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フロンティアグリーディア〜今日と今日から〜  作者: 無食子
暴れる彼方に怒りを込めて
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第十五害 抜け出す度にユニークに

私たちは牢屋から出た後、警備員を私たちの牢屋へと押し込む。


「これでしばらくの間はだれも来ぉへんはずや」


龍馬さんがそう話している横で、じゃきーちゃんが警備員を物色する。


「じゃきーちゃん……なかなかアウトローだね」


「こういう時は使えるものを見ておかないと。もしかしたら、後で役に立つかもしれないでしょ?」


「まあ、確かにそうなんだけど……」


こんなところ、ファンの人が見たらどうするんだろ……


「……まあでも、私も物色しよ〜」


そんなこんなで、私たちは警備員から警備服と手錠らしきもの、警棒、そして謎のスイッチを拝借した。


まあ、見た目ほぼアリだし、なんとかなるでしょ。うんうん。

いや、なんとかなっても困るのはそうなんだけど……


そして、念のために、警備員は鎖でぐるぐる巻きにしておく。


「口も塞ぎたかったけど、流石に今の装備だと難しそうね」


「せやなぁ、わてらそこまで装備が潤沢ってわけでもないからな」


なかなか怖いこと言うな……この二人。

いがみ合ってはいたけど、意外と相性自体はいいのでは……


「おイ! さっさとしないト、また増援が来るゾ!」


ディアドホス王子が元気に叫ぶ。


「そうだね、取れるものも取ったし、さっさとこんなところから出ていこう」


二人の相性とか考えつつ、私達は牢屋のある部屋から抜け出した。


牢屋のある部屋から出ると、そこに広がっていたのは暗闇に照らされた一つの廊下であった。


「さて、王子、覚えとるか? ここの地図とか」


「そんなことハ、僕様の頭の中にインプット済みダ! 何年住んでいると思っていル!」


「お、流石は王子様。城のことについては随分と詳しいんだね!」


「モ、もちろんダ! フン!」


私がおだてると、王子は鼻息をあげて自信満々な表情をする。


単純だなぁ……

なんかいずれ政略とかで狙われそう。


そんなことを思っていると、王子は言う。


「うン、こっちダ! 僕様について来イ!」


「了解! いこう!」


私たちは王子についていく。

目指す目的地は王様の部屋だ。

なんでも、龍馬さんがそこに用事があるとのことだ。


王子の案内で安全な道を歩き続けている。

どうやらこの城はかなりの大きさのようで、さらにここは地下にあるという。故に光も入ってこない。

こんな中でも王子が的確に案内できるのは、彼が〈暗視〉のスキルを持っているからだ。


〈暗視〉は、蟲地人族(インセクター)などの夜行性種族が持つことの多いスキルだ。

人間でも習得はできるが、じゃきーちゃんが言うには、入手できる職業に制限が設けられることがほとんどだと言う。

そのほとんどが暗闇に活動する職業らしいが、魔法使いはそれに該当しないらしい。

間違いなくあれば便利なスキルと言えよう。


王子の案内のもと、歩いていると、じゃきーちゃんが突然話し出す。


「……ところで、なんで王様の部屋に向かってるんですか? 龍馬(りょうま)さんは」


じゃきーちゃんが龍馬さんに聞く。


「わては龍馬(たつま)や。そこ間違えんといてな? せやな……じゃあ、逆に質問や。あんたらは、何があったら王様の部屋なんかに行きたいと思うやろうか?」


「何があったら……?」


龍馬さんの質問に、私たちは考える。

先に答えたのは、じゃきーちゃんだ。


「あなたのことだから……剣があるとか……?」


「あー、あったら嬉しいなぁ。でも不正解や」


「違うのね……」


じゃきーちゃんは再び考え込む。


「じゃあ、お金がいっぱいあるとか!」


「それも不正解や。そもそも、わてはこの世界で別に金に困ってないからな」


「なるほど……」


これも違うか……


「正解を言ったるわ。正解はな……」


龍馬さんは、言葉を溜め込む。


早く聴きたいのか、じゃきーちゃんが急かす。


「早く言いなさいよ! こっちもモヤモヤするでしょ!」


「なはは! わても一回こう言うことしてみたかったんや。許してほしいわ!」


「早く言いなさいよ……!」


じゃきーちゃんが龍馬さんの足を蹴る。


「イタタ……暴力反対やでぇ?」


「じゃあ早く言いなさいよ!」


「しゃあないなぁ……教えたるわ」


