第十四害 牢獄迷宮にて
前回名前を出した剣士くんの名前ですが、少し変更しました。
宗雨正→龍馬となりました。
よろしくお願いします。
「さて、ここから出る方法を模索しよっか」
私たちは、話し合いをするために円を組み向かい合う。
「とりあえず、全員、今持っとるだけの手札を見せた方がええんとちゃうか? わてらが一致団結せなあかんのは周知の事実やからな」
「まあそうね……その方が円滑に事が進むでしょうし……癪だけど」
二人の言っていることには概ね賛成だ。
手札を知るのは悪いことでもない。それに、知っていると知らないでは天と地ほどの差がある。
まあとはいえ、言えない情報も多々ある……慎重に喋ろう……
「んじゃあ、私から言おっかな。私はーー」
私は、『無手情舞』の詳細な効果、そして鏡洛魔法という魔法ジャンルを隠し、他は全て喋る。
「……なるほどな、ミライって子が魔法アタッカーっちゅうわけか。そんで特殊な魔法を少しだけ使えると……」
「まあ、そう言うことになるかな」
「んで、そっちの……えーっと魔海の世界さんは?」
思わず私は吹き出した。
じゃきーちゃんのこと魔海の世界さんって呼ぶのは初めて見た。
まって震える……ふははっ……
「天皇河! 邪鬼子! それは前口上!! 変な呼び方しないで! あとミライ! あなたも笑うなぁ!!」
「あははっ! だって面白いもん!」
「……もう」
じゃきーちゃんは少し落ち着くまで深呼吸し、話す。
「私は、弓使い。弓と矢を使った攻撃が主かな。鍵開けするための何かとか一切ないから、よろしく」
「ほぉ、なるほどな……よろしゅう」
龍馬がそういうと、次に自分の話をし始める。
「わてはこの刀と……それと刀に関するスキルしか持っとらん。あと一刀流や」
「一刀流……? そこまで強くないって噂の?」
え? そうなの?
一刀流の方が強いイメージあったんだけど……
このゲームって一刀流の刀使い弱いのか……
「まあ、世間一般ではそう言われとるな。わてはこのスタイルが身に染みとるからしとるだけや」
「なるほど……ね。まあいいわ。んで、そこの坊やは?」
じゃきーちゃんが王子くんことディアドホスくんに声をかける。
「坊やくんなどと言う名でハ……!」
「どう……なの?」
「……ァ……ボ、僕様ハ! そノ……ケ、剣が使えるゾ! ……一応」
じゃきーちゃんから甘い匂いがしたかと思うと、ガミガミ言っていたディアドホスくんが大人しくなり、素直に答えた。
……え? なにした? 威圧?
「剣以外には何か使えるの?」
「ソ、それ以外は特ニ……ア、でも魔法を少しは使えるゾ! 今は使えないけド……」
なるほど……制限されてるって事なのか。
まあNPCってなんかそういう事多いし順当かな。
とりあえずは全ての情報が交換できたと言って良いだろう。
次はどう脱出するかだ……
「何か案がある人!」
「ない」
「あらへんな」
「あったらとっくに脱出していル!」
えー……?
なんで即答?
