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フロンティアグリーディア〜今日と今日から〜  作者: 無食子
暴れる彼方に怒りを込めて
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第十六害 もちろん蜂には棘がある

寝ることにより一日遅れて出すことになりました。

そこもどうやら顕在のようです(涙)

「フッ……穢らわしイ……すぐに眠らせてあげル……」


その言葉が、戦闘開始のゴングとなった。


「お前達! 気をつけロ! ハニークェリアは睡眠蜂方(スイミンメソッド)の使い手ダ! 眠らされたら何もできないゾ!」


「なるほど……あの時の眠りはそう言うことね……」


じゃきーちゃんが言う。


「ほな……さっさと斬り伏せた方が良さげってわけやな……」


私たちは蜂女の行動に……蜂女は私たちの一挙手一投足に……細心の注意を払っている。

お互い最初の行動は慎重気味だ。


「眠りなさイ! 〈ハニースリープ〉!」


先に動いたのはハニークェリアだった。

黄色と黒色で反射する薄い煙がハニークェリアの周りを巡回する。

その煙は、ハニークェリアが剣を突き刺すと共に、突き刺した方向へと向かってくる。


「指向性アリの睡眠煙……厄介……!」


「煙なら! 【ウィンドカッター】!」


風の刃が煙を切り裂く。

が、しかし、その風の刃は途中で止まり、そして消滅してしまう。


「んな!?」


「【ウィンドカッター】を消滅させた……密度がすごいのか……はたまた特殊な何かか……」


じゃきーちゃんはまたまた考え事をしている。

そんな中でも、徐々に煙は迫りつつあった。


「終わりネ!」


「それはどうやろうな?」


龍馬くんが、私たちの前に立つ。


「行くで……? 桜華流 三の型……」


「無駄ダ! 私の〈ハニースリープ〉ハ、如何なる斬撃モ……!」


「〈乱れ斬り〉」


その言葉と共に、龍馬くんは踏み込む。

瞬間、一筋の光が見えたかと思えば、消え、再度別の方角から光が見え、そして消える。

それが終わったかと思えば、剣を納刀するような音が辺りに木霊する。


気がつけば、迫っていたはずの煙は綺麗さっぱり晴れていた。


「……これであんたの自慢の技が破れたっちゅうわけや。さて、次はどないするんや?」


龍馬は蜂女を見つめ、ニヤリと笑う。

その表情に、蜂女は怒りを露わにする。


「クソガキ……! さっさとディアドホス王子様を返セ!」


「はっ……ならわてを力づくでぶっ飛ばしてみぃ!」


龍馬は蜂女に接近する。

それに続いて、わたしとじゃきーちゃんが構えを取る。


「あんなやつを陣頭指揮に据えるのは癪だから、わたしが指揮を取る! ミライ、あなたは出来るだけ蜂女に近づいて! なるべく弱点を見つけて欲しい!」


「わ、わかった!」


さて、近づいた後は……どうするか……


私が前に視線を向けると、そこには殺陣をしあっている二人の姿があった。


「あんタ……なかなかの手練れネ……」


「あんたもや……わての剣を捌くほどの腕前、確かなもんや」


(だけド……私の方が一枚上手!)


