟲……またその肩書きかいな」
「それって、前に倒したハニークェリアってやつと同じやつ?」
じゃきーちゃんと龍馬くんも、それぞれ違った反応をする。
「そうダ。我が父上……つまリ、我が国の王、「シントシード」が選んダ、僕様を護衛する戦士たちであリ、この国の中でモ、屈指の戦闘強者……というわけではないガ、強いと言えば名が上がる筆頭候補でもあル」
「なるほどね……」
それで前は命令してたりりしてたのか。
「んで、そのアンティラってのは、どんなことをするのが得意なの?」
じゃきーちゃんが、王子くんに聞く。
「それハ、建築物を建てることダ。壁を作ったリ、床を作ったりするのが得意ダ」
「なるほど……そうなると確かに……ぽいかも」
じゃきーちゃんが呟く。
王子の発言、そして城内の様子から見ても、そのアンティラってやつの仕業であることは間違いないだろう。
「つまり、四天蟲は全員敵……ってことでいいかな?」
「そう考えた方が早いやろうな。わて達を襲ってきたあの蜂の女も、四天蟲ってやつやったしな」
私たちは、敵に対する認識を共有する。
さぁて……頑張っていきますか!
ということで、私たちは階段を降りる。
幸いにも、5階の扉へは繋がっており、開いて入れそうではあるが、やっぱりと言うか、4階よりも下側へは通れないようになっていた。
「なんか……壁みたいなのがあるね」
「アンティラの仕業で間違いないナ。僕様に内緒でこんなことをするとハ……」
私たち一向は、6階から降りて、五階にある図書館の前へと辿り着く。
「さて、ここからが図書館か」
「なんかヒントが隠されてるでしょ! こんなところ!」
「そうやとええな。ま、あんま期待はせんと行こか」
私たちは、扉を開けて図書館の中へと入る。
図書館は、見た目よりも天井が高く、様々な本が並べられていた。
「わぁ……たくさん本がある……探すの大変そうだなぁ……」
「こういう時は、手分けして探した方が良さそうね」
「まぁ、せやな。んで、何を探すんや?」
あ、たしかに。何を探せばいいんだろ……
「とりあえず……この国の歴史と、王様の暴走について載ってる可能性と……えっと……」
そんな時、王子が言う。
「この国の歴史であれバ、歴史のところにあル。覚えておケ」
「王様の暴走については?」
「僕様もよくわからン! わかっていたらこんなところには寄っていなイ!」
「たしかに!」
じゃきーちゃんと龍馬くんが溜息をする音が聞こえた気がした。
「さて、早速探そか。とりあえずありそうなところを片っ端からみてけば見つかるやろ」
龍馬くんの掛け声で、私たちは捜索を開始する。
私が来たところは、"生物史"と書かれた場所であった。
「うーん、どこかなぁ……」
私の見立てでは、ありそうなんだけどなぁ……
そんな時、私の視界の端に、何かが光ったような気がした。
「ん? なんだろ……」
わたしは光った場所を見る。
そこには、「病気ではない 食い患いについて」という名前の本が置かれていた。
「これか……? 食い患いって書いてるし……」
光ったのは何……? もしかして、重要なヒント的な……? 可能性はあるか……
他にも探してみたが、結局有力そうな本は、あの光ったような気がする本だけであった。
わたしはみんなの元へと戻る。
そこには、本を持ったじゃきーちゃんと、王子を持っている龍馬くんが居た。
「おイ! はなセ! 暑苦しイ!」
「わての身体が暑苦しいいうんか!? 心外やなぁ。わてはクールな男として有名なんやが」
「クール? どこが」
「んな……じゃきーもそんな言い方するんかいな。泣いてまうで?」
「その呼び方で呼ぶな!」
……漫才でもしてるのかな?
「みんなー、お待たせー」
「ミライ、おかえり。何か見つかった?」
「うん! もちろん!」
「ほな、情報交換と洒落込もうやないか」
私たちは、情報を交換することになった。
最初に喋ったのは、じゃきーちゃんだ。
「とりあえず……私はさっき言ってた「蟲地王国の歴史について」って本を見つけた。内容はまだみてないけど」
そう言って、抱えていた本を私に見せる。
「おぉ! ナイスじゃきーちゃん!」
「ん……まぁね……」
じゃきーちゃんは少し照れ臭そうに微笑む。
やっぱアイドルなんだな。しっかり可愛いとこあるじゃん。
「んで、早く言いなさいよ。龍馬」
先ほどの表情から一転、龍馬くんに対してキツく当たる。
わぁお……ほんとにアイドル?
「なんや、キッツイ言い方やなぁ?」
「当たり前でしょ!? あなた何も見つけてないじゃないの!」
「え、何も見つけてないの?」
「まあ、わても頑張ったんやで? でもな、めぼしいものは見つからんかってんや。許してくれてもええやろうに」
なるほど、まあ仕方ないよねぇ。
こんなに本があるのに、その九割は関係ないものだし……
「許しません」
「なんでや!」
じゃきーちゃんは龍馬くんに厳しいらしい。
可哀想に。龍馬くん。
「南無南無……」
「おいそこ、なにわてを殺そうとしとんねん。それより、ミライはなにを見つけたんや?」
おっと、私に話が来たか。
まあ私は見つけてるので、何も文句を言われる筋合いはないのだ。
私は、見つけた本について話す。
「……なるほどな。まあまずは読んでみないことにはわからんやつやな……」
「このゲーム、本に色々書きすぎなのよね……絶対ゲーム開発側に本好きか攻略本好きがいるでしょ……」
それは少しわかる。
私たちは、本を読むため、図書館の一角にある、机と椅子が置かれている読書スペースらしき場所へと行くことにした。
「さて、先にどっちから読む?」
「まあ、じゃきーが見つけたやつからでええんちゃうか?」
「だから名前で呼ぶな!」
「まあまあ……とりあえず、読もっか」
私たちは、本を開く。
「蟲地王国の歴史について」
グラスノア蟲地王国は、大陸の西中央に位置する王国である。
その始まりは、とある王様の誕生からである。
王様の名前は「シントシード」と言い、その名は代々襲名制になっている。
そして、王様が代替わりする周期は、60年である。
現在のシントシード王は13代目であり、次期王として、ディアドホス・グラスノアが存在する。
グラスノア蟲地王国に隣接する国として、迷いの森の国『イラベスティア獣王国』、未知と発見の国『インベンティア科学王国』、娯楽の国『フラントル共和国』などがある。
また、この国は砂漠、熱帯雨林、大河、山脈という過酷な環境に囲まれており、国境では迷いの森、雪原、汚染地域、山々、平原と隣接している。
この国の主な都市として、王都である『グラートセバル』と第二都市である"砂漠の都"『クグルシカ』がある。
この国は、特にイラベスティア獣王国と親交を結んでおり、最近では、お互いの特産品を送りあったり、蟲地王国の王子と獣王国の王女を交換留学させたりしてもいた。
特に恋仲に発展したという報告はない。
…………あれ、これもしかして、結構やばい資料?
さて、なんか変な情報が出てきましたね?
次の話にでる本の内容、結構大事かもしれません
ここで、フログリの裏話!
(本編中に出ることがないと思うので言います。)
ここで出てきた交換留学したという王女と王子。
王子はもちろんディアドホス・グラスノアくんです。
では王女の方は?
そう、レイです。