「まぁいっか……コホン! 実は、一人だけなら脱出できるんだよね。ここから」
「なニ!?」
「ほんまか?」
「そういえばそんなことを言ってたような」
そう、一つだけあるのだ。
一人だけ脱出できる方法が……
鏡洛魔法【ミラーポート】
見えている範囲のうち、好きな座標に移動できる魔法だ。
その昔、サマルテGT戦にて使用した魔法である。
この魔法は一日一度しか使えない代わりに、MP消費がものすごく少ない。
「まあ、簡単に言うと、テレポート出来る魔法があるから、それで一人だけこの牢屋の外に出れるの」
「なるほどな、なんとなくわかったで」
「それで僕様を出せばバ……!」
「ただし!」
じゃきーちゃんが少し強く発言する。
「外から開ける手段を持っていればの話だけどね」
「そうだね。わたし達全員が脱出できないと意味ないからね」
「せやな。王子は抜け駆けする癖を辞めたらどうや?」
「ぐぬヌ……僕様の臣下のくせニ……」
「誰が臣下や。わてはあんた如きに従いたくないで」
「んナ……!?」
バチバチし始めてきたところで、龍馬さんが喋る。
「それとやな、テレポートした後に出る方法、あるにはあるで?」
「……え?」
え、ほんとに? あるの? 脱出方法とか。
「鍵がないんやったら、鍵から来て貰えばええんや」
その顔は、ニタリと笑っていた。
「それについて、詳しく教えてくれない?」
じゃきーさんが言う。
流石に私も知りたいことだ。私も彼に視線を向ける。
「ええで? 二人して聞きたそうにしとるからな。わての作戦はこうや……」
私たちは、龍馬さんから作戦を伝えられる。
「……たしかに、これなら行けるかも!」
「問題は、誰が出るか……ね」
「ここはわてが行くべきや。提案者が言うのもなんやけどな」
「あなたが出るべきというその心は?」
「決まっとるやろ。いっちゃん強いからや」
龍馬さんが自信満々な顔つきでこちらを見てくる。
なるほど、そこまで断言できるということか……
「わかりました。じゃあ、龍馬さんが行きましょう」
私は、龍馬さんに対して手を翳す。
そして、手のひらに魔力を溜め込む。
「大丈夫なんでしょうね……?」
「何を言うカ! 僕様の臣下なら余裕ダ!」
「だからわては臣下やない言うとるやろ……まあええわ。ほな頼むで?」
「もちろん。行きますよ!」
私は、手を翳し、魔法を使用する。
「鏡洛魔法【ミラーポート】!!」
そう言うと同時に、龍馬さんが牢屋の外へと出る。
「なるほどな……これが特殊な魔法っちゅうやつかいな」
「ミライ……あなたもやっぱり凄いわね……」
関心深そうに自分の身体を見つめる龍馬さんと、私を見つめるじゃきーちゃん。
ちょっと見つめられるのは恥ずかしいかなぁ〜。
「後はこいつの出番やな。行くで、『カモフラージュマント』」
そう言うと、インベントリからマントのようなアイテムを取り出し、羽織る。
すると、龍馬さんの姿が見えなくなった。
「わぁ……すごいねこれは……」
「あれは強アイテムだからね……その分高額なアイテムだけど、まさかこんなところで見るなんて思ってなかった……」
ほへぇ……そんな高価なアイテムなんだ……
「ほな、準備完了や、いつでもええで」
「んじゃ次は私たちだね。じゃきーちゃん、一旦牢屋に戻ろう」
「そうだね。ミライは鎖で巻き巻きしとく?」
「いやしないよ!?」
あんなのつけたら動きづらいったらありゃしない……
それに、この作戦は別に鎖がない方が好都合だし……
「僕様はどうすればいいのダ!?」
「えっと……テキトーに座っといて!」
「僕様の扱い雑ではないカ!?」
「だって正直こっちで済む話だし……」
「ぐぬヌ……! 僕様を蔑ろにするとハ……!」
「してないしてない! これも作戦のうちだから!」
「むゥ……まあいイ。僕様は優雅に待たせてもらう!」
「はいはい、全くお子ちゃまみたいな王子様だなぁ……」
そんなことを言っていると、静寂な廊下から足音が聞こえる。
「きた……巡回だ……」
廊下の奥から、二人の看守が私たちの元へとやってくる。
「さァ、点呼ダ。囚人番号361番、囚人番号894番」
「はーい」
「……はい」
「異常はないカ?」
一人の看守が私たちの牢屋の前へと来る。
「そうですね……強いて言えば……壁が壊れたこと……ですかね……?」
私は壊れた壁を指差す。
「なニ!? 本当ではないカ! 少し待テ、牢屋を移ス!」
看守の一人が鍵を取り出し、牢屋を開けようとする。
(……きた!)
看守が開けようとしたその時……
「ウ……うわァ!!」
動いていない方の看守から叫び声が聞こえる。
「……なんダ? どうした新ジ……!? お前ハ……なにもノ……!?」
突然、看守が倒れ込む。
「峰打ちや……安心せぃ……」
そう言うと、マントの下から龍馬が出てくる。
「やった! 成功!」
龍馬が鍵を拾うと、すぐさま私たちの牢屋を開ける。
「やっと出れたわ……しんどかったのよね……」
「よし……行こうか!」
「せやな」
私たちは、ここから脱出するために動き出す。
「僕様も出セ〜〜!!!」