私の視線に、はっきりと写った。

蜂女のお尻の方にある針が、だんだんと伸びていっている様を。

その針は、まるで尻尾のような長さになっており、あれを至近距離で避けるとなると、かなりの反射神経とスピードを要求されるだろう。


「危ない!」


私は咄嗟に叫ぶ。

その言葉に気づいたのか、龍馬がこちらを少し振り向き、続け様に蜂女の尻尾を見る。


「なんやと……!?」


「死ねェ!!」


蜂女の針が、龍馬の身体を貫く……


よりも前に。


「一か八か! 鏡洛魔法【ミラースワップ】!」


私は、頭に思い浮かんだ言葉を唱える。


「……何が起こったんや……?」


「……! ミライ!」


「……どういうことダ……? 何故お前が私の攻撃を受けていル……!?」


わたしは、龍馬が受けるはずだった技を喰らっていた。


「くっ……痛っ……いけど……抑えた……」


わたしは、刺さっている毒針を両手で抑え込み、抜かせないようにする。


「……!? 離しなさイ! 私の高貴なる針に触れるナ!」


「もう離さないよ……あんたの弱点……この針だろ?」


「……!!」


蜂女は驚いたような顔をする。


「その顔……やっぱそうなんだ? 普段は伸ばさず、チャンスになった瞬間だけ伸ばす……それがあんたの生態なんだろ……?」


「なラ、毒でも喰らいなさイ! 〈ハニーポイズン〉!」


「んなっ……くっ……!」


私の身体に何かが注入されるような感覚に陥る。

全身を駆け巡り、あらゆるところを痺れさせ、定数ダメージを発生させるその正体は、紛れもなく毒と呼べるものであった。


「な……るほど……これが……あんたの奥の手ってこと……ね……キツいけど……耐えられないものでもない……」


「そウ? なラ、これはどうかしラ……! 〈ハニースティング〉!」


レイピアによる連続突きと、毒による定数ダメージがわたしを襲う。


防御に振ってるとは言え、流石にきついもんはきつい……


「HPを0にして、手を離させようって魂胆か……笑わせるじゃん……」


「うるさいわネ! お前から先に眠りなさイ! 〈ハニースリープ〉!」


先ほどの睡眠攻撃が私にめがけて襲ってくる。


「なるほど……なら……私も少し本気を出そうかな……」


私は、左手に藍い鍵を持ち、手についている手錠に差し込む。


「さぁ……【開錠せよ】(アンロック)!」


藍い光が眩く。

その光に、蜂女は思わずレイピアの向きを上側へとやってしまう。


「んナ……!? なんだこの光……!」


そして、わたしは『神権:憂鬱状態』へと変身した。


「なんだその姿ハ……!」


「……さぁ? でも、私だけに気を取られても良いのかな……?」


「なんだト……!」


蜂女が辺りを見渡す。

すると、すでに先ほどいた場所から剣士の姿がいなくなっていることに気づいたのか、驚きの顔を見せる。


「んナ……! あの男は一体どこニ……!」


「正解はここや……!」


蜂女の背後から声が聞こえる。

そこには、刀を構えた龍馬が立っていた。


「桜華流 一の型 〈一刀両断〉!」


「なニ……!?」


龍馬の刀が淡く光る。

次の瞬間、蜂女の胴体と尻尾のような針が二手に別れていた。


「うぎゃぁぁぁア!!」


あまりの痛みからか、それともショックか、蜂女は叫ぶ。


「【憂滅弾】!」


私は蜂女に向かって放つ。


「チッ……!!」


蜂女は、その攻撃を交わし、包囲網から脱出しようとする。


「一旦態勢ヲ……」


「〈一射一殺〉!」


一つの矢が蜂女の左肩へとブッ刺さる。


「ふぎゃァ!?」


「簡単に逃すと思ってるの? 更に行くよ、〈三矢撃ち〉!!」


「ほならわても……〈縮地〉!」


じゃきーちゃんの矢についていくかのように、龍馬くんが動く。


「あんま使わん技やが……」


そう言うと、龍馬さんは刀を鞘へと戻す。


矢は蜂女の右肩を目掛けて放たれている。

蜂女はその攻撃に反応する。


「そんな攻撃……!」


「当たるよ、〈ホーミング〉」


蜂女が避けようとしたその矢は、突然軌道を変え、蜂女の右肩へと綺麗に命中する。


「ぐはッ……!」


「行くで……〈抜刀〉!」


龍馬さんの刀が淡く光る刃を見せる。


「くそガ……! 〈蜂逃避〉(ハニークェリア)!」


「逃げの姿勢一手なんて、対処が容易だね? 【憂鬱空間(ルグブリスペース)】!!」


蜂女の動きが急激に悪くなる。


「……なんダ……!? なぜこんな動けなイ……!?」


「それが、「罪の力」だからね……?」


「さぁ、ぶちあたりや!」


龍馬さんの刀が蜂女へと接近する。


「クッ……クソガァ!!!」


蜂女は真っ二つに切断された。


〈Voice:シンボルモンスター 《四天蟲》ハニークェリアを撃破しました。〉


「よし! 撃破!」


「さっさと次の場所探索しにいきましょう」


「せやな」


私たちは、奥にあった階段を使い、上の階へと進む。

あの蜂女が正しければ、次は地上階……一階だろうか。

とにかく、私たちは上の階へと向かった。


「ハニークェリア……」


後ろから、そう呟く王子の声が聞こえたような気がしたのは、気のせいだったのだろうか。

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