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フロンティアグリーディア〜今日と今日から〜  作者: 無食子
暴れる彼方に怒りを込めて
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第十八害 休息に、朝飯に

「ふわぁ……もう朝か……」


あの大脱走を成し遂げた後、私は普通に寝た。

丸一日……いや、それ以上に活動していた頭は、もう限界状態だったようだ。


「あんだけ長期ログインしたのは……初めてかもしれないな」


しかし、ゲームで寝る感覚というのに初めて遭遇した。一瞬ではあったが、ちゃんと寝た感触がしたのは、少し気持ち悪い。


「あぁ言うところも作り込んでるっていうのが、怖いところだねぇ……」


私が知る限り、このゲームの開発会社である「株式会社 シリウス・エンタープライズ」が手がける代表ゲームは、このゲームだけである。

今後もし、他のゲームを出すとするならば、こんな感じのリアリティが沢山出てくるのだろう。


ひぇ〜、末恐ろしい……


ゲーム好きとしてはとても楽しみではあるが、普通の人間からしてみれば、リアルすぎるというのはなかなか怖いものである。


「不気味の谷現象みたいな? そんな感じなのかもね」



とりあえず、ベッドから身体を起こした私は、ご飯を食べるためにリビングへと行く。


「お母さん、お父さん、居る?」


どうやら、居ないようだ。

おそらく、一階にある売り場とかにいるのだろう。


八月ではあるが、両親にとって今は営業日だ。

八月と十二月と一月は一番の稼ぎ時である。

故に、その時期になると忙しなく仕事をするのだ。

それに、ゲーム機の発売やソフトの発売なんかによって、仕入れなどもしないといけない。

最近はDLソフトが多いため、プリペイドカードを買う人が増えてはいるが、物理的なカセットが欲しいコアな……いや、生粋のゲーマーもいる。

そんな人のために、うちの店はあるのだ。


「ご飯はあるのかな……っと」


机の上を見る。

そこには、達筆な字で「鏡花の分」と書かれた紙と、ラップに包まった朝ごはんがこんにちはしていた。


「お母さん……いつもありがとね」


冷えていた朝ごはんをしっかりと温め直し、盛り付ける。

そして、ご飯をよそい、水を入れ、お箸を取り出す。


そうして席についた私は手を合わせ、日本人特有のあの言葉を言う。


「いただきます」


一口食べると、それが母の味であるとすぐに認識する。


「ん、美味しい〜」



ご飯を食べながら、情報収集をする。

私が、一人で食べる時の癖だ。


何か考えながら食べないと、食べるスピードが遅いんだよね……人がいるなら話せるからいいんだけど……


「そういえば、景兎ってなにしてるんだろう……」


私は、あの日以来離れ離れになっていた景兎に、連絡を取る。


反応してくれたら嬉しいけど……どうだろう……


意外にも、すぐに反応が返ってきた。


「わりぃ、まだ蟲地王国にもどれそうにねぇわ」


その一言だけが返ってくる。


「なにそれ〜、まだ私あの蒸し暑いところに居ないといけないわけ〜? 早く合流したいんだけど〜」


まあ一応王子の部屋で終わったし、安全圏なはずだから、なんとかなるか。

それに、私にはじゃきーちゃんと龍馬くんがいるし。


そんなことを思いながらご飯を食べていると、チャットが届いていることに気づいた。


「あれ……あー、旅虹者(アイリスライゼ)のチャットに何か来てる」


私はチャットを覗く。



ファイアワークス『みんな今フログリ内でどこにいる? 私たちに会いたい人がいるらしいんだけど』


ネイチャー『すまん、俺は今大会用のゲームしてるから今はログインできない』


アグリ『私とキョートさんは今、獣王国です!』


ファイアワークス『あれ、キョートくん? ミライちゃんとは一緒じゃないの?』


キョート『ちょっとトラブルで離れ離れになった。多分ミライは今、蟲地王国ってとこにいる』


ファイアワークス『うーん……獣王国も蟲地王国も今行きたくないなぁ……私は今スタルトラだし……それにネイチャーくんもログインしてないし……まぁ、今回は見送りかな』


キョート『てか、何用なんだ? その呼んでるやつは』


ファイアワークス『なんかキョートくんかミライちゃんに用があるとかなんとか言ってた気がするよ。後新興クランである旅虹者(アイリスライゼ)と話してみたいって言ってるかな。まあ、ちょっと断り入れてくるから、安心しといて〜』


