表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フロンティアグリーディア〜今日と今日から〜  作者: 無食子
暴れる彼方に怒りを込めて
109/150

第十七害 休息に群がって

遅くなりましたが、お待たせしましたー!

〈四天蟲〉というちょっと強そうなモンスターの一人、ハニークェリアを倒した私たち一向は、今、階段を登っている。


「……おかしいでしょ……」


じゃきーちゃんが呟く。


「……まぁ、そうだね……」


「なんや、こんなことで根を上げとるんか?」


「だぁかぁらぁ! こんなに階段が長いことがおかしいって言ってるの!」


私たちは、今も絶賛、階段を登っている最中であった。

あの後、すぐさま一階に行く予定であった私たちであったが、その道が壁で封鎖されていたのだ。


「しゃあないやろ? 封鎖されてたもんはどないしようもないんやから」


「そもそも、私の魔法でも、龍馬くんの剣でも、じゃきーちゃんの矢でも壊せなかったからね。あれはどうすることもできないかなぁ……」


そして、連続して2階、3階へと上がっていたが、そこも壁で塞がれていた。

故にまだ、私たちは階段を登っている……というわけだ。


「ちなみに王子、ここは何階建てなの?」


「ふム。僕様の家ハ、全部で6階建てダ! そして僕様の部屋ハ、その6階にあるゾ!」


先ほどよりも若干低いテンションではあるが、相変わらずのハイテンションで王子は話す。


「え……てことは……」


「……もしかしたら、最大6階まで行かないといけないかもね……」


「それに、6階も開いとるとは限らんから、戻る可能性も考慮しとかなあかんな?」


「……もう……」


じゃきーちゃんが溜める。


あ、これ不満がたまり切ってる時の合図……


「なんでこんな目に遭うの〜〜〜〜!!!!」


…………


………………


……………………


どうにか、6階へと上がってきた私たち。

幸いにも、6階はしっかりと開いており、道がまだ続いていることに一同は安堵した。

特に安堵したのは、じゃきーちゃんだろう。


「……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」


「大丈夫? じゃきーちゃん」


「一応大丈夫……ありがとう、ミライ」


私はじゃきーちゃんにポーションを飲ませ、スタミナを回復させる。

このゲームで息が切れるモーションが挟まるのは、スタミナ切れかそういう特殊異常状態のみだろう。


「ほんとに……スタミナ特化ビルドにすればよかった……つくづく反省……」


「……このゲームって、そう簡単にリビルドとかできるの?」


「そう言う話は、わてはしらんな」


龍馬くんはあんまり知らないみたいだ。

なら知ってるのはじゃきーちゃんだけか……


「あるわけないでしょ? そんなのがあったら、リビルドしまくって、とっくの昔に最適構築とか編み出されてるから! まぁ、今でもだいぶ開拓されて、最適構築とかはできてきてるみたいだけど、あと1年は短縮できたでしょうね、そんな機能があれば」


「なるほどね……」


まあ、たしかにリビルドとかあったら楽に色々出来る……そして自由度も増加する。そういう自由度を撤廃……というか制限しているのは今どきのゲームとしては少し異色であることには間違いないだろう……


