第十害 牢に入らる鬼と魔女
鏡花が出てきます! 久しぶり!
「へっくしゅん!」
「え、何? 風邪?」
「え? あーいや、そうじゃないんだけど。なんか噂されたかな……」
「はぁ……早くキョートさん迎えに来てくれないかなぁ……」
「あはは、そうだねぇ、じゃきーちゃん」
私たちは今、とある場所に居る。
「おイ、囚人番号361番。うるさいゾ」
「あ、看守。すみません」
私……ミライとじゃきーちゃん……天皇河は今、蟲地王国にて、囚われの身になっている。
一体どうしてなのか……それは、あの事件まで遡る必要がある……
◇◇◇
私たちは蟲地王国へと戻っていた。
特にやることがなかったからか、それとも少し戻ってぶらぶら冒険をしようとなったのか。
私たちはとりあえず戻っていた。
そんな時、突如として蟲地王国の衛兵が現れる。
その標的はキョートにあった。
何やら言い合いが発生していたが、詳しくはもう覚えてない。
少しして、変な獣が現れたかと思えば、槍の穂先を切断し、私たちにこう告げた。
「そこの名も知らぬ異邦人達よ、我について来い!!」
その後、キョートとレイちゃんをどこかへと連れ去り、私たちは置いて行かれた。
「あ、ちょっと!?」
辺りには人影はなく、あの獣がキョート達をどこへ連れ去ったのかはわからなかった。
「…………え、どこに行った?」
その後、騒ぎを聞きつけたのか、追加の衛兵が私たちの前に現れる。
「あれ……もしかして……これやばい……?」
「……かも……です……」
私とじゃきーさんは、衛兵に囲まれる。
「あいつらは逃したガ……お前達は逃さなイ……!」
「……あれ……なんかピンチ……?」
「かも……しれませんね……」
その時、背後から何者かが現れる。
「〈ハニースリープ〉」
「へぁ……?」
「あれ……なんでか眠気が……」
私たちはその場で倒れ込んでしまった。
気を失う刹那、話し声が聞こえた。
「流石は四天蟲の一人、ハニークェリア様ダ!」
「捕らえたぞ! 縛れ縛れ!」
あぁ……次会ったら絶対許さないからなぁ……キョート……
そのまま私は意識を失った。
目が覚めると、そこは質素な牢屋のような場所であった。
「……あれ……ここは……」
「あ……気がついたみたいですね……」
「その声は……じゃきーさん?」
目が覚め、辺りを見渡すとそこには手首に鎖が繋がれたじゃきーさん……天皇河邪鬼子さんが居た。
「……え? 今どういう状況? これ……」
「私もさっき起きたばっかりで……何が何だかよく分かってなくて……」
どうやら、じゃきーさんも何がなんだかわからないらしい。
かく言う私も全身ぐるぐる巻きにされた状態でポツンと置かれているため、身動きがほとんど取れない。
そんな私たちの元へ、ひとつの足音が近づいてくる。
「……! 誰か来る!」
警戒をしながら待っていると、足音が止まる。
「おヤ、目覚めたようだナ」
そこに立っていたのは、アリのような見た目をした衛兵の格好の蟲地人族であった。
「あなたは……見回りの人?」
「そうダ。私はここの看守をしていル」
やっぱ看守か……
「お前達の罪状も把握していル。まァ、少しの間大人しくしておくことだナ」
そう言ったかと思えば、看守さんはどこかへ行こうとする。
「ちょっと待って!」
そう叫んだのは、じゃきーさんであった。
「……なんダ」
「私たちはなんの罪でこんなところに来たんですか……?」
「……お前達ハ、国家反逆に加担しタ、その疑いがあル。だから捕まっタ。分かったカ」
「反逆って……なにもしてないですよね……?」
そう、私たちはまだ何もしてない。
それどころか、問答無用で襲いかかってきたのはそっちなはずだ。
一体どういうこと……?
「上から聞くニ、お前達はとある獣人族と一緒に居たらしいじゃないカ……今、我々蟲地王国ト、獣人族が住む獣王国は戦争をしていル。つまりそう言うことダ」
なるほど……そういえばそんなことを叫んでいたような気がする……
そういうと、看守はそそくさとどこかへ行く。
この場に残されたのは、私とじゃきーさんだけであった。
「……どうします?」
「……色々試してみましょうか」
「ですねぇ……」
ということで、私たちは、どうにかして出れないか試行錯誤することにした。
なんでゲームの中で捕まらないといけないんだ……!
しかも結構長い間拘束されそうな気配するし……!
「とりあえず、色々試しましょう……の前に……」
ぐるぐる巻きにされた私と手錠をつけられたじゃきーさん……これをどうにかするしかないんだけど……
「……くっ……外せない……」
てかキツすぎ! 私はか弱い乙女だよ!? もっと緩く巻いてくれてもいいじゃん!
じゃきーさんも苦戦して……
「あ……なんとか……取れそうです……!」
えぇ……そっちは取れるんかい……
なんで私だけこんな頑丈なんだよ……おかしいでしょ……泣いちゃうよ?
そんなアホなことを考えているうちに、天皇河さんは手錠を外すことに成功した。
「やった! 外れました!」
「ナイス! ちょっと……私も手伝ってくれませんか……! 一人じゃ無理かも……」
「わ、わかりました!」
そう言うと、天皇河さんは私の鎖を解く手伝いをしてくれた。
その甲斐あってか、三十分くらい経過した後、ようやく外すことに成功した。
「……ふぅ、なんとか外れたぁ……」
「さて……ここからどうします……?」
そう、まだ私たちは脱出できたわけではない。
まだこの牢屋からは脱出できていないのだ。
「まずは……一回死んでみる?」
「……え?」
「ほら、死んだらリスポーンするじゃん? リスポーン場所が違うなら普通にふっかつできるでしょ? 幸いにも同じところでリスポーン登録してるし」
「な、なるほど……やってみましょう」
まずはお互いのHPを極限まで下げる必要がある……
「んじゃ、自爆しよ!」
「……え!?」
私は手を翳す。
「行くよぉ〜?」
「え、ちょっま……!」
「【ボルフレア】!!」
超特大火球が牢屋内に轟き渡る。
「…………ダメか……」
ボルフレアで自滅した私だったが、目覚めた場所は変わらず牢屋であった。
「……いきなり……撃たないでください……よ……」
「……あれ、じゃきーさんもしかして……」
そこには、ボロボロの姿のじゃきー……天皇河邪鬼子さんが居た。
「……もしかして……残っちゃった….?」
「……7割くらい」
……えぇ……堅すぎでしょぉ……
とりあえず……先は長そうである……