キョート『おぅ、よろしく』



…………昨日一日でこんな会話してたのか……

獣王国……聞いたことあるな……確か蟲地王国と戦争している国だっけ……

てことは今、キョートは敵対国である獣王国にいるってことか……行き方とかわかんないな……


「てか、なんでキョートはアグリさんと一緒に同じところに居るのよ……!」


まさか……いや、そんなことないか。


……まぁ、詰めるのは後にするか。

今は他のことをする必要があるし……


そんなことをしていると、いつの間にかご飯を食べ終わっていた。


「ごちそうさま」


お皿を洗い、自身の部屋へと戻る。


「さて、二人にとりあえず言っとこう……っと」


私は、新しくできたグループチャット『牢獄から脱出し隊』に今からログインする旨を伝える。

どうやら、このチャットが本当なら、龍馬くんは既にログインしているみたいだ。


あの人……いつ寝てるんだ……?


まあそんなことはさておき、とりあえず私は、頭に4DRデバイスをつけて寝転がる。


「さぁ、入りますか」


---Log In


「おはよー! 龍馬くん!」


私は元気よく挨拶する。


「なんや、えらい元気やな?」


「まあ、何時間も寝たからね、これくらい元気になるってもんですよ!」


しっかり休んでしっかりご飯食べたからね!


「なるほど、そういうことかいな。あ、もうそろあいつも来るみたいやで?」


「え、ほんと?」


私はチャットを見る。


そこには、『私ももう少しで行く』と書かれていた。


「じゃきーちゃんも早いなぁ、まだ朝の11時半なのに」


「いや、十分遅い時間やろ。わては2時間前にはもうおったで?」


「え、早っ。そんな早くきて何をしてたの?」


「この階の下見とかや。わてができるのはこれくらいしかないからな」


「真面目だねぇ……」


キョートだったら絶対しないのに……すごく真面目だ。


「まあ、わての使う剣の道場では、こんなん日常茶飯事やったからな」


なるほど……だからここまで早くに起きれるんだ。


「と、そろそろ来るんちゃうか?」


「え?」


私が辺りを見渡す。

すると、天皇河邪鬼子……じゃきーちゃんが姿を現す。


「おまたせ、待った?」


「うんうん? 私は待ってないよ」


「わては随分と待ったで」


「あんたの話は聞いてない」


「なんや、ほんま……ひどい奴やなぁ」


「まあまあ……」


そんなことを話していると、ベッドの方から物音が聞こえてくる。


「オ……お前達! ようやく帰ってきたナ! 僕様一人じゃ寂シ……ではなク! 心配であったゾ!」


それは王子であった。

王子は目覚めると、すぐに私たちの方へと来る。


「まあ、人は揃ったみたいだし……とりあえず、今後の流れについて話し合おう」


私たちは今、6階の王子の部屋にいる。

龍馬くんの調べで、この6階のマップ全容はある程度わかった。


「階段は二箇所。わてらが登ってきたところとその対角上にもう一つや。一応しっかり機能はしているみたいやから、降りるとしたらここから降りることにはなりそうやな」


「なるほど……このフロアには他に何か見つけた?」


「いや、特になかったな……開けれる部屋は全部開けたけど、わてらに役立ちそうなものはなかったわ」


つまり、この階は特に何もなし……か。

まあ、王子の部屋という莫大なアドバンテージを得れたのは行幸だろう。


「王子、下の階にはなにがあるの?」


じゃきーちゃんが聞く。


「うム。僕様が知っているのハ、図書館があることだケだ。よくそこデ、本を読み聞かせてもらっていたからナ」


「なるほど、図書館か」


図書館であれば、たしかに何かしらの情報が得れるかもしれないな……


「よし! じゃあ次目指す場所は下の階! 図書館ということで!」


「せやな」


「そうだね」


私たちは、王子の部屋を出る。

そしてそのまま、図書館へ向けて、階段まで前進する。

そういえばフログリを作った会社の名前出したことなかったなと思いましたので、出します。


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