「そんなごちゃごちゃ言ってんと、早よ安全なエリアか下に続く道を探すで」


「わかってるわよ!」


私たちは、龍馬くんを先頭にして、6階と思われるエリアを進み歩く。

スタミナは、歩くだけだと消費しない。

それに、罠などがあったとしても、冷静に対処することが可能だ。


「てか、スタミナってそんな早くなくなるものなの?」


私はじゃきーちゃんに聞く。


「私の場合、ステータスをTEC(技巧)STR(筋力)、それからMST(精神力)に割いてるから、他のステータスはイマイチなの。ほら」


そう言って、じゃきーちゃんは自身のステータスを見せてくる。


じゃきーちゃんの全体的に私より数倍高いステータスをしていた。

当たり前だ。レベルが違うのだから。


「ほへぇ……なるほど……ん? この『副職業:アイドル』ってのは?」


私がそのことについて聞くと、少し慌てたような声色で話す。


「え、あ……ちょっとこれは……あはは……ちょっと忘れて……!!」


「えぇ〜? 良いじゃんかぁ〜、教えてよぉ〜?」


私は景兎を揶揄っている時と同じような声色でじゃきーちゃんに接する。


「それは……その……つい出来心で……」


じゃきーちゃんが言うには、とある作業をするために、配信裏で準備をしていた時、街の住人(NPC)から職業:アイドルの存在を知ったのだと言う。


「ネットにも転がっていないような情報だし……独占できるし……なにより、それに少し好奇心がそそられたというか……とにかく! このことは誰にも言わないで!」


じゃきーちゃんが必死に口封じをしてくる。


「別にわては言わんて。まあ、そこのミライはちょっとわからんけどな」


「私も言わないよ。ちょっと反応が面白かったからからかってみただけだし。それに、他人の秘密を勝手に暴露するような人じゃないからさ」


「……ならいいけど」


少ししょぼくれた声でじゃきーちゃんは喋る。


「そんなに気になるなら、わてのも見せたるわ」


そう言うと、龍馬くんは自身のステータスを開示する。


「ほら、これでおあいこやろ?」


龍馬くんは、じゃきーちゃんと同じレベル100だった。


おぉ……まじか……

まあ、強いもんね……でもあれだな……私ちょっと疎外感あるな……


そんな風に思いながら龍馬くんのステータスを覗く。

すると、この世界では見たことはない文字が見える。


「出身:鬼冥国、種族:剣鬼族? なにこれ、初めて聞く」


「そう言うところがあるんや、剣鬼族ってのは、上位種族やな」


あー、ファイアワークスさんみたいなやつか……このゲームも奥が深いんだなぁ……


「鬼冥国っていうのは、職人と刀の国と呼ばれてるところなの。和風な建物が特徴的で、職人さんや刀使いが生まれる地とも目されてるのよ」


じゃきーちゃんが説明してくれる。


「へぇ〜、物知りなんだね、じゃきーちゃん」


「ま、まぁ……! 上級プレイヤー(廃人)の間では常識的なレベルだから……! まあ、そう言うところがあるって認識でいいと思うけど」


なるほど、結構な常識なんだ。

あれだな、こういうのも覚えていかないとな。


「ミライのステータスも見してよ」


じゃきーちゃんが言う。


「え? 私?」


「当たり前でしょ! 私たちだけ見せてあなたは見せないって不公平じゃない?」


「お、ほなわても便乗させてもらうわ」


見せたのはそっちじゃん……


「え〜、まぁいいけど……面白いものもないし……」


私はステータスを開示して、二人に見せる。


「ミライは……ステータス低いね……」


「まぁ、まだレベル60になりたてだからね。そりゃ低いよ」


「にしてもよ。私がこのくらいのレベルの時でも、もうちょいステータス高かった」


「そうかぁ? わてはこのレベルやった時のステータスとか、もうこれっぽっちも覚えとらんわ」


それぞれ違う反応を見せた。


え? 私できない子ってこと? 生まれが貴族の子供だからか……?

よく言うもんね、2世キャラはあんま強くないって。

えー、ハズレを引いたってことぉ……?


「まあ、わたしもこの時の記憶は薄いから、絶対に低いってわけではないから、そこまで気にする必要はないよ」


「……みんなこの時の記憶が薄いって言うけど……レベルカンストしたの何日前なの?」


「え、半年前」


「半年前やけど」


私は頭を抱えた。

こんなガチ勢達に囲まれているのか。私はなんて幸運で、なんて不幸なんだろうか……と。


「おまえたチ! 何ぺちゃくちゃ喋っていル! 僕様の部屋についたゾ!」


王子の言葉と共に、全員王子の部屋へと入る。

中はTHE・男の子の子供部屋的な内装であるが、しっかりとキングサイズのベッドが置かれているなど、要所要所で王子の部屋というのが窺えた。


「ほんとに王子様だったんだ……半分信じてなかったよ」


「なニ!? お前、無礼だゾ!」


そう言う王子をよそに、私たちは視界に表示されたとある文字列に目がいく。


「〈リスポーンポイント更新〉……やっと、やっと脱出できたぁ!!」


「ほんとに……あの牢屋にもう戻らなくて済むのね……」


私とじゃきーちゃんは、安堵の声を漏らす。


「さて、こっからどないするんや? わてはまだまだ探索できるけど、この城、わてが来た時よりも随分と様変わりしてるみたいやからな」


龍馬くんは、刀と私たちを交互に見つめ、話す。


「ちょっと私は休ませて欲しい……もう丸一日くらいしてらのよ……?」


あ、噛んだ。


「……じゃきーちゃんも疲れてるみたいだし、今日は一旦解散かな。私もちょっと……長時間すぎて……がたが……」


「そうかい……まあ、わてはまだ残って色々してるわ。次はいつくるんや?」


「そうだね……明日のお昼とかにするかな私は」


「なら、私もお昼頃にしようかな」


「うーん、曖昧やなぁ……もうちょい確定した時間は言えへんのか?」


「いやあはははは……」


明日の予定は特にないけど、疲れで寝てるかもしれないからなぁ……確定的でないことは言えないや。


「グループチャットを作れば、いいんじゃない?」


じゃきーちゃんが呟く。


「あ、その手があったか!」


「わぁ! 急に大きな声出さないでよ!」


「あ、いやぁごめんごめん。でもナイスアイデア!」


グループチャットがあれば、たとえログインしていなくても返事ができるからね!


「なるほど、そう言うことなら、まずはフレンドになろうや」


「うん、そうだね。はいこれ、私のID」


私は、龍馬くんとフレンドになった。

じゃきーちゃんも龍馬くんとフレンドになったようだ。


「じゃあ、グループチャットは私が作っとくから、ミライと龍馬は承認してね」


「おっけー!」


「まあ、わかったわ」


そんなこんなで、私達は、この王子の部屋で解散した。


さて、次こそ王の元へ行けるかな……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