第4話 な、何が起こっているんだ?
男性専用出入り口に着くと、待っている人は居なかった。それにしても、女性専用の入口と比べて、こちらは清潔で扉も豪華だった。まるで扱いが異なるようだ。
門番の方から、「だ、男性の方が徒歩でご通行ですか?誘拐、強姦の被害に遭われない様にご注意をして下さい!あなたのようなお美しい方は特に注意が必要です。馬車を手配しますので、しばらくお待ち下さい!」
誘拐?強姦被害?誰が?俺が?バカにしている感じはしないけど...。本当に心配してくれているみたいだ。目の前にいる門番の女性は、非常に背が高くたくましい体つきをしていた。俺より絶対に強いだろう。
ただ...俺と顔面偏差値は変わらない様だ。お互い苦労しますな。
「ありがとうございます。本当にすぐに帰りますので。あの...馬車じゃなきゃ通ってはいけないのでしょうか?」
俺は恐る恐る門番の女性に尋ねた。
すると、門番の女性は目を大きく見開き、驚いた表情を浮かべながら、「い、いえ、とんでもございません!徒歩での通行も問題ございません。それと、通行税は不要です。ただ、「真実の石」にだけは触れて頂けないでしょうか?これは規則ですので...」と申し訳なさそうに俺に言い、深くを下げてきた。
ちなみに、女性は5日間の滞在に鉄貨5枚、日本円にして約5000円が必要だそうだが、男性は無料だとか。地球ではこのような料金設定は逆のことが多いよな。
そして俺が「真実の石」に触れたとき、何の問題も起こらなかった。殺人、強姦、詐欺などの犯罪を犯した者は、その石が真っ赤に変わるという。門番の女性がそう教えてくれた。便利のいい代物だな。
「真実の石」に変化も生じなかった為、俺は無事に門を通り抜け、異世界の村へと足を踏み入れることができた。
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わあ!これが異世界の村か。わくわくするな!
大きな建物が立ち並び、それに加えて商店街のような場所も見える。
商店街のような場所では、野菜や肉を扱う店が軒を連ね、冒険者や家族連れで賑わっている。子供たちの笑い声が周囲に響き、活気で溢れている。様々な色の屋台が並び、美味しそうな匂いが空気を満たし、まるで祭りのような雰囲気を醸し出している。
でも何だか想像していたのと違う。薄々感じていたのだが、なんだかおかしくない?
村の女性たちは、地球の男性と同様にがっしりとした体格をしている。また、殆どの者の背丈が180mで、筋肉質な者や、ワイン樽のように太っている者など、様々だ。
男性は村に入ってから、稀にしか見かけない。女性に比べて約1/10の割合だ。あと体格も男性は線が細く、痩せ型が多い。背丈は俺よりもわずかに高い。また、二重まぶたの人が多いようにも感じる。
まあ、俺みたいにコロコロして、小さくて、一重で不細工の三拍子が揃った男は、稀な様だ。
それでも、俺から見ても「不細工やなぁ~」と思う人はちらほら見かける。だけど、虐げられている様子はない。地球よりも、俺側の人間が結構いる感じだ。
暮らしやすいかもな。
ただ、女性はみんな強そうだ。狩りや力仕事は女性の仕事なのか?冒険者は女性だけのようだ。そんな印象を受ける。
俺が彼女たちと戦ったらどうなるんだろう?いくら柔道経験者とはいえ、もって20秒ぐらいだろう。
それに何となく分かる。こっちの世界の女性は戦い慣れている。それも俺とは異なり、生と死のぎりぎりの戦いを。とてもかなったもんじゃない。
ただ先ほどから、すごく女性達からの視線を感じる。
「服装が奇抜すぎたかな?」と俺は思い反省した。街中を歩く男性も女性も、原色に近い無地の服を多く着ている。グレーの生地にワンポイントのイラストがあるTシャツでさえ、際立って見える。
服装をもっと控えめにしておけばよかったと思っていたその時、予想外の言葉が耳に飛び込んできた。
「あの人、かっこいいよね?」と聞こえてきた。
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村に着てから、女性たちは遠くから私のことを「かっこいい」「おしゃれ」「素敵」と評している。
「ステーキ」と間違えていない?
からかっているのかと思い、女性たちを見ると、恥ずかしそうに目を伏せる者や、隠れてしまう者など、さまざまな反応が見られた。
地球の様な子豚扱いではなく、どちらかと言うと非常に好意的な反応であった。
中には俺と視線が合うと、笑顔で手を振ってくる女性までいた。
ただ...その手を振ってくる女の子や街中にいる女性たちはその、あまり可愛くない。自分で言うのもなんだが、俺によく似た子ばかりだ。いや、それ以上にレベルが高い、比べ物にならない子もいる。
そして女性の多くは、狐目で団子鼻。スタイルもバストとウエストヒップの境が分からないかという、トキメキが湧かない者だらけであった。
な、何が起こっているんだ?
あまりの衝撃に呆然としていた俺は、目の前に女性が近づいてくるのに気づかず、思わずぶつかってしまった。
「きゃっ!」とその子は地面に横たわり、俺は尻もちをついてしまった。
それが、この世界では最低最悪なスタイルと顔面の持ち主、メルとの出会いであった。