そう言うと、龍馬さんは足を少し払って答える。


「あの王様の部屋にはな。とあるクエストで使う大事なヒントが隠されとんねん」


「とあるクエスト……?」


じゃきーちゃんは頭を捻る。


「クエスト……まさか……」


それに反して、私はすぐに思い当たる。


「その名も、ユニーククエスト「蟲王への試練」っちゅう名前のクエストや」


「……! ユニーク……クエスト……」


「やっぱり……」


「せやから、わては今向かっとるっちゅうわけや」


なるほど……たしかに、ユニーククエストに関するものがあるとするならば、行くのは冒険者にとって普通のことである。


「でも、そんなこと私たちに教えても良かったんですか?」


「どうせ言わんかったら「信用ならん」とかいうてわてを切り離そうとしよったやろう。それに、わてはあんたらを少しは信用しとるつもりや。わてがこのことを話してもええわと思うくらいにはな」


「なるほど……ありがたい言葉ですね」


「まあ……そういうことなら、早く向かいましょう」


3人の意見がまとまった。

その直後、王子が突然止まる。


「……ん? どうしたの? 王子」


「なんや、怖いやつでもおったか?」


冗談混じりに龍馬が言った言葉に、王子が縦に首を振る。


直後、全員が警戒体制を敷く。


「……ボ……僕様の恐れていたことガ……」


王子がポツリと呟く。


「恐れていたこと……?」


そのことについて考える間もなく、奴らが来る。


「あラ、ディアドホス王子様じゃないですカ……こんな夜更けにどこへいこうとしていますカ……?」


その声に、聞き覚えがあった。

そう、それは私たちが牢屋へと入る前に聞いた声……

私たちを眠らせた何者かの声であった。


くっそ……何も見えない……


「こうなったのなら灯りを灯すよ! 光魔法【ライトアップ】!」


私は、周囲を照らす。

私たちの視線の先には、蜂のような見た目をした女が立っていた。

その蜂女の表情は、どこか恍惚としていて、どこか狂気に満ち溢れていた。


〈Voice:シンボルモンスター 《四天蟲》ハニークェリアが現れました。〉


「……やはりおまえカ……ハニークェリア」


「おヤ……覚えていてくれたのですネ……嬉しいでス……」


「当たり前ダ! 僕様は優秀な部下のことを誰一人として忘れなイ! それが王様として皆を導くために学んだことダ!」


続けて、王子は蜂女に命令する。


「ハニークェリア、僕様の命だ。僕様達の前から即刻立ち去レ!」


「そうですカ……ですガ、今の私は王様の直属という立場にありまス。王様のご命令内容ハ、王子様を即刻、元の場所へと戻ってもらうことでス。ですから、ディアドホス王子様の命令はお聞きできませン」


どうやら蜂女は話し合うことはできても、こちらの意見に耳を傾けることはしないようだ。


「どうする? このままだとまた元の場所に戻されるだけだけど」


私はみんなに話を聞く。


「わてはここ、正面突破でも構わんと思うけどな」


「私も。こう言うのは単純に殴るのが一番速いよ」


わぁお……イッツァアグレッシブ……


「まぁいいか……王子、こっちは戦う準備できてるよ」


その言葉を聞いてか、王子は蜂女に啖呵を切る。


「良いのカ! このままでハ、僕様の優秀な部下達ガ、お前のことを殺してしまうかもしれないゾ! 命が惜しいならここをさっさと立ち去レ!」


「ふっふっフ……私がそのような脅迫で屈するト、本気でお思いですカ? ディアドホス王子様」


どうやら、平和的な解決法はなさそうだ。


「ほんとにいいのカ! こっちは本気だゾ!」


王子の足が少し震えている。

王子は、私たちの実力を少しは垣間見たはずだ。

それでもなお、震えるほどと言うことは、彼女……蜂女は相当な強さの持ち主と言えるだろう。


「であれバ……私モ、少々手荒な真似をさせていただきますネ……!」


蜂女が、王子へと接近する。


懐から取り出したであろうレイピアが、王子を貫く……かと思われたが……


「おっと……この王子は大事な大事な重要NPCや……殺されたら敵わんで……?」


そのレイピアを、一つの剣が受け止めた。


止められたことがわかると、蜂女はすぐさま距離を取る。


「こっからは、わて達と勝負しようやないか……蜂の女さんや……」


「フッ……穢らわしイ……すぐに眠らせてあげル……」


蜂女……いや、ハニークェリアとの戦闘が始まった。

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