第一話 懐古厨とゲテモノ好き
はじめまして!よろしくお願いします!
この世界の最後、大魔王クレイモアを討伐滅殺に成功した。
「あなた達二人が居てくれたおかげで全てが救われました。」
「「はぁ……つかれたな」」
ポチッ
ばごぉぉぉぉーーん!!!
「なんだ急に!!?」
「な、何事ですか!?」
「申し上げます! 城内にて爆発を確認!!」
「爆発だと!? 勇者様! お逃げください!!」
「「はぁぁ!!!???」」
俺たちは逃げた……
というわけはなく王城のてっぺんに立って叫んだ。
「「爆発オチなんてサイテー!!!!」」
瞬間、世界が崩れた。
エンドロールを流しながら俺たちは会話をしていた。
「M&Qの総評はどうっすかPN:ミライ」
「爆発オチはないと思うわPN:キョート」
「まさか二人推奨の意味が「最後に爆発オチを複数人で叫ばせるため」とか思わんだろ、どう言う意図なんだよこのゲーム」
俺達は先程までM&Q、正式名称はモンスターアンドクエストというゲームをしていた。
世間的な評価で言うと……まあ有情で星1.6くらいである。
モンスターが蔓延る剣と魔法の世界で、様々なクエストをクリアしていくゲームだ。
これだけならありふれたゲームだ。だがこのゲームの真なるクソポイントはそんなところではない。
弱すぎる味方、数多の進行不能バグに加え、敵は爆破魔法しか使わず、その威力はレベルカンストしてても二発で死ぬ。防御特化でも三発で滅ぶ。そこまでリアルに忠実にしなくていいんだよ。ほんと。
更に二人プレイ推奨……っていうか二人プレイ前提難易度すぎるので、一人だとまともにダメージを与えられない。ぼっちに優しくなさすぎる。
「まあ、とりま付き合ってくれてありがと。こっち畑でもないのにね」
「ほんとな、お金返して欲しいくらいだ。」
「それはノーコメントで」
「まあ、今日はここまでだ、おつかれ」
「うん、あつ〜」
あつ〜ってなんだ。
そんなこんなで、世界は明るさを取り戻した。
君たちは、全てを投げ打つ覚悟はあるだろうか。
少なくとも俺にはある。
このめんどくさい授業を抜け出し、単位という単位を投げ捨てる覚悟が。
「〜であるからして…」
そろりそろり…と教室を出る……ガラガラ……あっ……
「な・に・し・て・い・る・の・か・な・?キョートくん?」
そう、先生は言った
「ははは……そうピキピキしたらお肌に悪いですよ……渥美先生……」
「だぁれが行き遅れじゃぁ!!!!」
「言ってなぁぁぁぁあいい!!!」
……そんなこんなで今、激しく指導を食らっている彼の名前は、凍角景兎。見ての通り阿呆である。阿呆といっても本当に頭が悪いというか学力的に問題があるとかそう言うわけではない。
学力であれば上の下くらいだろう。しかし、彼はいつもあのような行動を取るのだ。
「はぁ……ほんとに阿呆だねぇ……景兎は」
帰りの道、そう俺に言ってきたのは水色な髪に鏡のように綺麗な青色をした女、名を写水鏡花と言う。俺の幼馴染だ。
「だって勉強よりゲームがしたいんだもーん。てかする必要あるのか?勉強とか」
「あのさぁ景兎、そういうのはちゃんと勉強をしてから良いなよ」
「相変わらず生真面目なやつだな、お前は」
「そうでしょ? 私のことは生真面目美少女系ガール鏡花様って呼んでくれても良いのよ?」
「あー訂正、やっぱお前はすぐ調子に乗るたわけだ」
「誰がたわけじゃい」
そんな会話をしていると、鏡花が聞いてきた。
「そう言えば知ってる? あの有名ゲーム、『フロンティア・グリーディア』が1周年なんだって!」
「あー……あの神ゲーとか謳われてるやつね、俺したことないんだよなぁ……」
「珍しいね、景兎がゲームしないなんて」
「なんか馬鹿にされてる気分だが、俺は別にゲームジャンキーってわけじゃない。俺はレトロゲームが好きなだけだ」
「レトロゲームっていっても、フルダイブ型のだいぶ初期のゲームのことでしょ? コントローラー操作でするゲーム苦手なんじゃなかったっけ?」
「うるさいなぁ、俺にとってのレトロゲームはフルダイブの初期のやつなんだよ」
「ていっても一番古くて10年前のまでしかないけど……まあ私もしたことないけどね、フログリ」
「お前もしたことないんかい! っていうか、お前こそプレイしておくべきだろ、ゲーム屋の娘なんだから」
「その「ゲーム屋の娘ならゲーム上手いよねぇ〜? 日課だよねぇ〜? 義務だよねぇ〜?」的なこと言うのやめてもらえますぅ〜?」
言ってねぇ……
「そもそも私はそんな神ゲーよりちょっとバグあるゲームの方が好きなの」
「つまりクソゲーってことだろ?」
「なんでそんな言い方するかなぁ……」
『フリーダムRPG フロンティア・グリーディア』
略称はフログリ。昨年10月にリリースされ、現在累計2000万本を突破したと言われているフルダイブVRMMOだ。
これまでのフルダイブVRゲームの常識をいともたやすく壊して現れた新星、いや怪星は、瞬く間に世間に浸透した。
その圧倒的なまでの自由度により、様々な人が日夜研究を続けているらしい。
……とは言っても、俺はレトロゲームしかしてなかったし、これ以上のことは攻略wikiのが知ってるだろう。
それと、俺がこのゲームを遊べない理由はもう一つある。
「ていってもなぁ……金が……」
「あ、ふーん……(察し)」
そう、今絶賛金欠中なのである。
そもそも1週間前にM&Qを買ったばっかりなのだ。クリアした今だから言えるが、RPGであの完成度はどうなってるんだ……夜逃げでもあったか?
「ここ商店街なんだし、福引でもしたら?」
「バカか、こんな時期に福引なんてしてるわけ……」
あった。
なんであるんだよ福引、しかも一回2000円だと!?
ゲームソフト福引とはいえ、高すぎだろ
「いや待てよ……こういう福引には古くて売れ残ってるゲームがいっぱい詰まってるはずだ……!」
「何言ってるの、こういうワゴンに積まれたゲームが入ってそうな福引には私の好みのゲームが入ってるんだよ」
「「すいません!これ一つください!!」」
「はいよ〜、んじゃ、一つ2000円ねー」
「「ありがとうございます!」」
店主のおじさんから福引を買った俺たちは早速開封することにした。
「何が出るかな、何が出るかな、ジャララララ」
「何が出るかなぁ〜♪」
同時に取り出したそれを二人で読み上げた。
「「『フリーダムRPG フロンティアグリーディア』……」」
運がいいのか悪いのか、同時引きした。
〈作中設定ぶっちゃけコーナー〉
この世界のゲームは10年前の革命からフルダイブが主流になってきています。
そんな中でも10〜8年前の2年間のゲームを景兎くんはレトロゲームと言ってるわけですね。舐めてますねこんちくしょうが。(精神に大ダメージ)
また、現実世界とこの世界では職業の価値や扱いが大きく変わっています。
まあ、eスポーツがそのままスポーツになったらどうなるかなんてわかりきってたことですからね。